きのみinわんだーらんど
きのみinわんだーらんど その①
時は16世紀後半。
フランス西部の港町、ナントでの出来事である。
「それにしても、
いかにも歴戦の船乗りといった体のヒゲ面中年
「勿論! もう海が
「ですが、どうみてもこの天候はおかしいですぜ。普段より霧も濃い、どう考えても危険じゃねえかと」
「全く、ゴンザレスは慎重だなあ。このきのみに任せなさい。何と言ってもはるか遠くの新大陸まで行った私を!」
船長きのみはフラットな胸を右の手のひらで軽く叩くと、何気に恥ずかしくなったのかくるりと背中を向け、目の前にある海を見る。
暗く厚い雲に覆われ、本来の青さを見せることがないそこは、海面が大きくうねり、小型の漁船であればひと飲みしそうな勢いだ。
だが、きのみに不安はない。
いつの日だったか。秋のある日、イスパニア(スペイン)のセビリヤからイタリアのナポリまで航海した時だ。
急に強い風が吹き始め、雨が降り出し、一気に嵐がやって来た。
当時、今より一回り小さい船に乗っていたきのみ一行は、少しだけ水の入ったカップを振り上げてはテーブルに叩きつけるような地獄の荒波を経験したのだ。
だが、こうして今も生きている。
「ふ、今は国が一つ買えるくらいの費用で建造したガレオン船にゃ。この程度、大したことないにゃ!」
思わず口癖が人前で出てしまった船長きのみは、いかにも無謀な航海へと繰り出すのであった。
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