第11話 なんだかんだで、おかんです

「うわ~沢山買っちゃったねぇ~」


自宅に戻り、買ってきた食材の袋をテーブルにドサドサっと置いた。


「シチューの他に、日持ちのする物を作っておくから、ちゃんと食べるんだぞ。カビが生えてたら食べるなよ。」


「おかんだ、おかんが居る…」


「旦那、だろ。」


ひゅっと声が出た。


「じゃ、今から作るから仕事してていいぞ。」


「ありがとう。手伝おうかと言おうとしたけど、余計な手間になるのを心得ておりますので……」


「よくご理解されているようで。任せろ。」


そう言うと、フリフリエプロンを着て台所に向かうウィス。


これ程、フリフリエプロンが似合わないのもないなぁ。と後ろ姿を見送る。


いつもこんな風に、ウィスはご飯を作ってくれる。


こんな姿、さっきのご令嬢達は知らないだろう。


私だけが知ってる事。



すこし胸がスッと晴れていくのが、分かる。


……なんだか心が、むず痒い。


私は、いそいそと仕事場に戻った。


しばらくして、


いい匂いが漂ってくる。


それと同時に、ぐうぅぅっとお腹が返事をする。


「リタ、メシに出来るか?」フリフリエプロンのままでウィスが仕事部屋に入ってきた。


「うん、今行く。」と立ち上がった瞬間、

ふわっと身体が浮いた。


「な!なにをされてる?」


「お姫様抱っこってやつ。やってみたかった。」


それ、無表情で言うセリフじゃないよ!


「ってか恥ずかしい!降ろして!」


「恥ずかしがる必要ないだろ。俺とリタしか居ない。」


「いやいやいやいや、十分恥ずかしいよ。」


「観念しろって。嫌がるともっと凄いことするぞ。」


ニヤッと笑い、私はそのまま抱えられていかれた。



台所のイスにふわっと座らされた。


不整脈が止まらない。


挙動不審になっていたら、大好物のシチューが運ばれてきた。


「これこれこれ!ウィスのシチュー!大好きなんだよね~。最後の晩餐にも食べたい!」


「リタはこれがほんと好きだよな。簡単に作れるけど。もっと手の込んだもの食べさせたいが、今日は時間が惜しい。」


そう言いながら、私の隣に座るウィス。


「では食材と、料理人に感謝!頂きます!」


ガツガツ食べてしまった。


「おかわりあるから、もっとゆっくり食べろよ。ほら、口の横、付いてる。」


ウィスの指が、付いてたシチューを絡めとる。


で、食べた。


「旨いな」


ひゃーー!なにそれ!


益々不整脈が………








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