第49話 そして

私はウィスに抱き抱えられながら、広間へ移動した。

先程の煌びやかな雰囲気だった広間は、しんと静まり返っていた。


「なに?どうしたの?」

私は状況が飲み込めず、辺りを見回した。


『離せ!わたくしを誰だとおもっているの!!こんな小国、わたくしの国がすぐに滅ぼしてくれる!』


巨大なスクリーンには、鼻血を出しながら喚く女王が映し出されていた。

「な、なにあれ?」


「リタさん、ありがとうございます。無事で何より。」


「………無事じゃねぇ。」


ウィスが殿下を睨み付けながら呟いた。


「あ、殿下。これは一体?」


「リタさんが拐われてからの一部始終を皆と拝見していました。そのブローチを通して。」


舞踏会が始まる前に、リーリア嬢がつけてくれた青色の小振りなブローチ。これって魔道具だったのか!

するとアダライト殿下が、舞踏会参加者に向けて声高に言う。


「そのブローチを通して、エザリベート・クアンヌの言動はここに居る全ての者が周知することとなった。しかも、我が国のプッテンバルク公爵の裏切りも明るみとなった!我が国は然るべき対応を取らねばならない!」


するとそこへ軍服を着た熊が、アデライト殿下の隣に歩いてきた。


「シュリアリア国は、長年エザリベート女王の悪政に疲弊してきた。シュリアリアの国民を救うべく立ち上がったエザリオン王弟殿下を、我が国は支援していきたいと思っている!」


「女王を、俺をエサにしてわざわざうちに呼び出し、その隙にクーデターを起こさせたんだ。あの腹黒。」


ウィスがぼそっと教えてくれた。


「テラスバイト国には、感謝してもしきれない恩ができた!ここに、我がシュリアリア国はテラスバイト国と友好を結ぶこととする!」


軍服熊が吠えた……あ、もう国王様か。


歓声とどよめきで舞踏会会場は騒がしかった。


「もうここには用はないな。行くぞ、リタ。」


そういうと、ウィスが私を抱き抱え歩き出す。


「ちょっ!ウィス!私、自分で歩くよ!恥ずかしい!」


「何言ってるんだ!こんな傷だらけで…くそっ!だから俺は反対だったんだ!なのにあの腹黒……」

ウィスの表情が極悪になっていく。


魔王さま降臨やめて!


ドア付近にザガンが居て、作戦とはいえ、怖い思いをさせたと、しきりに私に謝ってきた。


「大丈夫だよ、終わりよければ全て良し!」

と声を掛けたけど、ウィスは魔王さまのままだった……












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