第10話 仲間

「どうします?取りあえずこの街の

 冒険者ギルドで少し依頼をこなす練習を

 したいのですが」と俺はへレスに聞くと


「なんかもっと仲間っぽく喋ってよ。」と

頬を膨らませ歩くへレス。

「わ、わかりました。いや!わかった!」と

俺は言い返す。


そして二人は冒険者ギルドの扉を開ける。

「あれ?アスティ様いたの?」とへレス。


「おいおい、いたの?って。なんか冷たいね。

 へレスちゃんは。」と泣くふりをするアスティ。

「ちゃん付けはやめてよね!ねえ、聞いて!

 母さんから許可を貰ったの!冒険者に

 なってもいいって!」と喜びながら話すへレス。


「もう冒険者じゃないか。それもランクAだし。

 その歳ですごいよ。もうすぐSなんじゃない?」と

頭を撫でながらアスティは言う。


「もう子供じゃないんだからやめてよね。

 セクハラよ!」とへレス。


「この世界にもセクハラあるんか!」と

つい声に出してしまった俺。その声を聴き

「あぁ、俺が教えた」とアスティ。


「ところでスナバシリ シン君はどういった

 『漢字』を書くんだ?」とニヤニヤしながら聞いてきた。


(こ、こいつ!知っている!向こうの世界の事を!)

そう思い少し真顔になった俺に

「ちょっと2階で話そうか。へレスちゃんもどうぞ」と

俺とへレスを案内する。


どうぞ、座って。と言うと

「コーヒーでいい?なんちゃって。嘘だけど。」と

アスティは言うとお茶を出す。

「あれよくできた身分証だったねぇ。

 コピー機も進化したもんだ。でも、良かったよ。

 差し出したのが俺の直属の受付で。

 でないと、大変なことになっていたよ。色々と」


「つ、捕まるとかですか?」と俺はお茶を飲みながら

アスティに聞き返す。

「違うよ。あの身分証はね。国の重要人物が

 持つモノなんだよ。そうだね、向こうの世界的に言うと

 大統領のSPが持つ物かな」と。


「ぶっ」と俺はお茶を思いっきり吹き出してしまった。


「あ、そうそう。俺、日本から来たから。

 25年になるかな。こっちに来て」と言ってくる。


「そ、その割には見た目が若いですね。」と聞くと

「なんかさ、年取らないんだよ。というより老けるのが

 凄く遅いんだ。」とアスティ。


「向こうの世界の女性がこの事を知ったら

 こぞってこっちに来そうだな」とアスティは言う。

「そんなこと、今向こうで言えば訴えられますよ」

と教えてあげた。


「で、シン君はどうやって、そして何故こっちに?」と

聞いてきたので、俺は正確に、丁寧に!そして

真剣に教えてあげた。


アスティは笑うと

「まじか。自衛隊すげえな」とも。

「レア素材を集めて戦争でもするのか?」と

聞いてきたので


「それは絶対にありません。俺は日本を信じている。」

そう言うとアスティは

「自衛隊と言っても軍隊だ。ありえなくはない」と。

「自衛隊は軍隊ではありません」と俺は反論をする。


少し沈黙が流れ


「おっと、今ここでする話ではなかったな。

 ちょっと君に興味があってね。話をしたかったんだよ。

 すまなかった。」とアスティは頭を下げる。


やはり、望郷の念に駆られているのかと思い

聞いてみると

「全然?帰りたいなんてこれっポッチも思わん」

と親指と人差し指をビタッとくっつける。

隙間ないほどに!


「そ、そんなに快適ですか?この世界」と

俺は生唾を飲み込みながら聞く。


「そりゃあ、もう。」とアスティは即答すると

「異世界と言えば?」と聞いてきた。俺は

「猫耳!」と俺も即答。


「流石だ。わかっているじゃねえか、友よ」と

アスティは目を輝かせる。そして、

「残念ながらウサ耳は居ない」と肩を落とす。

「マジですか。」と俺も肩を落とす。

へレスはバカを見る目で俺達を見て肩を落とす。


「で、これからどうするんだい?漠然と

 レアモノといってもなぁ。」とアスティ。

「因みにこの世界で一番のレアモノって

 どんなものなんでしょうか」と俺は直球で聞く。


「そうだなぁ、向こうの世界の事を考えると。

 それに自衛隊だろ?」と

アスティは斜め上を見ながら考える。


「まずはドラゴン関係だな」と切り出し


ドラゴンにまつわるモノ全て。

鱗は勿論、糞もだ。糞なんてもうレアな鉱石だぞ。

たまに尿結石が出るがそれもすごいぞ!

そしてやはり魔獣が落とす魔核だな。

属性がある石と思えばいい。

と言うか、魔獣そのものがレアだがな!と笑う。

まぁ自分で色々見てみればいいんじゃないか?


「因みにアスティさんが向こうに持ち帰ると

 したら何を持っていきます?」と俺は聞くと


「猫耳娘に決まってるじゃねえか」と即答。

俺はを叩きつけられ

「おっしゃる通りです。師匠」と頭を下げた。


「で、へレスも一緒に行動するの?」


「うんうん!シンさんを使って名前を売るの!

 弓使いも強いってね!」と鼻息が荒い。

「あ、俺もへレスって呼ぶから俺の事を

 シンって呼び捨てでいいですよ。仲間っぽいし」


「ほうほう。じゃあ俺のこともアスティって

 呼んでくれ」とニヤニヤしながら言われた。


「呼び捨てできるわけないじゃない。元この国の

 大統領だったんだから。」とへレス。


「はい?」俺はへレスとアスティ・・・様を

交互に見る。指を指しながら。


「まぁでも『様』はやめてくれ。同じ仲間で

 一緒に冒険する仲間じゃねえか」と笑う。


「はい?」と俺。

「え?」とへレス。


「いいじゃねえか。暇なんだよ。」と

お茶のおかわりを注ぐアスティ。

「いやいや、ギルドマスターでしょう!

 留守にしていいんですか!ダメでしょ!それ」と

俺とへレスはいうが・・・。


「冒険者ギルドマスターが決めたんだ。

 はく奪すっぞ!冒険者の資格を!」とアスティ。


「いやいや、それ権力の横暴ですよ!」と俺。

「・・・え。いやなの?俺がついて行くの」と

なぜか涙ぐむアスティ。


「えっと、」と俺はへレスを見ると

ウンウンと大きく何度も首を縦に振る。


「じゃ、じゃあ。お願いします」と俺。

「因みにランクはSSとか?」とも聞くと


「今日登録したばっかりだからD?」と

嬉しそうに身分証を見せるアスティだった。


なんでギルドマスターがランクDなんだよ!





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