第13話 唇をかむへレス
「へぇ、ここがカティの街かぁ」とキョロキョロ
しているへレス。すでにおのぼりさん。
「大きさは変わらないだろうに、あ。こっち」
とギルドへの道を行く3人。
「あれは?武道場かな」と指をさすへレス。
「あぁ、ここは剣が盛んだからな。覗いてみるか?」
とアスティの言葉にうなずくへレス。
中を覗くと子供たちが剣を振っている。
その中には屈強な体の男。
「よう、ダン。元気していたか?」とアスティが
声をかける。
「おお!アスティ様じゃねえか。
やっと来てくれたか。」とダン。
「すっごい筋肉。プロレスラーみたいだな」
と
「やはり剣の師範の人だな。無駄な筋肉が
無いし。手合わせをしたいくらいだ」とも。
その声を聴き、何故かポージングをするダン。
「やっぱ剣使いの人は凄いわね」とへレスも
シミジミと見ながら呟く。
「こいつ、回復魔法使いだぞ?」とアスティ。
さらにポージングをするダン。
「はい?」
「ところでこちらの方々は?」とダンは聞く。
「あ、俺の冒険者仲間。例の依頼をしに来た」
とアスティは紹介をする。
「こっちがシンでこっちがへレス。二人共
すげえぞ?まぁ俺にはかなわないがな」と笑う。
「あ、あの。話は戻しますが。回復系なのですか?
なんかイメージが・・・。」
と晋がダンに聞く。
「仕方ねえじゃねえか!そう生まれちまったんだから」
と少し涙ぐんでいるダン。
「まぁでも、それでよかったときもあるけどな。」
とすぐに笑いだす。
「何か格闘術とかやってるとか?」と晋。
「いや?なにも?」とダン。
「ケンカが強いとか?」と晋。
「いや?暴力反対?」とダン。
「お前たちはいつも通りやっておけよ」と
子供たちに声をかけ4人は武道場を出る。
4人は冒険者ギルドへ向かい中に入る。
「2階を借りるぞ」とダンは受付に言うと
「あ、お茶持ってきてね」とも声を掛けた。
4人は座る。
「改めて、こっちがシン、そしてへレス。
シンは異世界人だ。そしてへレスは弓使い」
アスティは俺達を紹介する。
「俺はダンと言う。この街の統領をしている。
アスティ様に依頼を回したのは俺だ。」とダン。
「しかしなぁ。」とダンは言うと
実はもう一人に声を掛けちまってるんだよ。
もう動いているかもしれん。
「へぇ、誰に?」とアスティはお茶を飲む。
「ジヴァニアだ」とダンは言うと
「まじか。あいつとよく連絡が付いたな」と
少し驚きながら聞く。
その名前を聞いてへレスも
「あってみたい!見てみたい!握手したい!」と
何故か大興奮していた。
「偶然だよ。この街に居たんだよ。居酒屋に。
キレイな姉ちゃんになってたぞ?」とダンは笑う。
「ほお、見てみたいな。」とアスティ。
「じゃあもう出番とかないかな、俺達。
い、いや。逆にあるかもしれん。」とも。
「あのぉ、そのジヴァニア・・・さん?って
話からして凄く強い方なんですか?」と晋は
3人に聞くと。
「強いぞ?俺よりもな」と笑うアスティ。
「そりゃ勇者ですから」と鼻息荒いへレス。
「今この大陸で一番強いんじゃないか?」とダン。
「へぇ、綺麗なお姉さんで強い・・・って
今、勇者って言いましたよね!」と晋。
「そうだよ?」と3人はお茶を飲む。
少しの沈黙の後
「勇者なんだけどなぁ・・・。」と何かを
含むアスティとダン。
「ところでその話したらなんて?」とアスティ。
「あぁ、暇だから明日にも行くって。
昨日の話だから今日の夜でも『襲撃』
するんじゃないか?」
とダンは饅頭っぽい何かを食べながら言う。
「だろうな。」とシミジミとアスティ。
「あぁ、目を輝かせていたよ」とシミジミとダン。
二人はお茶を飲む。ジジィのように。
「な、なんか含みましたよね?さっき。
それに、今のその、なんか『シミジミ』と
したモノ言い。すっごく興味湧くんですけど!?」
と晋は二人に訴える。
へレスはと言うと、有名人と会えるかもと
興奮している。鼻息も荒い。鼻血が出るほどに。
「まぁ依頼は拉致された者の『解放』だからな。
俺達が行った方がいいだろう。お片付けも
あるだろうからな」とアスティは言うと
「多分、今晩だ。準備していくぞ」ともいい
お茶を一気飲みして席を立つ。
「俺も行こうか?」とダンは言うが
「いや、問題ないだろう。金だけ準備して
待っててくれ」とアスティ。
晋達は宿屋に部屋を借りようにも金がほぼ
無かったので取りあえずへレスだけ部屋を
借りる事にしたが・・・。
「私だって野宿でいいし!」と怒るへレス。
仕方ないのでそのまま
亜人たちが拉致監禁されているだろう建物に
向かった。
「アレですか?」と晋がアスティに聞く。
晋はスコープで建物の入り口を見る。
「短剣?を持ってる男が一人と槍一人かな。
入り口に二人ですね。2階の窓には人影は
みえないなぁ」と伝えると。アスティは俺に
「お前ならどうするね」と聞いてくる。
「へレス。速射で入り口の二人をやれるか?」
と聞くと
「距離的には問題ないけど。」と少し迷った感じで
答えたので「やっぱ人間相手は無理?」と
俺はスコープを覗きつつ、ゆっくりと聞いた。
無言の返事が返ってきたので
「俺が歩いて行ってきます」とスコープを
直しつつアスティに言い、
「へレス。無理にとは言わない。しかし
こういった仕事もあるという事を理解した方が
いいかもしれない」ともへレスに言う。
「そうだな、国の依頼は半数がこういった
仕事だ。ランクSSの冒険者になる為の条件には
国の依頼に参加することも含まれる。
まぁお前がランクSまででいいというなら
しなくていいがな。」とアスティもへレスに言う。
「しかしな」と前置きをすると
ジェニエーベルの役に立つとは
国の仕事をするってことだ。あいつを襲うのは
魔獣じゃない。人間や亜人だ。国主である
ジェニを守るってことは人間をヤルってことだ。
その話を聞きへレスは唇をかむ。
それを見て晋はへレスに言う。
「これは人が、他人が強制してすることではない。
自分で『何かを守る』という事を自覚しないと
やってはだめだ。そうでないと自分が壊れる」
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