第18話 思いがけない連絡
「失礼します!」
ノックの音の後に、近衛騎士らしき人が入って来た。
「チェルシーからの定期報告です。」と、くるくる巻きの書簡を殿下に渡した。
え!?ウィスのいる所からの!?思わず立ち上がって、近衛騎士をガン見した。
「ご苦労様。下がっていいですよ。」
敬礼をして、颯爽と部屋から出ていく。
「ふむ、特段大きな動きはないようです。」
「…ウィスは無事ってことですか?」
ぐぐっと握る手に力が入る。
「そのようですね。副団長は無事ですよ。」
「よ、よかっ……」
ポロポロと涙が溢れてきた。
「リタさん…」
「あ、ごめんなさい!だって、この半年何の連絡もなくて、ウザイくらい手紙とか来るかなぁって思ってたのに、一度も無くて…だから、どうしてるのかなぁって…まったくもぉ、連絡くらいしろってことですよ……」
言いながらも、涙が止まらない。
バカウィス!無事なら無事って連絡くらいしなさいよっ!
バカバカバカ!
気がつくと、殿下にぎゅっと抱き締められていた。
「大丈夫です、副団長は無事です。あの人がそう簡単にどうにかなる訳ないですよ。でも……おかしいですね。」
へ?とボロボロのグシャグシャになった顔を上げると、キラキラした整った顔と目が合った。
いや、近いから!ぐぐっと離れようとして殿下の胸を両手で押す。
「あれほどの執着、独占欲の塊が、この半年間、なにも無いなんて…考えられませんが…」
「たかが、それまでの仲と思ってるんでしょ!きっと!………あんだけ色々しておいて……」
「色々とは?」すうっと殿下の表情が変わる。
んんん!心の声が出ちゃってた!
「いや!ほら、その!お世話!お世話されてたから!」
「そうですね、確かに母親のように甲斐甲斐しくしてましたもんね。母性そのもの……」
何かを真剣に考えてる殿下からの拘束を、なんとかほどこうと、うんうん体を動かすもびくともしない!見た目より力あるのね、殿下…
たまには仕事してきます と爽やかに出ていった殿下を見送り、ドサッとベットに倒れこんだ。
よかった、ウィス。無事だった…
ってか副団長?ウィスが?
聞いてない!!
寡黙すぎるだろーが!必要な事はちゃんと言っとけ!
泣いたり、怒ったりで気持ちが忙しい。
そのまますーっと寝落ちしてしまった。
「ではよろしくお願いしますよ。」
暗がりで話す声。
言われた側は、短く会釈をしてスッと姿を消した。
「私としては、状況的にはいいんですがね、フェアじゃない。堂々と手に入れないと。あと、誰かを想った泣き顔は見たくないもんです。あれはくる……」
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