第46話 作戦開始

私達二人が会場の入り口に立った時、ファンファーレと共に、ロイヤルファミリーが会場中央の階段から登場した。


国王陛下、王妃、第一側妃、第二王太子、勿論アデライト殿下も優雅に登場した。


会場から各々賛美の声が上がる。


「今日は皆、よく集まってくれた。ささやかながら、日頃の労を労う催しを用意した。楽しんでいってくれ。」


国王陛下の声が会場に響き、音楽が流れ出す。


参加者はダンスのパートナーを伴って、会場中央に集まる。


「さぁ、リタ。」


ウィスが私の手を取り、歩き出す。


初めてドレスを着て、初めて華やかな会場でのダンス。

フワフワした夢心地。

ふと顔を上げると、ウィスが目を細めて微笑んでいた。


「綺麗だよ、リタ。俺の最愛の人。」


ボボボボっと顔の温度が上がる。

もう音楽なんて耳に入ってこなかった。自分の鼓動の音だけが響く。


なんとかウィスの足を踏まず、一曲目が終わる。


「楽しかった~!でも驚いた!ウィス踊れたのね。」


「一応な。」


余裕ったらしい顔が腹立つが、カッコよかったから許す。


「リタ、貴賓席に居る赤いドレスを着た女性がエリザベート・クアンヌ女王だ。友好国として招待されたらしい。」


壁に移動しながらウィスが囁く。


ほぅ、あの人がウィスを狙ってるのね。

女王は顔を扇で半分隠しながら、こっちをじーっと見ていた。

正しくはウィスを。


「なんか、妖艶?な大人な感じだね。」


「そうか?ただの化粧を頑張ってるオバサンだろ?」


あー、それ言っちゃう?国際問題に発展するよ。


「目線が煩いな。俺にはリタしか目に入らないのに。」

そう言うと


私のおでこにチュッと口付ける。


瞬間、女王の持っていた扇が歪んだ。


あわわわわわ、睨んでるよ睨んでる!


女王は、こそこそっと後ろの従者になにやら話しかけ、その従者がこちらに近づいて来た。


「さて、動き出すかな。」


ウィスが楽しそうに呟いた。


「ウィス第二騎士団副団長様に、我がエリザベート女王がお話があるそうです。ご同行願いませんか?」


この従者のお兄ちゃん、顔が整ってるなぁ。とほけーっと見てたら、「見とれんな!」とおでこを叩かれた。


なによぅ!さっきはキスしたのに!


「申し訳ありませんが、今日は任務で参加したのではなく、婚約者とこの一時を楽しむようにと、アデライト殿下からお誘い頂きましての参加です。女王への謁見は任務の時にお願いしたいと思いますので、ご勘弁を。」


うわぁ、喧嘩売っちゃったよこの人。一国の女王に。


案の定、従者のお兄ちゃん顔面蒼白になっちゃったよ。


「し、しかし女王自らのお誘いです。お断りにならない方がよろしいかと·…」


「ここはテラスバイトです。シュリアリアではございません。ご了承を。」


ますます血の気が引いていくお兄ちゃん。

「では、失礼します。リタ、疲れただろう?あちらで少し休憩しよう。」


ウィスは、私の腰をぐっと抱き寄せ、頬に口づけをし従者に背を向け歩き出す。


真っ青になりながら、女王の元へ帰っていく。まるで死刑台に行くような足取りの従者のお兄ちゃん。

ごめんよ、強く生きろよ。





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