第34話 醜い企みたち
「まだわたくしは待たなくてはいけないの?」
煌びやかな豪華な一室に、大輪の花のような美しい女性が居た。
その目の前に、ガタガタと震え、顔は真っ青になっていた貴族の男が立って居た。
「お、王妃様には大変お待たせしており、申し訳なく……」
ビシッと乾いた音が響く。
「ひぃっ!」
「お前は、すぐにでも用意出来ると言ったと記憶にあるのだが?」
「も、申し訳ありません!!」
貴族の男は四つん這いになり、ひれ伏した。
すうっと立ち、一目で分かる高価なドレスの裾が動く。
「わたくしは、嘘が嫌い。無能な人間も嫌い。」
「あ、あ、も、申し訳…」
ビシッ!
「ぐわっ!」
高貴な大輪の花のような女性の手には、彼女には似つかない鞭を持っていた。
ビシッ!ビシッ!ビシッ!
その鞭を上手にコントロールして、貴族男の背中に何度も何度も振り下ろすと、服が裂け、鮮血が飛び散る。
「お、王妃さ……ま!もう少し、もう少しお待ちください!必ず手に入れ、御前に献上いたします!」
貴族男の懇願中にも、容赦なく鞭は振り落とされる。
「ふふふ、醜いのぉ。醜い。わたくしは醜いものも嫌い。」
王妃と呼ばれた女性の顔に、返り血が降りかかる。
「あまり待たせるではない。早くわたくしの前に連れてくるのだ。」
血がベッタリ付いた鞭を、侍女に渡し、微笑みながらまた豪華な椅子に座る。
「かっ…はっ……、か、必ずや、必ずや御前に……。その暁には、」
背中を血だらけにしながら、目だけギラギラとさせて貴族男が王妃ににじり寄る。
ふいっと顔を逸らし、興味がないように、
「分かっておる。お前の忠義には報いろう。それなりの地位を用意してある。ただ、連れてこれなかった場合は……」
真っ赤な口紅が塗ってある唇を歪ませ、ニヤリと笑う。
「お前の首を、お前の屋敷の門に飾ろう。」
こういう場面に慣れているのであろう、周りに控えている侍女や護衛騎士達は、無表情でただ立っていた。
貴族男は、その護衛騎士に支えられ退出した。
「くそ!くそ!くそ!どうして私がこんな目に!!ザガンを呼べ!今すぐにだ!」
他国の貴族として訪問した男に、それなりの部屋が用意されていた。
そこに控えていた自分の側近に怒鳴りつける。
「公爵様、ザガンはすでに再潜入しているはずです。」
「遅いわ!今度奴が失敗したら……私はどうなるんだ!あのクズめっ!」
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