第12話予感

「片付けしておくから、リタは風呂入ってこい。」




まだフリフリエプロンを着たウィスが、カチャカチャと食器を運びながら言った。




「片付けくらいやるよ。そのくらい出来る。」




「これ以上皿を割られると、明日からすり鉢に飯を盛ることになる。」




商売道具は大事。お言葉に甘えて、私はウィスが魔法で入れた、いい塩梅のお湯加減の風呂に浸かった。




「薬棚から、少しハーブもらって入れたぞ。」




ドアの向こうからウィスの声がした。




よく見ると、お湯からラベンダーの匂いがする。




そんな細やかな気遣いが出来るイケメン、やるなウィス。




私はリラックスしてぐぅ~と足を伸ばした。




お風呂に入ったから、後は寝るだけか…




寝る……普通に『おやすみ~』とはいかないだろうなぁ。




うぅぅ~なんだかソワソワする。




これから起こるであろう、事情を想像して顔が真っ赤になる。




でも私はそれを期待してる?




うぅぅぅぅ~。




ウィスの剣ダコのある、あの大きい手が、私の身体を優しく撫でて、




心地いい低音の声で、耳元で『リタ』って囁かれたら、




…………




「恥ずかしいすぎるわーーーーー!!」




ザバっと湯船から出たところで、




「リタ、着替えは置いといたやつ着てこい。あと風呂で遊ぶじゃない。」




ガチャっとドアが開き、それだけ言うとまたドアを閉めて行ってしまった。




いや、私、裸……だったんだけど?






お風呂から上がり、ペタペタと寝室へ行く途中、




「また髪、乾かしてない!」




と、ウィスおかんに捕まり、心地いい風で乾かしてもらう。




「風邪をなめるなよ、体力がないリタはすぐ寝込むだろう。……本当に心配だらけだ、俺が居ない間……」




そっか、明日からはこうしてご飯を一緒に食べたり、小言を言われたりできないんだ……




ずんっと心に、大きな重石が落ちてきた感じがした。




「じゃ、行くか」




フワッと身体が浮いた。デジャブ!!




「ウィス!なにして……」




「抱き上げてる」




「なんで!?」




「逃げられないように」




「逃げる!?どうして!?」




「リタの裸見たら勃った。」




な!なんですとーー!!




「だ、だって今までだって平気で、洗ってくれてたじゃない!物を洗うようにゴシゴシと!!」


「好きな女の裸を見て、勃たない男は居ない。必死に堪えてた。俺は偉いと思う。」




淡々と言うセリフじゃない!




これからの事をバッチリ匂わせて、私を抱き抱えながら、ウィスは寝室のドアを開けた。


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