二ノ巻~姫巫女~

 自分と似た少女から不老不死ふろうふしの力を授かり、戦国時代へとタイムスリップをしてしまった私、月城莉菜つきしろりな。タイムスリップはしたものの、タイムスリップした先が何と、戦場のど真ん中だった。何が起こったかを一人で考えていると、背後からスライム状の黒い影が私に目掛けて襲いかかろうとしていた。


 すると、私の周りに綺麗な蝶々が飛び回り、スライム状の黒い影から私を守ってくれた。そして、そこに水色の羽織りを着た黒髪の男性が現れ、私の手を引いて走り出した。


 私はその男性としばらく走っていると、小さな小屋が現れ、私たちはその小屋へ身を隠した。男性の名は、私の推しである石田三成いしだみつなりの無二の親友である大谷吉継おおたによしつぐだった。


 そして、私がこの時代の人間ではないとすぐにバレてしまい、私は今まであったことを包み隠さず話した。


 すると、大谷吉継は私の話を受け入れてくれた。そして、彼が言うには私が知っている戦国時代ではないらしい。戦はあるが、あのスライム状の黒い影が至るところにいるということだ。さらに、また困惑していると、大谷吉継は私にほんの一部の人間しか知らない話を教えてくれた。


 その話しは、決して他人には話してはならない。私は、絶対話さないと約束をし、私と同じ不老不死の力を持つ姫巫女ひめみこという人物の話を聞くことになった。


「時は平安時代に遡る。ある日、一人の少女が生まれた。少女はとても美しく、一輪の百合のような女性だった。少女には、昔から不老不死の力を持っていた。その力で人を癒し、厄災を祓っていた。村の人々少女のことを、「姫巫女」と呼ぶようになった。その日もそうだった。少女は薬草を取りに村を出ると、一人の青年が瀕死ひんし状態で倒れていた。少女は、自分の指を切り血液をその青年に分け与えた。すると、不思議なことに、その青年が覆っていた傷がみるみる消えていき、青年は目覚めた。青年は少女に助けて貰ったことを自分の村の人々に言うと、皆は口を揃えてこう言った」


────呪いの巫女。と。


「だが、青年は毎日のように少女がいる村へ向かい続け、いつの日にか二人は恋に落ちた。しかし、ある日、青年が暮らしている村の人々は青年が毎日のように、少女の村に行っていることそして、二人が恋に落ちていることを知ると、村人たちは少女の村へ向かい、少女が暮らしている村を襲った。少女と青年は村人たちから逃げていたが、途中村人が放った矢が刺さり、二人とも命を落としてしまう。だが、少女が持つ不老不死の力で少女だけが生き返った。少女は永遠に死ぬことが出来ない運命をたどってしまう。しかし、ある日、他の男性と恋に落ちた。今度こそ幸せに暮らせると思っていた。だが、男性は少女が不老不死の力で人を治療していたところを見てしまい、その男性は少女こう言った」


────化け物。と。


「男性はそう言うと、もう二度と生き返れないとうに痛め付け少女を殺した。少女は絶望した。人間というものに。不老不死の力はなくなり、完全に少女は命を落とした。少女が命を落とした瞬間、その男性と関係者に不幸事が訪れた。そして、その男性は数日後行方が分からなくなった。人々は、姫巫女ひめみこの呪いだと思い、この事を皆、禁句にした。この話をすれば、話した者は少女の怒りに触れ、行方不明となる。そんな思い込みで、一部の人間しか知ることを許さなくなった。 

───という感じだ。」


 そんなことがあったんだ……。不老不死の力があるだけで、化け物扱いされるなんて酷い話だ。黒い影も関係するのかな? もしかしたら、少女が人間を全滅させる気でいるとか? それはちょっと怖いな……。


「莉菜。もしかしたら、お前が不老不死の力を授けた少女が、姫巫女だったかもしれない。だとしたら、お前は姫巫女の生まれ変わりとも呼べるだろう。だが、安心しろ。俺がいる限りお前は死ぬことはないし、あんな運命を辿らせない」


「大谷さん……ありがとうございます。私、たとえ姫巫女のみたいな運命を辿っても、大谷さんたちの事は恨みませんから」


「何故?」


「だって、今日出会ったばかりですけど大谷さんは、差別とかしなさそうですし、なんかそういうの嫌いそう」


「当たりだ」


「私も嫌いですよ。とくに差別が嫌い。とにかく同じことを考えている人がいて良かった!」


「そうか……。ところでこれからどうするんだ?行く当てないだろう?」


 そうだった……。突然の事で考えていなかった……。


「良かった浅井に来ないか?俺も三成も一緒だが?莉菜の目的が、三成の処刑を回避することなんだろう?お前が、浅井に来れば俺がお前を守れるし、どうだ?」


 石田三成もいるんだ! でも歴史と違うな……だって、石田三成は豊臣秀吉とよとみひでよしの家臣なはずだし、浅井にいるとすらおかしい。やっぱり、私が知っている戦国時代ではないのか……。でも、ここで過ごすよりかはましだ! 私は、大谷さんと一緒に浅井に行く! そう決めた私は、大谷さんに着いていくことを伝えた。


 すると、大谷さんは優しく微笑んでくれた。


「そうか。もうそろそろ、俺が飛ばした蝶が高虎を連れてきてくれるはず。それまで、莉菜がいた時代の話を聞かせてはくれないか?」


「はい!喜んで!」


 こうして私は、大谷さんに元のいた時代の話をし、高虎さんが来るまで時間を潰したのであった。

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