六ノ巻~三成の気遣い①~

 私、月城莉菜つきしろりなは謹慎処分最終日を迎えた。半兵衛は羽柴秀吉に何らかの価値がある人物だということで、織田信長に仕えるのではなく、羽柴秀吉に仕えることにした。浅井家から半兵衛がいなくなったこと、タイムスリップしてきた頃みたいに少し静かさを取り戻していった。半兵衛……元気かな? 秀吉殿に迷惑かけてないかな? そんな心配をしていると、部屋の外から三成の声が聞こえた。


「莉菜、開けても良いか?」


「良いよ!」


 私はそう言うと、三成は静かに襖を開けた。そして、私の前に座り話しかけてきた。


「半兵衛殿はもういないな」


「そうだよ。秀吉殿について行ったよ……」


「そうだったな」


「半兵衛より賢い軍師になって、半兵衛を越えるんだ~!」


「まぁせいぜい精進しろ」


「はいはい」


 三成は素直じゃないな~。でも三成らしいや!


「そういえば」


「何だ?」


「何しに私のところに来たの?」


「長政様から、町にが現れたと言うことだ。それで、今日の夜俺と貴様と姫巫女の遣いを討伐にあたってくれと言うことだ」


「姫巫女の遣いか……」


 姫巫女の遣い。平安時代に厄災をを祓う巫女が存在していて、ある日瀕死状態の青年を不老不死の力で助け、二人は恋に落ちた。だが、青年の暮らす村人たちは、巫女の能力をだと恐れ、青年と巫女を殺した。だが、巫女は不老不死の力を持っているため、生き返り、新たな人生を歩みだし他の男性と恋に落ちた。しかし、ある日。不老不死の力を使って人を助けていたのを両想いの男性に見られ、化け物扱いをされ、二度と生き返らないよう痛め付けて殺した。不老不死の力はだんだんと弱まっていたため生き返ることはなかった。その巫女は、人間に絶望し死の世界で巫女の遣いという呪いの化け物をこの世に放った。


 大谷さんからそう聞いていたけど……やっぱりあの影は姫巫女の遣いなんだ……。でも何故?私明日まで謹慎何だけどな~? 私は気になり、三成に聞いた。


「なんで、謹慎中の私なの?」


「吉継は身体が弱い。風邪をひく」


「それはわかる。兄上は?」


「兄上?……あぁ、高虎か?高虎は……知らん」


「兄上でも良いんじゃないの?」


「……お、俺が暇である貴様を推薦したんだ!ただ単に部屋の中に籠っているだけだと気分も悪くなるだろう!」


「……そう?」


「そうだ!!だから、俺は貴様と共に、姫巫女の遣いの討伐に行った方がよいのではないのかと長政様に仰ったんだ!長政様の許可はもう降りている!」


「わかった!長政様の許可が降りているのなら安心だね!」


「夕食が終わったら俺の部屋にこい!いいな!」


 三成はそう言うと、少し顔を赤く染めながら部屋を出ていった。顔赤かった。風邪ひいたのかな? とそんなことを考えながら刀を磨き始めた。私は、三成が長政様に土下座をして、どうしても落ち込んでいる私を外へと連れ出し、気分転換をさせてやりたいと頼んだことを知らないのであった。

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