第7話 天敵現る
私とウィスは、てくてくと王城へ向かって歩いていた。
「リタ、それ何の薬なんだ?」
「依頼主の情報は秘匿です。」
くたびれたショルダーバッグに薬瓶を入れ、カチャカチャ鳴らしながら前を向いて歩きながら答える。
「…なんでさっきからこっち見ないんだよ。」
ウィスが少し拗ねたように言う。
「前を向いて歩かないと、危ないのです。」
ってか、ウィスの顔見ると不整脈が酷すぎる。
すっとウィスの顔が近づいて、
「転びそうになったら、抱えてやるよ。」
耳元に息がかかる。
「!!ふっ!不意打ち禁止です!」
くくっと笑われたっ。
「うーー。随分楽しそうですね。」
「リタはたのしくないのか?」
「楽しいわけないでしょ!」
あはははっ!と声を出して笑いやがった、腹立つ。
「俺は兵舎に行ってるけど、リタ大丈夫か?」
「だって、政務室に行って宰相さんに会うだけだもの。迷わないよ。」
「俺のが早いと思うから、ここで待ってるよ。」
本当にまた今日も泊まる気か?
夕べの事が思い出され、顔が赤くなる。
うーーー調子が狂う。
ウィスと別れ、政務室を目指す。
「リタです。宰相様に依頼品をお持ちいたしました。」
ドアの外に居た、護衛の騎士に取り次いでもらう。
重くて立派な扉を開けてもらい、中へ入る。
フカフカな絨毯に足を取られそうになる。ちよっと毛が長いんじゃないの?っていつも思うわ。
「おぉリタ殿!待っておりましたよ!」
部屋の奥から、ドタドタとお腹を揺らしながら走ってくる小太りの男性。
やや髪も薄い。
「こんにちは、宰相さん。約束の薬、完成しました~!」
「おぉぉぉぉ!これがその薬なのか!有り難い!リタ殿感謝するっ!!」
もの凄く感激してる宰相さん。
「効果はネズミで確認したから、バッチリですよ。」
「ネ、ネズミで…?」
「はい!それはもう驚くほど、ふ…」
「宰相殿、失礼する。」
『どうぞ』とも言われてないのに、急に扉が開く。
「これはプッテルバルグ公爵、どうしましたかな?ノックの音が聞こえなかったのですが。」
「いえ、なに、怪しげな輩が、宰相殿の部屋に向かったと連絡が入りまして。宰相殿の身に何かあれば、一大事だと慌てて参ったのです。」
「おやおや、その報告をした者は誰でしょうかね?間違った見解を正してやらなければなりませんからね。」
「あながち間違いではないのでは…。おい薬師、用が済んだら早々に王城から立ち去れ。ここはお前のような身分の者が、気軽に入れる場所ではない。衛兵!」
「宰相さん、飲み方は紙に書いてありますからね。用量はきちんと守ってくださいね。たくさん飲んだら凄く効くって訳じゃないですから。」
「き、貴様!私の言っていることが理解できんのか!私を無視するな!!」
「ではまたご贔屓に~」
宰相さんにひらひら手を振って、退出した。
「申し訳ありません、リタ殿。ご気分を悪くさせてしまい…」
扉の外では、はぁはぁと息を切らし、金髪の青年が待っていた。
「いーのいーの、あんなの吠えさせてればいあのよ。」
「しかし、いつもリタ殿を目の敵のように…」
「依頼を断ったの、未だに根に持ってるだけだから。ちっちゃい男なのよ、身体も心も全てがね!!」
丁度、部屋から出てきた公爵に聞こえるように言ってやった。
見る見るうちに、真っ赤を通り越して、どす黒くなった顔でこちらを睨んでいる。
「じゃ!帰ります。」
金髪の青年はずっと恐縮していた。
「あ~めんどくさ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます