六ノ巻~旅立ち~

 私、月城莉菜つきしろりなは、平成時代から戦国時代にタイムスリップし、数日がたった。


 不老不死ふろうふしの能力を、謎の少女から授かり、私は人々の傷を癒す姫巫女ひめみこの生まれ変わりとして、この時代にタイムスリップしてきた。最初は、色々悩んだり、恐怖でいっぱいだったけど、今はもう、私の側に石田三成いしだみつなりさんや藤堂高虎とうどうたかとらさん、大谷吉継おおたによしつぐさん……。


 そして、私を受け入れてくださった浅井長政あざいながまさ様と奥方のお市様がいる。浅井家はとても温かく、過ごしやすい場所。私の今の居場所は、ここ、浅井家なのだ。


 そして、今日。長政様から初めての任務を下された。


「莉菜」


「はっ!」


「そなたに頼みたい事がある」


「何でしょうか?」


斎藤龍興さいとうたつおき殿のところには行っては貰えぬか?」


「失礼ながら、理由をお聞かせ下さい」


「あぁ。そなたがこの時代に来る前、織田信長兄上と近々、斎藤を攻めることになったんだ。だが、某は斎藤龍興殿のことをあまり知らない。それに、風の噂だと頭が良い軍師がいると言うことだ。龍興殿は、女好きで酒癖が悪いと有名でな。それで、そなたに斎藤家で暫く、その軍師と龍興殿の監視をしてもらいたいのだ。もし、危険だと感じた時は、すぐに帰ってきなさい。決して、そなたが姫巫女の生まれ変わりだと言うのはバレないこと。万が一バレたら、殺しても構わない。善いな?」


「御意」


 私は、元のいた時代で、お婆ちゃんから薬の作り方を教えて貰っていたため、表では巫女をやっていて、裏では薬師やくしをしている設定で、斎藤家に行くことになった。


 最初、大谷さんたちは私を心配してくれたが、私も浅井に恩を返したいし、長政様にもっと役に立つと認めてもらいたいと伝えると、皆、私の思いを受け入れてくれた。


 次の日、早朝に私は、稲葉山城に向かおうと馬に乗った。馬の乗り方は、高虎さんから教えてもらった。覚えが早いと褒められたな~。浅井家に来てからのことを思い出していると、白の羽織を羽織った、石田さんがこちらに走って向かってきたので私は、馬から降りた。息を切らしながら走ってきた石田さんに、話しかけた。


「い、石田さん!?どうしたんですか!?」


「うるさい」


 石田さんは、そう言うと私にデコピンをした。


「痛いです……」


「知らん」


 石田さんの性格は大体理解してきたけど、まだちょっと慣れないな……。


「……貴様。生きて帰ってこい」


「えっ?」


「不老不死で死ぬことはないだろうが、貴様は人間だ。化け物ではない。それだけは間違えるな」


 ……先代の姫巫女のことを気にしているんだ。人間は彼女を化け物扱いをし、彼女は人間に絶望した。その道を、私も辿ってしまうのではないかと心配してくれているんだ……。


「分かっています。石田さんも生きててくださいね!」


「……なり」


「?」


「三成でいい。帰ってきたら俺のことを、名前で呼んで欲しい……それと、敬語も無しで……」


「……分かりました!今よりも強くなって帰ってきます!それまで、お互い頑張りましょうね!」


「あぁ」


 こうして石田さんと話し、色々と不安などが吹き飛び、新たな気持ちを抱きながら、私は稲葉山城へと馬を走らせたのであった。

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