第45話 さぁ、舞踏会!

気がつけば、空が明るくなってきた。

何度も愛を確かめ合って、二人とも睡魔が訪れ、ウトウトしだした時、


「おはようございまーす!あら?あらららら、いやだ、もう♡」

マッチョ乙女のリーリア嬢が、部屋に入ってきた。

なにやらクネクネとしてて、顔が赤い。


「リーリアさん?こんなに朝早くどうしたの?」


半覚醒状態で、私は体を起こす。


「いやんっ!ちょっと刺激がありすぎるからん!何か着てちょーだいな。」


ふと視線を落とすと、裸の体に点々と赤い模様が無数に見えた。


「!!!」


「いーわね、いーわね、若いって♡でも事後でよかったわ。部屋の外で待ってるわね」


バチンとウィンクをして、リーリアさんは部屋から出ていった。


こんなに跡をつけるだなんて!と恨めしく後ろを見ると、爽やかな顔でウィスはすうすう寝ていた。

腹立つが……好きだ(照)


ワンピースを着て、部屋の外に出ると、リーリアさんは私を小脇に抱えた。


「さ!時間がないの!早く準備しましょ!」


「な!なんの!?」


なんとかもがき出ようとするけど、ビクともしないがっちりホールド。


「舞踏会は待ってはくれなくってよ!さぁ行くわよ~!」


ドスドスドスと大股に歩きだし、私は無駄な抵抗は辞めることにした……


◆◆◆◆◆◆◆

「殿下、全て配置に着きました。」


「ご苦労様です。あとは役者が揃うのを待つばかりですね。」


宮殿には、煌びやかな紳士淑女が集まり、舞踏会の開催を待っていた。


「では、私は陛下の元に行きます。よろしくお願いしますね。」

そう言うと、アダライト王太子殿下は優雅に去っていく。


流石は王族。正装姿は、輝くばかりのオーラを纏っていた。


「じゃ、俺もそろそろリタを迎えに行くとするか。」

ウィスは今日は騎士隊の正装ではなく、上流貴族の装いだった。

自前ではなく、アダライト殿下に借りたのは癪だったが、貴族のような舞踏会で着るなど持ってはいなかったから仕方がない。


王族専用の控え室に着き、軽くノックする。


「あら、王子様がお迎えよ~」

と、フリフリのピンクドレスに身を包んだリーリア嬢が扉を開く。


「ちょ!待って待って待って!やっぱり恥ずかしい!」


部屋の奥からリタの声がする。

いつもは、ヨレヨレのローブを着ているか、ウィスがプレゼントするワンピース姿しか見たことがない。ドレス姿なんて、初めて見るので、ウィスの足が急ぐ。


「リタ……」


ターコイズ色のマーメイドドレスを着て、髪はハーフアップにし、リタは、半泣きになりながら振り返った。


「……なんか言ってよウィス。」


「綺麗だリタ……すごく。」


「さぁさぁウィス様!棒っきれの様に突っ立ってないで、リタ様をエスコートお願いしますわ」


なかなか動き出さない二人をリーリア嬢が廊下へ押し出す。


「リタ様はバッチリな仕上がりですわ。あとはウィス様のエスコート次第!お気ばりませ!」


「……行くぞ。」

そっと腕を出すウィス。

おずおずとその腕に自分の腕を絡ませる。


「なんだか照れるね。あはははは」


「殿下とは絶対踊るなよ。ワルツ一小節でもダメだからな。」


「はいはい、ウィス様が側に居てくださるんでしょ?」

初めて着た素敵なドレスに、恥ずかしいけど気分が上がってきて、自然と笑顔になる。


はあぁぁぁと長いため息を吐き、片手で髪をかき上げたウィスを横目で見て、リタはドキッとした。


ウ、ウィス……色っぽい……私負けてるかも?


「他の男共に見せたくない……。絶対惚れる。必ず惚れる。いっそのこともう帰るか?」


ブツブツ言いながら、舞踏会の会場を目指す。




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