第10話それぞれの想い

「リタさん、今夜時間ありますか?良ければ私の晩餐にご招待したいのですが。」




「いや、今夜は……」




「ウルタ牛のステーキ、好きでしたよね?あと蜂蜜酒もありますよ。ランクAの。」




なんですと!?ステーキも久しく食べてないし、しかもウルタ牛!そしてランクAの蜂蜜酒ですとっ!!あれは滅多にお目にかかることがない、極上品……




思わず「行きます!」と言いかけたところで、




「すいません、殿下。こいつ今夜は先約があるんです。」




いつの間にか私の隣に来たウィスが、私の腰を抱き寄せ言った。




なんだか、怖い顔で……




「リタさん、その先約ってなんですか?」




「ほぇ!?あー…そのー…」




「殿下には関係ありません、申し訳ありませんが私達はこれで失礼します。」




言うが早く、くるっと腰を抱えられ、物凄い早さで、正門目掛けて引きずられるように歩かされる。




「……ま、今日のところは我慢しますか。でも明日からは貴方は居ない。残念ですが。」




誰に言うわけでもなく、王太子が呟いた言葉は、さっきまでウィスに張り付いていた女性達の叫び声にかき消された。








「ちょっと、ちょっと、ちょっと、ウィス!あれは不敬よ、流石に!」




「人のものをかっ攫うなんて、させるかよ。」




「へ?」




「それよかリタ、お前 行く って言いそうだったろ。」




ドキーン




「何の為に、俺が着替えを取りに来たのか、わからない訳ないよな?なっ!?」




「………すいません。」




「ウルタ牛くらい俺が食わせてやるよ。……Aランクの蜂蜜酒は…、まぁ、そのうち。」




お高いもんねー。と言ったら頭を叩かれた。ヒドイ。




「今晩、何食べたい?牛か?」




うーん、と考えて、




「ウィスの作った、ホロホロ鳥のホワイトシチュー!あれ絶品!!」




やや頬を赤らめて、ニカッとウィスが笑った。




「すっげーの食わしてやる。覚悟しとけ。」




そのまま二人で、材料を街に買いに行った。













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