第26話陰謀と焦り

「そうですか、赤い印がありました……か。」




「あの印はミレーヌの魔術師の印です。身元を隠匿の魔術で隠していたとのこと。」




宮殿の王太子の執務室で、黒い装束に身を包んだ男からの報告を受けていた。




「それをリタさんのお陰で、発見できたという訳ですか。」




深夜の王太子の執務室では、度々、定期報告以外の裏報告がされていた。




「ウィス副団長の手紙は、何故かこの魔導師が全て手に入れていた模様です。」




うーん、と顎に手をやり考え込む。




「敵国の魔導師が、一騎士の私信を欲するのは何故でしょうね。こちらへの定期便には全く手をつけていないのに……」




「正体を明かされたと思ったのか、次の朝には姿は隊から消えていました。」




「なにかしら動きがあるかもしれませんね。悪いんですが、またチェルシーに戻り、様子を伺って下さい。」




短く会釈をすると、スッと黒装束の男は暗闇に消えていった。




まだ窓の外は真夜中。街の明かりもまばらだった。


アダライトは、暫く夜の街を眺めていた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




宮殿の一室、リタの為に整えられた仕事部屋では、マチルダの為の悪阻軽減の薬作りに没頭しているリタが居た。




「料理屋だから、匂いを押さえる事はできないから、なんとか鼻腔から取り込む匂いを無くする……のは無理か。じゃぁ、匂いを関知する機能を一定期間麻痺させるとすると………」




リタはなんとかマチルダの力になりたかった。


今まで散々お世話になっているし、彼女の人柄が好きだ。




「でもマチルダさんに子供が出来たのかぁ、妊娠できたんだ。そっかぁ。」




色々と相談を受けてきた身としては、感慨深いものがある。




ふと、自分が大きなお腹を抱えている姿を想像してみた。




あれ?




そういえば、私、散々ウィスのを受けてたな……




たくさん受けてたって事は、妊娠の可能性だってあるってことで……




さーーっと顔が青くなる。




待って待って待って!




妊娠したら、子供が産まれてくるってことで、




それは私とウィスの子ってことで、




子育ては!?




私が!?




無理無理無理!




ってか、ウィスはあと2年は帰ってこれないんでしよ?




今、妊娠してたとして、2年も私と子供を放おって置く気!?




はぁぁぁ!?なんだそれ!




無責任にも程がある!




怒りが込み上げてきて、やるせなくなってきた。












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