第22話 自覚

はぁはぁとしばらく呼吸音だけがテントの中に広がる。


現役バリバリの騎士と、引きこもり薬師の体力を同じと見なしてはいけない……


ウィスに会えなかった時は、なんだか心の中がぽっかり穴が空いたようだった。


だから、気にしないように仕事に没頭した。


でもふと思いだし、手を止めると無性に悲しくなって、ウィスの名前を呼んだりした。




「リタ……愛してる……リタ」




そっと頬にキスをして、ギュッと抱き締められた。




「まだ遠征は終わらないから、今度からは短くてもいいから手紙くれよ。心配してた。」




心地のよい脱力感にくるまれてた私は、カッ!と目を剥いた。




「それはこっちのセリフ!手紙の一つも寄こさないで、私だってどんだけ心配したか!もしかしたらって…ウィスが……」


今までの気持ちが押し寄せてきて、思わず涙が溢れる。




「な、泣くなよリタ!俺は何度も手紙、送ってたぞ?またどこかに紛れてるんじゃないか?俺が居ないから、すごい事になってるだろ?部屋。」




「今は宮殿に居るから、メイドさんが綺麗にしててくれるもの!待ってても待ってても、一通も来なかったわよ!」




「ちょっと待て、宮殿に居る?なんでそんな所に居るんだ?」




なんだかゾクッとした。急に冷えてきた?




「アダライト殿下が、家で倒れてた私を見つけて、保護してくれたのよ。大丈夫って言ったのに。」




「殿下…がぁ?」




「そう。」




はあぁぁぁぁぁぁぁぁ。と深い深いため息の後に、何故かギラギラした目でウィスが聞く。


「………何も、されてないよな?」




「何もって?何も。あ、ご飯は毎回一緒に食べてる。時々仕事も手伝ってくれてるよ?」




「あんの、クソ男……。俺が居ないからって、ぬけぬけと………」




ボソボソと呟いたので、何を言ったのかは聞こえなかったけど、なんとなく不敬な感じがした。




「リタ、俺とリタはどんな関係だ?」




「へ?どんな関係って……」




「俺の事はどう思ってるんだ?」




ウィスの事……




今まで、なんだかんだ煩いこと言ってたけど、私の事よく考えててくれて、身の回りの事もしてくれてて、隣に居るとなんだかポカボカしてて……


だから、居なくなってなんだか変な感じがして……




キスもウィスとなら嫌じゃなくて、それ以上の事も……




あ………




私、




そうか……




好きなんだ。ウィスのこと。




かあぁぁぁぁっと顔が赤くなる。




「リタ?」




なんだか、自分の心を自覚したとたん、ウィスが3割増キラキラで見える。




「うぅぅ~、キラキラ眩しい……」




顔を両手で隠そうとしたら、ウィスの手が重なった。




「俺はこれから先も、リタと一緒に居たい。遠征前にも言ったけど、結婚したいと思ってる。」




「すぐ女の子に囲まれて、キャーキャー言われてる……」




「俺が勃つのは、リタだけだ。これも言った。」




「うぅぅ~、なんだか悔しい。」




「なんでだ?」




「私、ウィスの事、好き……らしい」




ぐんっと腕を引っ張られて、ウィスの胸の中に抱かれた。




「やっとか、やっと。長かったなぁ。よく我慢した、俺。」




ウィスが嬉しそうに笑う。笑うと少し幼く見えるんだよね。




私も笑う。


もう意地張らなくてもいいんだ。


嬉しくなってきゅっと抱きついた。




「あ、勃った。」




バコッとウィスの頭を殴った。










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