第6話勘違って、勘違い

チュン、チュンチュン


「ん~、朝ぁ?まだ寝てていいですね。はい、いいですよぉ。ありがとーございます。」

一人二役のいつものセリフ。別に意味はないけど。

しかし、今朝は体がダルい。

慣れない片付けなんて、するもんじゃないな。

ゴロンと寝返りを打つ。

「おはよう、リタ。いつもあんな可愛い一人芝居してるのか?」

!!!!!!!

「ウィス?!」

目の前には、朝日でよけいキラキラした倍増したイケメンが!

「体、辛いだろ?朝メシ作ってくるけど、その前に…」

そう言うとウィスの固い胸に、ぎゆっぎゅっぎゅっっと顔を押し付けられた。もとい、抱き締められた。

あ、ダルいの片付けのせいだけじゃなかったわ…

「なんだか夢みたいで、まだ信じられない。」

「ウィス?」

「想像では何度もリタと…ごぼっごぼっ!あ、朝メシ作ってくる。食べるだろ?」

「た、食べるけど、食料ないよ?」

「そうだったな…なんか買ってくる。少し待ってろ。」

チュッ とリップ音を出し、私のおでこにキスして爽やかに部屋から出ていった。

なっ!なっ!何ですかっ!あの生き物は!!

昨日までと全然違う!


しばらくして、焼きたてのパンとスーブを抱えてウィスが帰ってきた。

「随分買ったのね。食べきれないじゃない?」

「パン屋のおばさん、おまけしてくれた。」

「よかったじゃん。私が行くと、『もっとまともなカッコしな!』とか『もういい年なんだから、地に足つけてしっかり生きな!』とかお説教ばかりだよ。」

「言われても仕方がないだろ、リタは。」

「『そんなだからいきおくれで、嫁の貰い手ないんだわ』とか、大きなお世話だっ!」

「それはもう大丈夫。俺が居る。結婚は遠征から帰ってきてだから、少し先になるが。」

ぶほっ!

飲んでた野菜スーブを、盛大に吹いた。

「け!結婚?!誰が?誰と??」

「俺とリタ」

「なんでそんな事になってる??!!」

ウィスが眉をひそめため息をつく。

ちくしょう、絵になるな。

「もう観念しろって夕べ言ったよな?」

「観念って、なにを」

「俺を受け入れろ」

「物理的に受け入れたじゃん!でも結婚って…」

「俺、遊ばれたのか?捨てられるのか?そんな薄情な奴だったのか、リタは」

うぅぅぅぅぅ…

「結婚しても、仕事は続けて欲しい。仕事に真剣なリタも好きなんだ。家事も俺がやる。多少は手伝えよ、キレイな環境じゃないといい仕事はできないからな。」

ぱくぱくぱく…

「ゆくゆくは子供も欲しいな。できれば男の子と女の子。あ、やっぱり性別は関係ないか。俺とリタの子ならどんな子でも可愛い。」

ずるずるずる…

「でも、何年かは二人だけで暮らしたいかな。」

「ご馳走でした!」

ガチャガチャと食器を片付け、ローブを羽織る。

「どこか行くのか?」

「宰相さんに納品しに。」

「じゃ、俺も行こう。兵舎に一旦戻って着替えを持ってきたい。」

「なんで着替えを?」

「今日も泊まるから」

な!なんですとぉーーー!







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