第47話 黒幕登場!

「リタ、この控え室から出るなよ。誰が来てもな。」


「とうとう、黒幕動くの?私何すればいい?」


なんだか怖さよりも、ワクワク感が勝ってしまい、前のめりでウィスに近寄る。


「あのなー……。もう少し危機感があってもいいんじゃないか?俺は本当はリタに囮役なんかやらせたくなかったのに。」


「大丈夫よ!ここまで関わったんだから、最後まで面倒見るわよ!」


「……心配なんだっての。はぁ。」


「ウィスお得意のタメ息出ました!でも大人しくしてるのなんて、私には無理だからね!」


鼻息を荒く、フンフンしながらウィスを見る。


はぁぁぁぁぁぁぁ。っといつもより深いタメ息をつき、ウィスが私の胸のブローチを撫でた。小ぶりで控えめな作りだけど、キレイな青色でドレスとも合っている。


「さっきの俺の態度で、女王は何らかの動きを見せると思う。リタは取りあえずこの部屋で待機。近くに殿下の影も居るから、危険な事はないとは思うが…」


「うん。で、誰か来たら何すればいい?」


「まずドアを開ける前に、誰が来たか確認してくれ。で、この部屋に入らせる。この部屋には、対魔術の仕掛けがしてある。何か仕掛けられても魔術が発動することはない。」


ほうほう、便利だね。


「俺は一旦会場に戻る。が……」


ウィスがおでこにチュッと口づけた。


「無理するなよ。必ず守るから。」


そう言うと、ウィスは部屋から出ていった。


ふ、不意打ちはまだ慣れない!バカウィス!



私は紅茶でも飲みながら待っているしかなく、段々退屈してきた。


コソッと会場でも見に行くかなぁと思ってたら、ドアをノックする音にビクッ!となった。


来た来た来た!


「はい、どなたですか?」

心臓がドクドクうるさい。少し緊張で手も震えてる。


「あ、薬師殿、俺です。ザガンです。」


「え?ザガンどうしたの?」


カチャっとドアを開けたら、目の前が真っ暗になった。


◆◆◆◆◆◆◆


「まぁ、なんと醜いこと。美しくもなんともない。見てご覧。この平凡な顔。」


「その通りでございますなぁ。エリザベート様のその美貌で、全てが霞んでしまいます。」


「これ、お前。早く起きなさい。」


顔をガツッと蹴られた痛さに、リタは呻き声を上げた。


「うわぁ、性格最悪な方ですね。よくシュリアリアの国民はこんな女王で我慢してるわね。」


気がつくと、広い部屋に手足を縛られて床に転がされていた。


目の前にはシュリアリアのエリザベート女王が、汚いものを見る様に私を見下ろしていた。

その少し後ろに控えていたのは、ナニが小さいあの公爵。


言った瞬間、背中に激痛が走る。


「発言を許した覚えはなくってよ。」


エリザベートの手には鞭が握られていて、リタの背中目掛けて振り下ろされる。


「うっ!」


ドレスが破ける音と共に、痛みが襲ってくる。


「下賤な薬師ごときが、女王に下らない事を言うな!エリザベート様、こやつには私も少々因縁がございまして……。処分は私の方でさせて頂きます。」


「ふん、醜いもの同士ですものね。好きにしなさい。」


「ありがとうございます。あとウィス副団長は私の手の者が捕獲致しました。こやつを処分してから御前にお連れ致します。その頃は薬も効いてきているはずですので、今宵は熱い夜をお過ごしいただけるかと。」


ひっひっひっと下卑た笑い声に、リタは驚く。


「ウィスに何したの!?」


「少し強い催淫剤をな。今頃体が熱くて仕方がないだろうなぁ。」


「あぁぁ、ウィス。恋い焦がれていたそなたを早く腕に抱きたい。」


エリザベート女王は、恍惚とした表情で赤い舌を覗かせた。


「よくそんな事が出きるわね!卑怯者!」


リタの声を無視し、


「報酬は期待しておくように。我が国の宰相に迎えようぞ、プッテン。」


「有り難き幸せ!このグラシアシス、誠心誠意、エリザベート女王様にお仕え致します!そして手土産に、テラスバイトの王城の見取り図をお持ちします。これがあればすぐにでもテラスバイトは落ちます。」


ニヤついた顔を益々ニヤつかせて、公爵が頭を垂れた。


「わたくしの麗しのウィスはどこに?あぁ、早くその逞しい腕に抱かれたいもの。」


サァァァァァっと血の気が引いた。

ウィスがあなたを抱くですって!?

いや!絶対にいやっ!


「ウィスは私のウィスよ!私の掛け替えの無い大切な人なの!」


「醜いそなたには不釣り合いというもの。わたくしはウィスを手に入れる為、沢山の努力をしたのよ。ミレーヌとの争いになるように、境の村を殲滅したの。もちろんテラスバイトの騎士の格好を我が軍にさせて。」


「な、なんてことを……」


「さすがにテラスバイト国内では、拐うのが難しいから、こっちに出てくるように仕向けたのよ。ま、あんな汚い村一つくらい無くなっても平気でしょ?」


ホホホホホホ と、女王が笑う。


私は気持ちが悪くて悪くて、震えが止まらなかった。











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