第3章~悲劇ノ章~

一ノ巻~軍師任命~

私、月城莉菜つきしろりなが戦国時代にタイムスリップしてきて、半年がたった。


 髪も肩まで伸びていたのがさらに伸び、腰まで伸びきっている。不老不死でも髪は伸びるんだ~と思った。大谷さんと御揃いなのが少し嬉しかったりもして、髪を切らずにいた。


 周りは相変わらず賑やかで変わっていない。半兵衛は、私に軍略の仕方を教えて貰い、この前、私が戦場で指揮をとってみると上手く行き、何度も勝利し、ある日、長政様に呼び出されるとこう言われた。


それがしの軍師になってもらいたい」


「半兵衛の方がいいのではないでしょうか?実際、頭の回転だって半兵衛の方が上ですし、何より稲葉山城を一人で乗っ取りましたし……」


「先日、半兵衛にも言ったのだが断られてな……。半兵衛は莉菜を軍師にした方が良いと言われてしまってな」


「半兵衛が?」


「あぁ。何しろ、そなたを軍師として迎えれば、乱世を変えられるくらいの軍師になれるだろう。そう言われたんだ」


「乱世を……変えられる……」


 三成を救うことも出来るのかな……。


「某も、そなたが軍師としていてくれることを願うが……ゆっくり考えると良い」


 そう、長政様に言われ、私はその場から離れた。異世界人の自分が、軍師になっても良いのか、そう考えて廊下を歩いていると、前から、私を長政様に軍師として推薦した張本人がこちらに向かって走ってきた。


「莉菜!」


「なんですか」


「何で怒ってるの?」


「長政様に軍師として推薦したでしょ!」


 私は、半兵衛のほっぺを引っ張った。


「ごへんっで」


「ごめんじゃないの!私なんか軍師になったら浅井家崩壊よ!」


「いへかいひんだはら?」


「そうだよ!異世界人の私なんかが、軍師をやったらどうなると思う!崩壊よ!崩壊ぃ~!」


「いはいって」


「あ、ごめんごめん」


 私は、半兵衛のほっぺから手を離した。半兵衛はほっぺを擦り、半分泣き目で話した。


「力強いな~莉菜は」


「女が力強いと嫌?」


「嫌じゃないよ~」


「それより、何で長政様からの誘いを断ったりしたの?」


「めんどくさい」


「うん」


「疲れる」


「うん」


「強いて言えば、莉菜は軍師の才能があるから」


「才能?」


「うん!記憶力が人並み以上あるの知ってた?」


「まぁーよくもとの時代では言われてたな~」


「そうなんだ!多分僕より記憶力が良い!僕が教えた軍略を使いながら、自分なりに工夫して指揮とってるでしょ?」


「そうね……」


「それが良いんだよ!成長しがいがあるんだ!だから僕は敢えて、長政様に軍師として推薦したんだよ?」


「そうだったんだ……」


「異世界人だから、姫巫女だからそんなのは関係ないよ。前にも言ったけど、莉菜は莉菜だ。心配することはないよ!長政様や吉継殿、三成殿、高虎殿、お市様達に頼れば良い!勿論僕にもね!」


「半兵衛……ありがとう」


「御礼には及ばないよ!明日、長政様に自分の気持ちを伝えてみたら?」


「うん!そうするよ!」


 私は、半兵衛の言葉を胸に刻み、次の日を迎えた。大広間に向かうと、いつものように長政様がいた。私は、長政様の前に正座をし、自分の気持ちを伝えた。


「長政様」


「莉菜か。決まったか?」


「はい。私は、異世界人であり、姫巫女の生まれ変わりかもしれないという者です。未だにこの時代のことを知らない所もございます。ですが、昨日半兵衛から周りに頼れと言われました。こんな未熟者ですが、軍師として勤めを果たしましょう!」


「ありがとう莉菜!そなたがそう言ってくれる日を待っていた!いつでも某たちを頼ってくれ!」


「はいっ!」


 こうして、私は晴れて浅井家の軍師となった。だが、それが間違えだったことをまだ誰も知ることはなかったのであった。

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