慎重さはだいじ その④(完)

「店員さん、すいませんー……」

「あ、はい。あれ、さっきの」

「あの、単四電池……どこにありますか」

「あ、こっちです」

「ありがとうございます……」


 きのみは再び某大手ホームセンターに足を運んでいた。

 縦10cm、横3cmのふた。

 しかも、電気を流す機械の主電源が。


「単四なんてそんな嘘だあ……」


 会計している間、ぶつぶつ言っているきのみに、女性のレジの人は怪訝けげんな視線を送る。

 が、それに気づくことなく、きのみは肩を落としたまま家路いえじへとついた。

 とはいえ、これで再びあの心地よい瞬間が訪れる。

 家に帰ったきのみは上機嫌で単四電池の外のビニールを苦戦しながら取りがし、電池を入れ替え、ふたを閉め、ネジをく。

 

「さて、気を取り直して……。どうですかにゃー、……おー!」


 電源ボタンを押すと、いつもの表示が浮かび上がる。

 きのみはいそいそとパッドを両肩にると、強さを上げていく。


「はー……ごくら……ぐっっつっっう?!」


 強烈な痛みを覚え、きのみはあわてて強さを下げる。

 初期化されたせいでモードがいつものものと違っていたのか、それとも貼りどころが悪かったのか、ともすれば電源が満タンになったため強さも回復したのか。

 12まで下げたところで、ようやく落ち着いた感じで流れる刺激を受けながら、きのみは深いため息をいた。


「……慎重さが大事にゃす」


 きのみにとって、良い学びの一日となったのだった。

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