第30話 待っていた手紙

「よし、各自交代で食事を取れ。あまり密集しないように。食事中でも、気を抜くなよ。」


「「はっ!」」


ウィスは上機嫌だった。


見た目では分からないが、かなりご機嫌だ。


よく見ると、若干口角が上がっている。


部下達とは離れた場所に移動し、懐から紙を取り出す。


『私は元気だよ。

ちゃんと食べてるし、お風呂だって入ってるよ!

あとあの小鳥、可愛いけど、口からデロデロ手紙を出すのはちよっと……引く。

怪我しないように、気を付けてよ。』


愛しい人からの、初めての手紙。


もう何度も何度も読んでいて、紙が、折り目のところで少し切れ目が出来てしまうくらいに繰り返し読んだ。


手紙には続きがあり、そこには何度も消しては書き直した跡があった。


『早く帰ってこい。バカウィス。

寂しすぎて、死んじゃいそう。』


可愛らしさ爆発してるだろ!これは!


今までのリタの対応を見てると、信じられないくらいのデレである。


俺が居ないから、寂しすぎて死んじゃいそうだと!?


あぁ、リタリタリタリタリタリタ!


すぐに抱き締めに行きたい!


まずはぎゅっと抱き締めて、髪の匂いを嗅いで(ちゃんと風呂入っているのか確認の為)、オタオタするリタの顔を手で包んで、「愛してる」と囁く。

するとリタは慌てて「な、何言ってるのよ!」とか言って、離れようとするから、腕の中に引き寄せ、まずは額にキスして、次は瞼、鼻、頬、口に行くと見せかけて、首筋、鎖骨。

真っ赤になってるリタの耳元で「次はどこにキスして欲しい?」と聞いて、


「うぅぅぅ………口。」

顔が真っ赤で、言った自分が悔しい!とフルフル震えてるリタに、軽く口にキスをする。

何かを言いかけようと口が開いた瞬間に、舌を忍び込ませ、深い口づけになっていき…………


ウィスの妄想が止まらない。


「こちらにいらしたんですか?」


そんな最中に声を掛ける馬鹿は、少し哀れである。


「ひっ!あ、わ、私、お食事をご一緒にいかがでしょうかと、お誘いに、あの、」


「もう済みました。結構です。」


視線で、殺されるかのような殺気を全身に浴びてしまったシャルネリドは、

「し、し、失礼しましたー!」


と走って行ってしまった。


賢明な判断である。


またウィスは手紙に視線を落とし、また人には言えないような妄想に耽るのであった。




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