ニノ巻~月城と織田①~

───大広間。


 私、月城莉菜つきしろりなは、現在大広間にて長政様、お市様。そして、お市様の兄である織田信長おだのぶながと、家臣の羽柴秀吉、明智光秀と対面している。何故、織田信長が、この小谷城へと足を運んだのかというのは、先日のことだった。



───先日。


 私はその日、長政様に呼び出され大広間にいた。私の友達でもある竹中半兵衛や、大谷吉継、藤堂高虎、石田三成全員、大広間へと呼び出されていた。私は、少々遅れて大広間に向かった。


「長政様!遅れて申し訳御座いません!」


 私は、走ってきたため息を切らしながら、長政様にそういうと、長政様は首を横に振った。


「大丈夫だ。気にするではない。まずは落ち着きなさい」


 長政様にそう言われた私は、深呼吸をしてから、大谷さんと三成の間に座った。


 座ると、長政様があることを言い出したのだ。


「近々、織田信長義兄上が家臣を連れて来るらしい」


 私たちは、顔を見合せた後、高虎さんが長政様に問った。


「失礼ながら長政様」


「何だ?」


「何故、あの織田信長がこの小谷城へと来るのでしょうか?」


「恐らく、市の顔を見に来るか、莉菜と半兵衛の勧誘目的だろう。その可能性は高い」


「私たちの勧誘……ですか?」


「あぁ。前に、莉菜と半兵衛は稲葉山城の件で、義兄上に織田に来ないかと誘われたのであったのだろ?」


「そうです。ちゃんと僕たち断りましたよ~」


「それでも、諦めないって言ってたよ半兵衛?」


「そうだったね~まぁ!今回も断るけど!」


「私もお断り致します。私は長政様以外の誰にも忠義を誓いません」


「そこは安心だな。だが、油断はしてはならない。市の兄上だが、市を見放した方でもある」


「お市様をですか?」


「莉菜は知らなかったな。市は、兄である、織田信長に無理やり某のところへと嫁として送り出した。某と結婚させた理由は、浅井と織田。それぞれ、手を出さないようにしたかったためなんだ。某と市は夫婦となり、浅井は織田には一切手を出さない。織田も浅井には手を出さないと約束をさせられた。織田がこちらに援軍を要求すれば、強制的に援軍出さなければならない。こちらも援軍を要求すれば、織田から援軍が来る。そこまでは良いんだ。だが」


「だが?」


「一度も援軍を出しても来たことはないんだ」


 えっ……それは約束とは違う気がするんだけど……。


「それに、市が前に泣きついて来たことがあってな……義兄上に」



───市。御主はもう浅井の人間だ。我には関係のない人間なんだぞ? もう二度と我の前に顔を見せてくるな。


「そう言われたらしい。某は、市を貰い受けた側であり、文句一つ言えない立場なんだ……」


「そんな……」


 私の知っている織田信長より、結構酷い人間らしいな……。自分の妹を浅井に無理やり嫁に出して、約束事とは違うことをして、最後には妹のお市様を自分とは関係のない人間だから二度と顔を見せるなって? こんな酷い話あるか!? 史実よりも酷いぞ! お市様を利用しただけなの? 何を考えているんだ。


「長政様……どうするおつもりですか?このまま、お市様を悲しませたままですか!」


 私は、長政様にそう問うと、長政様は悩みだした。


「いいです!私が織田信長に言います!」


 私はそう言うと、全員私の方を見て驚いていた。


「莉菜!それはやめろ!」


「莉菜。お前が死ぬだけだ。やめてくれ」


「ここでお前が死んだら俺たち……」


「僕もそれに関しては同意しないよ莉菜。信長に言ってみな?ただじゃすまないと思うよ?」


「みんな、忘れてない?私、死ねないのよ?不老不死なのよ?斬られようが焼かれようが死ねないからだなんだよ?大丈夫!」


「いや、そう言うことじゃなくてな?い、一旦座れ!落ち着こうな?」


 大谷さんはそう言うと、私を座らせ頭を撫でた。いやだからなんでいつも頭撫でるのさ……。


「いいか、莉菜?ここは乱世の世だ。いつ何があってもおかしくはない!他の時代から来たお前が、口を出してみろ?切腹ものだぞ!」


「だから何?三成だって、信長に言い返したいことたくさんあるんじゃないの?」


「あるがな。下の者が意見するとな、首を飛ばされるぞ!」


「……じゃあどうすれば良いのさ。謀反でも起こして、相手に伝える?私は嫌よ!長政様が謀反起こして死ぬなんて嫌だ!」


 私はそう言うと、長政様は急に笑いだした。


「莉菜は優しいな。某や市のことを、皆のことを思ってくれるなんてな……」


「長政様?」


「莉菜。義兄上が来たとき、言いたいことを言いなさい!義兄上は恐らく、莉菜の首を跳ねたりはしない」


「長政様!?良いのですか?」


「あぁ!何か、あるんだろう?」


 長政様は真っ直ぐ私の目を見た。私には考えがある。この織田信長の攻略を。長政様はそれを見越してこのように機会を与えて下さったのだろう。私は、長政様に頷くと、微笑んでくれた。


「皆の者。義兄上のことは莉菜に任せる!善いな?」


 三成たちは頷いた。そして、現在に繋がるのであった。


 続く。

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