第14話 一人の思い

空が段々と白み始めた。


ウィスは隣でスヤスヤと寝ている最愛の人を見ていた。


「う~、ウィス、それは…ダメ…」


夕べの情事を夢見ているのだろうか。


「私の…肉ぅ……食べちゃダメ……」


プッと吹き出してしまう。


色事より食い気か、リタらしい。


顔に掛かった髪をよけてやる。


「ずっとこうしたかったんだ。なのにお前は全然俺の気持ちに気がつかなくて……いや、俺が勇気が無かったんだな。気持ちを伝えて、お前に拒絶されるのを…」


そっと頬に手を当てる。


「なぁ、分かっているのか?どんなに俺がお前を愛しているのかを。どんなに離れがたくて、心配してるのかを。」


おそらく、高い肉を食べている夢を見ていて口が半開きになっている唇に、そっとキスを落とす。


「愛してる」





ドカッ!とした衝撃で目を覚ました私。


「な!何事!!敵襲!?」


ベットから落ちた衝撃だった。


「いたたた、頭から落ちることないでしょうが……」


しばらくぼーっとして、なかなか覚醒できない。


「あれ、確か夕べは………………ウィス!!!!!」


慌てて見回すが、部屋にはリタ一人。


夕べの熱い時間と感触がまだ身体に残っていた。


なのに、


シーツは綺麗に整えられ、自分の身体も汗の後や、行為の後もない。


「ウィスが綺麗にしてくれたんだ……」


部屋から出て、家の中をフラフラと歩く。


台所には夕べのシチューの残りと、リタの好きな卵料理が皿に盛ってあった。


「美味しかったなぁ、夕べのシチュー。」


立ちながら、一口スプーンですくって口に入れた。


「あれ?味がしない……おかしいな、ウィスと食べた時はあんなに美味しかったのに。」


ポタポタと涙が出ていた。


「うぅぅ、バカウィス。黙って行くな。起こしてくれたっていいじゃない。へたれウィス。バカバカバカ……」


床にしゃがみこんで、動けなかった。








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