第37話 拉致の拉致
「明日の準備はよくって?リタ様。」
「え?準備って?」
宮殿で、荷物を馬車に運び終え、自宅に戻ろうとしたら、マッチョ乙女のリーリア嬢に捕まった。
「舞踏会だよっ!明日の!」
ちょっと地声が聞こえたけど、優しい私はスルーした。
「舞踏会か、忘れてた。ちゃんとリーリア嬢の作ってくれたドレスを着るよ。」
「それだけではありませんわ!髪型、お化粧、地盤整備!!」
じ、地盤整備?
「やっぱり、心配していた通りです。さぁさぁ、参りましょう!私の工房へ!」
ズルズルと引きずられ、メンヘンチックな馬車に押し込まれた。
「あ、御者の方。リタ様の荷物は自宅へお願いしますわ。さあ!時間がなくってよ!急ぎましょう!!」
メルヘンな馬車は、街のリーリアさんの工房へ着いた。
着いたと同時に、今度は待っていたお針子さん達に拉致られる。
「私はドレスだけを作るんじゃないんですの。私の作ったドレスを、いかにその方の魅力の増幅に貢献できるか!それが大事なんです!そして!」
バッとスカートを翻し、今から悪どいことをする悪役のような顔で、
「リタ様にもそれなりに頑張って頂きますわ。」
ニヤリと笑った。
ゾゾゾっと背中に悪寒が……
「これは血行をよくする香油です。全身に満遍なく塗っていきます。」
いきなり裸に剥かれ、泡々な湯船に放り投げられ、全身ぎゅうぎゅうと塗りたくられる。
「痛い、痛いってば!」
「まだまだ序の口ですわ。次は骨盤を矯正して、綺麗なラインが出るようにします。」
リーリアさん、躊躇なく私の全身を揉みしだく。
「ぎゃー!折れる折れる!」
「続きまして……」
お針子さん達も加勢し、私の悲鳴が部屋中に響く………
「今日のラストです。このまま寝て頂いて、また朝から仕上げに入ります。ではおやすみなさい。」
寝返りで、体のラインがくずれないようにと、四肢を固定され大の字でベットに貼り付けられる。
体には、香油を振りかけたタオルが掛けられた。むせ返るような匂いで、咳き込む。
これで寝ろって無理だろーが!!
なんとか拘束を外そうともがいていたら、周りの空間が歪んだ。
歪んだ空間から、人が出てきて私の首にヒヤリと金属を当てた。
「一緒に来て貰う」
そう短く言うと、パチンと拘束が解け、歪んだ空間に引きずられた。
今日は引きずられてばかりだ。
こういう時は、驚いて大声をあげてはいけない。
刺激になるような行動は控えて、冷静に周囲を観察する。
さて、何処に連れて行かれるんだろうか?
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