第4話 ヘッドショット

「あなた、何者ですか?この辺りの方では

 ないとは思っていましたが。魔獣の魔核は

 知っているけど、それを聞いてきた。

 どこぞのお金持ち?それとも外に出るのが

 初めて?の方ですか」と。


(うわ、殺気がビンビン伝わってくる。

 どうみても弓構えてるな)



晋は深呼吸して両手をあげる。

「黙っててすみません。信じてくれとは

 言いませんが、実は昨日、異世界から

 この世界に来たばっかりで」と言った。


「なるほど、だから見た事のない武器。

 その後ろのやつって武器ですよね?

 それと、それは刀ですか?私の知り合いも

 刀持ってるので。他何か、この世界に

 ないモノを見せてください。そしたら

 信じます」とへレスは言った。


(まじか。信じてくれるんだ)


「そ、そうですね。」と晋は思案をし

あるモノを取り出す。

そしてそれを右手に持って、小さく、そして

ゆっくりと左右に振る。


「こ、これ、異世界の調味料で

 マヨネーズって言います。は、初めて

 見ました?」と晋は言うと


「知ってます!マヨネーズ!」とへレス。

「あるんかい!マヨネーズ!」と少し

声を裏返しながら返してしまった。

「な、なら、ちょっと待って!」と晋。


「こ、これならどうでしょうか!」と

今度は小型スコープを取り出し、

「受け取ってください」とゆっくりと

後ろに投げる。


「こ、これは!?なんでしょう!」と

へレスは驚いた声を出す。

「その筒を覗いてみてください。

 小さな穴の方からですよ?」と晋。


「うぉおおおお!なんぞこれ!」と

驚いた声を出すへレス。

「スコープって言います。遠くを見る

 道具です。ど、どうでしょうか。

 信じてもらえたでしょうか」と聞くと


「もっと見せて!ってか、こっち向いていいから

 もっと見せて!」と声がしたので

振り向くと、目を輝かせて鼻息が荒い

少女がスコープで俺を見ていた。


20分ほど、二人は座りこみ

日本から持ってきた物を、あーだこーだ

言いながら話をする。


「うほほほほ。じゃあ、これは何に

 使うの?」と楽しそうに聞いてくるへレス。

晋はそれに対して丁寧に答える。

そう、ゆっくりと。そして優しく。


「ねえ、取引しない?1週間分の宿代を

 あげるからこれ頂戴?」とへレス。

へレスが手に取ったのは、なんと。


「そ、そんなものでいいんですか?」と

俺は驚くも少女らしいと思った。

へレスが手に取ったモノはトートバッグ。


「それ、俺が来るときに流行っていた

 モノです。それでよければどうぞ」と

笑いながら晋は答える。

「中がアルミ素材になっていて保冷性も

 あるし丈夫ですよ」と教えてあげる。

「ファスナーもついているので」と言いながら

開け閉めしてあげる。


「うぉおおお!なんかすっごい!やっぱり

 これはいいモノだ!」と鼻息荒いへレスさん。


「よし!じゃあ街に行きましょう!」と

声が弾んで、そして何故か晋の前を

歩いて行くへレス。

「ちょ、ちょっとまって!俺が前!」と

慌ててへレスの前に出る晋。


「じゃあ並んで行きましょう!」と

それはもうご機嫌なへレスさん。


歩きながらこの辺りの事を色々と

話しながら歩いて行く。

「なるほど。その弓は『リーラ』の

 国の国主さんから貰ったんですね」

と俺は言いながら思う。


あのゲームには『リーラ』の国は

無かった。しかし、長友課長から聞いた事が

ある。情報課の協力者の中にその国の名前の

所から来た者が居たと。その人が連れていた

子供の名前がジェニエーベル。

リーラの国の王子だったと。

しかし、その国は滅んだと聞いたが・・・。


「その国主ってジェニエーベルさん?」と

晋は聞くと少女は頷く。

「異世界から帰ってきて、国を作ったの。

 凄く優しくてかっこいいのよ?」と

少し顔を赤くして答える。

「ジェニ様も異世界に行っていたから。

 知ってるって事はそこから来たんですね」

と少女は嬉しそうに尋ねてくる。


「多分、そうです。名前を聞いた事が

 あります。」と晋は答える。

「その国に行ったら会えますかね?」と

聞いてみると

「どうかなぁ。行方不明と言うか

 今はなんか旅に出てるみたいだし。」

と少し寂しげに言うへレス。

「2年前にひょっこり来て、私の弓を

 見て褒めてくれたから。行方不明じゃ

 無いと思うの」と赤面だが寂しげ。


「そうですか。お互い会えればいいですね」

と晋が言うとへレスは大きくうなずく。


いつの間にかに森を抜けていて草原が

広がっていた。

「ちょっと待って。」そう言うとへレスは

弓を構え、少し溜めてから矢を放つ。


その矢は約40メートル離れた所にいた、

それも茂みの中にいたニワトリっぽい

何かに当たった。


その場所に二人で走っていくと

矢は頭を貫通している。

「この距離を完璧なヘッドショットだな!」と

晋は少し驚いたように声をあげてしまった。


「ちょっとスキル使っちゃった。

 これね、フランゴ。さっき言った奴」と

少し照れ笑いをしながらへレスは言う。


「な、なるほど。確かにニワトリだ。

 メモ帳通りだ・・・。」としみじみと

フランゴを見る。


へレスは慣れた手つきで羽根をむしる。

晋も手伝う。「やっぱ今のうちだと

毛を綺麗にむしれるからね」と

二人はいそいそと毛をむしる。


「へえ、知ってるんだ。」と言いながら

毛をむしるへレス。

「まぁ、サバイバルって言うのかな。

 向こうの世界では、よくナイフ一本で

 山とかに放置されてましたしね」と

晋は言いながら毛をむしる。


「うちのお母さんと同じくらいの事する

 人も向こうにいるんですねぇ」と

毛をむしるへレス。

「えぇ、勿論いますとも。綺麗な人ですが

 性格がねぇ・・・。」と晋は毛をむしる。


そして二人は歩き出す。

へレスは毛をむしったフランゴの首を持ち

ぶらぶらさせている。


「ああああ!」と突然、叫ぶへレス。

「ど、どうした!」と晋が聞き返すと!



「食材を小屋に忘れた」と!
















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