第40話 何処に居る!?
「アダライト殿下!状況は!」
王太子の執務室のドアが勢いよく開き、血走った目のウィスが走り込んできた。
「ウィス第二騎士団副団長、状況はよくありません。」
聞くなりアダライトの胸ぐらを掴んで壁に勢いよく押し付けた。
「ウィス副団長!何をする!」
後ろで控えていた護衛が抜剣する。
「控えろ。私は大丈夫だ。ウィス副団長、リタ殿はドレスのフィッティングの為、 “天使のため息 “ という仕立て屋に居た所を拐われた。」
「ドレスのフィッティング?なんでそんなところに…」
「今は説明を省く。就寝時に狙われたようだ。仕立て屋が部屋を離れた1時間の間に拐われた。微かに魔術の痕跡があった。」
「魔術師か……。で、リタ自身が嫌がって出ていったとは考えられないのですか!?」
「いつも持ち歩いている鞄がそのままだ。自ら出ていったとは考えにくい。」
「あの鞄はいつも持ち歩いていた……。魔術だと?」
「我が国の魔術ではないらしい。不安定なものだったと聞いている。」
「だとしたら……ミレーヌ王国か!?」
「そこまでは……。いま痕跡にあった魔術の追跡をしている。暫し待たれよ。」
ウィスの手を払い、アダライトは襟元を直した。
「くそっ!」
吐き捨てるようにそう言って、
ウィスは部屋から出て行こうとすると、
「ウィス副団長!闇雲に探すのは悪手だ!痕跡の追跡を待て!」
「だからじっとここで待てと?それは命令でしょうか?だったら今ここで退役します。」
ギラギラとした魔獣のような目が、周りに緊張感を産む。
「退役はしなくてよい。なにか進展があれば、術具で連絡する。」
今度こそ、ウィスは出ていった。
その様子は、殿下の護衛もピクリとも動けないくらいのものだった。
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