慎重さはだいじ その③

「店員さん、すいませんー……」

「どうしました、お客様」

「あのー……このネジなんですが、開けられるドライバー?とかありますか」

「これですか、そうですね……、この色々な形状に合わせた小型ドライバーが入っているセットはいかがでしょうか」

「あ、じゃあこれ頂きます!」


 某ホームセンターにきのみは居た。

 先程のマイナスのネジ開けられない事件の続きである。

 試しにつめで出来ないかとか、硬貨で回せないかとか、果てはハサミの先、おたまの先など色々試してみたが、結局金属に少しの傷を残しただけで何の成果もげられなかったきのみは、何でもありそうなこの店にやって来たのだった。


「あ、鉄のスキレットもある、買おっと」


 よそ行きの声ではあるが独り言をいいながら歩くので、周りからけられている気がするが、そんなことは気にせずきのみは会計を済ませた。

 そして、家に到着とうちゃくすると、微妙にドヤ顔をしつつ作業に取り掛かる。


「どうかにゃー、どうかにゃー……おおー、やるにゃー、お前すごいにゃー」


 マイナスドライバーちゃんと会話しつつ、ふたをパカ、と開ける。


「よーし、さて、この一緒に買ってきた単三電池さんをー、ほりゃ……って、ほへ?」


 きのみの口から、間抜まぬけな声が一つれ出た。

 縦10センチ、横3センチのふたを開けた先。

 そこにはまっていたのは、一回り小さい電池だった。

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