第7話 時が止まる瞬間

「アスティ様ぁ、いる?」と冒険者ギルドの

女性はドアを開ける。

「いるいる、だからちょっと静かに。

 いま、いいとこなんだからさ」と

アスティと呼ばれた男は机に向かい、何かを

一生懸命に作っている。


「またぁ、そんなもの作って。男の人って

 なんでそんなモノに一生懸命なのかなぁ」と

呆れたように言う。


「おいおい、男のロマンなんだよ。

 よし、出来た。どうよ?このかっこよさ」

と凄く自慢げに言う。


「そんな人形の事よりもさ。はい、これ。

 受付にコレ出した人いたわよ」と身分証を差し出す。

「人形って言うな、フィギュアって言え」と右手で持ち

その女性に見せる。そして身分証を左手で受け取り

それに目を向けるアスティ。


身分証

国 リーラ 住所 機密により表示義務なし

職業・所属 機密により表示義務なし

名前 シン・スナバシリ

追記 この身分証はサンテミリオンの名の下に

   発行され保証される



「ぶっ」とアスティは吹き出すと作っていた

フィギアの腕が取れた。

「ああああああ!また作り直しかよ」と。


がっくりと肩を落としながら

「しかし、なんだこれ。これコピーだな。

 名前の所は変えてあるが」と言うと

「こぴーってなに?」と使いの女性は聞く。


「あぁ、まぁ偽物ってことだな。

 しかし、良くできている。会ってみたいな。

 これ持ってきた奴に」と伝えると


「会えばいいじゃん。今はこの国の

 冒険者ギルドマスターなんだからさ」と

机に合ったお菓子を食べちゃう女性。

「あ、そりゃそうだ。じゃあたまには

 仕事するかぁ」と言うと席を立つ。


「たまには、じゃなくって。

 いつもしてくださいよ。もう。じゃあ

 渡しましたからね。忙しいので行きます。」と

更にお菓子を食べ、女性は言うと建物を出て行った。


「しかし、良くできているな。魔力まで

 乗せてるのか。しかし、この魔力は

 サンテミリオン王女のモノじゃないな。まぁ、

 死んでいるから、そりゃそうか」と呟くと


「たまには仕事するかぁ、まじで」と笑う。


一方、その頃 しんとへレスは


「お母さん!ただいまぁ。お客さん連れてきた」

とドアを開けるなり大声で言うと

受付の所にいた女性が、少し驚きながら

「おかえり。早かったのね、帰りは明日じゃ

 なかった?」と言いながら、晋を見る。


「す、すみません。1週間ほど泊まりたいのですが。」

と晋は言うが(刀に目が言ったか)と思った。


「今日、冒険者になったばかりの人よ。

 後、森で私がこの人の食べ物とっちゃって」

「それに、アイテムボックスも持ってるの!

 食材、入れてきてもらっちゃった」とへレス。


晋はハッとしてアイテムボックスから

小屋より持ってきた食材を全部取り出す。


「へぇ、それは大変でしたね。うちの娘が

 失礼しちゃって」と女将は言うと、再度

晋の脇に刺してある刀を見る。


「結構な代物、お持ちなのね。見たことない

 素材。鞘の中も相当なものかしら?」と言いながら

「1週間なら銀貨5枚ね」とも言う。


晋は女将の視線を刀から外す様に体を斜めにする。


「高っかい!お母さんふっかけてるし!」と

へレスは暴露する。

「す、すみません。銀貨3枚と銅貨4枚しか

 持ち合わせがなくって。」と焦る晋。


「しかたないわね。じゃあそれでいいわ。

 今日、冒険者ってことはランクD?」と聞く。

「そ、それがですね。忖度してもらいまして。

 いきなりBなんですよ。」と晋が言うと

女将の眼がすわり、「へぇ、クラスは?」と聞く。


「んと、3ですかね。」と身分証を見せる。

「なるほどね、ランクBの3ね。」と

なにかを感じたように女将は言うと部屋を案内する。

「2階の奥の角部屋。30分で食事が出来るから

 降りてきてね」と。


晋が2階に上がるのを見届け

「珍しいの。奥の角部屋すすめるなんて」とへレス。

「ああいった人は奥の角部屋がいいのよ。

 窓も2か所ついているしね」と女将は言うと

「さ、食事の準備よ。あなた、自分で取った

 魔核をあの人に渡したんでしょ?」と笑い

へレスの頭をコツンと叩く。

「バレてたか、てへへ」と苦笑いするへレス。


30分後


「飲むでしょ?」と言いながらビールに似た

何かと丸い揚げたモノを机に出す女将。


「うぉ、これは揚げたこ焼き!?」と晋。

「いただきます!」と目を輝かせて!

飲む!ゴクゴクと飲む!「うめえな!おい!」と!

そして揚げたこ焼きを食う!

2個食べた所でマヨネーズを取り出し掛ける。

そして食う!「うめえな!おい!」と!


「あら、マヨネーズ派だったのね」と女将。

「異世界の食べ物をこの世界で改良したものよ」

と、サラッと言う女将。


「そうなんですねぇ。うまいです。」と晋。

(少し、手が止まった。反応してしまった)

と晋は思うが平然と食べるフリをする。


へレスが料理を持って来る。

3品ほどが机に並べられると晋は生唾を呑む。

「こ、これは絶対旨いヤツだ!」と!

「異世界!万歳!」と心の中で呟く。そして、


「いただきます!」と手を合わせる。

「異世界から来たってバレたかなぁ。

 バレてるよなぁ」と思いながら箸を進める。


「お母さん!シンさんは異世界から来たのよ!」

とへレスが自慢げに言う。


「・・・。」箸が食事を摘まもうとしながら

5秒が立つ。

「バレるとかバレてないの問題じゃねえな」と

ズズッ。と鼻水をすする晋であった。


女将もそれを見ながら時が止まっていたが

「う、うちの娘がすみません。一生懸命に

 隠してましたよね?その事」と

申し訳なさそうに言ってくれた。


「と、とりあえず。食事します」と晋。

「ど、どうぞ召し上がれ」と女将。








 








 

 




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