ニノ巻~斎藤龍興~

 私月城莉菜つきしろりなは、甘味処であの天才軍師てんさいぐんしである竹中半兵衛たけなかはんべえと出会い、美濃へ共に向かうこととなった。竹中半兵衛は、史実通り、斎藤龍興さいとうたつおきに仕えている。今日は、サボりでこの美濃から少し離れた場所に来ていたらしい。


 私と竹中半兵衛はしばらく馬を走らせていると、城が見えた。そのまま真っ直ぐ馬を走らせ、町の中へ入っていった。流石に馬に乗ったまま町をかけることは危険なため、馬から降り竹中半兵衛がいつも馬を預けている場所に預け、私たちは、城に向かいながら町を見て回った。


 すると、竹中半兵衛は私に手招きをされたので、近寄ってみると色んな菓子が売っていた。

 

「菓子沢山ありますね!」


「そうだよ~!ここの店の菓子は天下一美味しいんだよ!」


 すると、菓子屋のおかみさんが「あらやだー」と照れていた。竹中半兵衛は、桜の形をした和菓子を一つ買って、私に渡してきた。


「え?」


「食べてみなよ~!」


「で、でも……」


「僕を男だと見抜いてくれた御礼だよ!」


「ありがとうございます!」


 私は、竹中半兵衛から和菓子を貰い、口には込んだ。甘さは控えめでとても食べやすく、甘いものが苦手な人でも食べられる甘さだ。


「美味しいです!」


「でしょ!」


 竹中半兵衛も、他の菓子を頼み、二人で食べていると、一人の黒髪の男性がこちらに近寄ってきた。


 すると、竹中半兵衛の頭を叩いた。


「いてっ!」


「半兵衛!!お主どこにいた!」


 私は、一人困惑しているとその男性は私の方を見て、「薬師か」と言った。


「薬師の月城莉菜と申します!」


「お主であったか!そうかそうか!よく来たな!」


 その男性は、嬉しそうに笑った。


「俺は、斎藤龍興さいとうたつおき!」


「斎藤様でしたか!これはどうも……」


 あの、斎藤龍興か……。女好きで、酒癖が悪いと噂が出ている。気を引き締めないと、いつ何をされるか分からない。


「半兵衛よ!さっさと、この薬師の女子を城に案内せぬか!俺は、先に戻る!」


 そういうと、斎藤龍興は私たちのもとから去った。竹中半兵衛は、小さく「めんどくさいな~」と言った。私は、一人で行けますよ? と言うと首を横に振った。


「だーめ!危ないから!龍興様に手を出されるかも知れないし!僕がいる分あの人は君に手を出せないから!」


 噂は本当みたい。私もそれにたいしては同感。手を出されれば、長政様に迷惑をお掛けするかも知れない。


 私は、竹中半兵衛と共に、城へと向かった。


 大広間に斎藤龍興はいた。私は、竹中半兵衛と共に座った。すると、斎藤龍興は笑顔で私に話しかけてきた。


「お主、いつまでここにいるつもりだ?」


「浅井・織田同盟軍との戦が終わるまでお世話になろうと思います。その戦の最中、私がお手伝いすれば、武士達の傷の管理などでき、戦力もなります」


「それは言い考えだな!面白い!好きにせよ!」


「はっ!」


「お主は夜の……」


 斎藤龍興はなにかを言おうとしたとき、竹中半兵衛が急に立ち上がった。


「龍興様。この者はただの薬師ですよ?そこらの女中たちとは違います。ですので、は関係ないと思いますけど?」


 何か……怒っている? さっきまでも雰囲気とは違う気がする……。


「そ、そうだな!もうよい!これから頼むな!」


 斎藤龍興はそう言うと、大広間から出ていってしまった。私は、竹中半兵衛に話しかけた。


「竹中さん?」


「半兵衛で良いよ!」


 もう怒ってない……。何に怒っていたんだろう?


「さーて!城を案内するよ!莉菜!これからよろしくね!」


「は、はい!」


「敬語無しで良いよ!」


「わ、分かった!こちらこそよろしくね!半兵衛!」


 こうして、私は竹中半兵衛と少し親しくなり、城の中を見て回った。だが、何故怒っていたのか、今だ分からずのいたのであった

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