かなしみのプリン その③

「もしもし、○○運輸の△△です」

「……山田きのみですが、先程お電話を頂戴しまして」


 努めて冷静なよそ行きの声を出しつつ、きのみは様々な可能性を思い巡らせていた。


 あれ、宅急便……、なんか頼んだかにゃ。

 うーん? 

 はっ、もしかして注文してから半年経つのにまだ納品されてない高濃度酸素缶(※コロナで自宅でとりあえず急場をしのげるように購入した)!?


「あのー、お昼頃お伺いしたのですが、不在でして」

「今から戻りますから午後6時以降なら大丈夫ですよー」

「ありがとうございます! では再配達出来る時間で7時過ぎにお伺いします!」


 おにーさん?のハキハキ声、好感度高めで良いですにゃー。

 と、満足しつつ、きのみはそういえば、と尋ねた。


「ところで、品物名って何になってますか?」

「えっと、プリン、ですね」


 プリン。

 え、プリン?

 何で、プリン?

 プリン、きのみのとこじゃないよ?


 通話の切れた端末片手に呆然と立ち尽くすきのみのピンク色の脳細胞は、ある可能性に辿り着いていた。

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