三ノ巻~藤堂高虎~

 私、月城莉菜つきしろりなは、戦国武将の大谷吉継おおたによしつぐに私と同じ不老不死ふろうふしの力を持ち、人間たちに化け物扱いをされ散っていった姫巫女ひめみこの話を聞いた。大谷さん曰く、もしかしたら、私と似た少女がその話の姫巫女であり、何らかの理由で、私に不老不死の能力を授け、その姫巫女に生まれ変わったという。私はただ、平成の世で石田三成を救うことを夢にみていただけなんだけど……これって結構重要になってくるのでは……? それはまた後で考えよう。今は、大谷さんに平成のことを教えて欲しいと頼まれてしまったので、あまり歴史改変させては行けないだろうと思い、花の種類を教えてあげた。


 すると、大谷さんの放った蝶々が戻ってきた。大谷さんの周りを一週した瞬間、その蝶々は消えていった。大谷さんは「来たか」と言うと、小屋のドアをぶち壊してきた。普通に開ければ良いのでは? と思っていると、小屋の中に藍色あいいろの着物を着た黒髪のショートヘアの男性が入ってきた。そして、藍色の着物の男性は私の方を何故か睨みつけ私に話しかけてきた。


「何故女がここにいる!ここは戦場だぞ!女が来る場所じゃない!」


「好きでここにいる訳じゃないですよ!!」


「どういう意味だ?」


 藍色の着物の男性は「意味が分からん」というと、大谷さんが私の事情を話してくれた。すると、私の事情を知った藍色の着物の男性は「すまなかった」と謝ってきた。私は、何て言えば良いのか分からず慌てていると、大谷さんが「慌てるな」と頭を撫でてきた。


「姫巫女様でしたか、先ほどの無礼!失礼いたしました」


「様なんて……莉菜で良いですよ。本当に姫巫女の生まれ変わりなのかも分からないですし……あと、敬語もなしでお願いします」


「わ、分かった。俺は、藤堂高虎とうどうたかとら。莉菜、今から城へ向かい、長政ながまさ様と会って貰う。長政様は、心がお広い方だ。怖がることはない。おそらく、長政様もお前の事情を知れば、受け入れてくれるはずだ」


「分かりました!よろしくお願いします!大谷さん!高虎さん!」


 私は、二人に笑顔で言うと、高虎さんは嬉しそうに「巫女様から頼まれ事を……」と何故か感激しているし、大谷さんはひたすら私の頭を撫でている。私は大谷さんに「楽しいですか?」と聞くと、「楽しい」と即答で言われた。楽しいんだ……。 


 そして、私たちは浅井長政あざいながまさの本拠地である小谷城おだにじょうへ向かった。


 しばらくすると、城が見えてきた。さっきいた小屋から差ほど遠くはないらしくすぐに城に着いた。門のなかを通り馬を降りると、赤色の着物を着て、その上から白色の羽織りを羽織っている、大谷さんよりかは短いロングヘアーの茶髪の男性が、仁王門立ちで待っていた。


 すると、大谷さんが茶髪の男性に声をかけ、近寄って行き、私と高虎さんも大谷さんに着いていった。


「遅くなった」


「そのようだな吉継」


「あぁ。長政様はどちらに」


「長政様は大広間で御待ちだ」


「お前も着いてくるのだろう?三成」


 大谷さん、今なんと仰いましたか? 私は思わず二人の会話の邪魔をしてしまった。


「三成……」


「何だその女は?吉継いつの間に……」


「違う」


「じゃあ、高虎……」


「馬鹿か。この方あの姫巫女様の生まれ変わりなんだぞ!」


「……本当か?」


 三成と呼ばれている男性は、私に姫巫女なのか? と聞いてきた。私は、自分でも分からないと答えると、「どういう意味だ」と言われた。すると、大谷さんが「三成にも話しては貰えないか?」と頼まれたので、全て話した。


 話し終えると、三成? は表情を変えず「俺には関係ない」と言った。その言葉を聞いた私は、少なくともじゃあこの時間を返してくれーと思った。大谷さんは私に「あいつは何時もあんな感じだから気にするな」と言ってきた。私は、大谷さんの言うことを信じ、大広間へと向かったのであった。

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