慎重さはだいじ

慎重さはだいじ その①

 今から少し前の話である。


「はー、最高にゃー」


 きのみの身体はぶるぶるとふるえていた。

 というより、強制的に筋肉を動かされていた。

 というのも。


「これAMAZ○Nで買ってよかったにゃー」


 低周波治療器ていしゅうはちりょうき

 身体に微弱な電気を流し、その信号で筋肉を強制的に動かす機械だ。

 一時代前は接骨院せっこついんや医院などで利用する大型業務用のものしかなかったが、最近は店頭で一般の方も購入できるような小型のものが増えてきている。


「この前、最大の【15】にしたら死にそうになったけど、最近はこの感じにも慣れてきたにゃー」


 きのみの持つ某O社製ピンク色の見た目が可愛い低周波治療器は、1から15までレベルがあり、電気の流し方も、たたき、み、押しがある優れモノだ。

 最大強度ともなると、部位によっては強烈な痛みを感じることもある。

 なお、ここで読者各位にお伝えしたいが、心臓の弱い方、何かしら疾患しっかん持病じびょうをお持ちの方、ケガなどをしている、もしくはした経験がある方、妊娠中の方などはそれなりにリスクがあるため、使用についてはかかりつけの医師と相談して頂きたい。約束だぞ。

 とかく、きのみは肩こり首こりがひどいため、もはや手放せないものとなっていた。


「はー極楽にゃー、幸せにゃー……ん?」


 急に電気の流れる感覚が止まり、きのみは機械の表示画面を見る。

 いつもであれば、強さとあと■分と表示されるはずのそこには、何も表示されていない。いわゆる電源が入っていない状態となっていた。

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