第9話嫉妬で嫉妬

イレギュラーな事が続き、城から出てくるのが遅くなってしまった。




ウィスはもう待ってるかなぁ?と考えたところで、


「いや、待て待て。そしたら一緒に帰って、またあんなことするの?」




思い出して顔が真っ赤になる。




嫌じゃなかった。




耳ともで囁く声も




優しく撫でる手も




いつも無表情なウィスの、少し赤くなった顔も




「やじゃなかったんだよね、私。」




確かに、今までも裸になって風呂入れられたり、




胸や、大事なところまで洗わせて…




「な~んも前兆なかったじゃないの。」




『約束が…欲しい』




そうウィスは言った。




約束…………約束?なんの?




「結婚したら とか、子供は とか話してたけ


ど、本当にウィスは私とそうなりたいのかな?」




いやいや、待て待て。




あの夜、雰囲気で流されて、あんなことしたけど、もともとウィスは責任感が強いから『結婚』なんて言葉が出てきたのでは?




明日から軍命で、3年間も出向するから、取り敢えず男の欲を手頃な私で満たしただけなのかも?




グルグル思考がまとまらない。




「リタさーん!」




後ろから、宰相室の前で会った金髪の青年が追いかけてきた。




「はぁ、はぁ、はぁ、ま、間に合った………」




「どうしたんです?そんなに走って。アダライト王太子殿下。」




この金髪の青年は、ここテラスバイト帝国の第一皇子。




やや気弱で、以前は、さっきの怒鳴り散らしたブッテンバルグ公爵や側近に見下されていた。




ある日、いつものように、護衛騎士がわざと皇子を転ばした場面にたまたま居合わせた私が、その護衛騎士をボロクソに罵り倒し、脅した事がきっかけで、興味を持ったらしい。




『そんな威厳もへったくれもない皇子に、自分の国を任せられますか!背筋を伸ばしてシャンとして!猫背は余計に弱く見られます!!』




そして皇子に対しても、そのような渇を入れてしまった自分が恨めしい。




それから何かにつけて、私を見つけては耳と尻尾を出した大型犬のような姿になる。




「す、すみません。私が居たのに公爵を止められず……。あなたに嫌な思いをさせてしまいました。本当に自分が不甲斐なくて………」




「大丈夫ですよ、皇子。あんなのは気にも止めてません。ただ吠えてるだけの子犬ですからね。ってか、皇子!また猫背になってます!猫背は内蔵にも負担がかかり、骨を歪めます。背筋伸ばすって何度も言っているでしょう!』




「あはは、リタさんには敵わないな。」




「でしよ?だからまた見たら怒りますよ。」



「ところで、なんで公爵はリタさんをあんなに目の敵にしているのです?」




「あー…、以前、薬の調合を頼まれたんですが、断ったので。」




「何の薬ですか?」




「えーっと、その、 (ナニ)を大きくする薬です。自分のはかなりお小さいみたいで。」




ぼぼっ!と皇子の顔が真っ赤になった。




「そ、そ、そ、そんな薬を貴方に頼んだのですか!?婦女子にナニを、いや、何をしてるんだ!」




「元々、お貴族様の威張りちらしされてたので、気に入らなかったから断りました。それから何かにつけて絡んでくるようになって。」




本当にいい迷惑である。




「そうだっんですね、もう少し私に力があれば、リタさんを守れるのに……」




「あ、いや、お構い無く。」




「私が嫌なんですよ、貴方を守れないのは。


もう一人からも……」




皇子が真っ正面を見て、そう言った。




?とそちらを見ると、




ウィスがこちらを物凄い眼力で、睨んでいた。




周りに女官や女性騎士を取り巻きにして………




よく見ると、一人の女官は腕を絡めている。






ムカッ






ん?




ムカッ??



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