第44話 ヴァームフス奪取③
(三人称視点)
「オロフニレンラクスルヨロシヨ」
そして、アグネスが自信に満ち溢れた表情で言い放った一言がこれである。
対するロリとウルリクの反応はこれまた、対照的なものだ。
ウルリクは「なるほど。なるほどな」と心底、合点したように両手を合わせ、一人頷いている。
残念ながら、彼の頭の中に戦略や戦術といった単語は収録されていない。
だが、彼には美徳と言うべき点が一つある。
それはとても素直だということだ。
得てして、長所と言え、短所とも言える損な美徳と言えよう。
「そうね。分かりましたわ。狼煙でお父様に知らせましょう」
なぜかは分からないが自信満々な母親。
何も考えていないのか、呑気に構えているどこか気になる敵将。
二人の様子に頭痛が始まりそうな予感を覚えつつもロリは一人、冷静だった。
いや、冷静にならざるを得なかったとも言える。
アグネスもウルリクも思い付きでしか、動かない人間である。
何らかのプランを具体的に指し示すことが出来ない。
その代わりに思い付きで突拍子の無いアイデアを出すのだ。
道筋ではなく、目印になる光とでもいうところだろうか。
「ジャンジャンモヤスヨロシネ。オロフ、ハヤクカエテクルヨ」
「ソウデスネ、オカアサマ」
目を輝かせて、喜ぶ少女のように純真なアグネスに死んだ魚のような目を向けるしかないロリだった。
アグネスが言った通り、空を焦がさんばかりの勢いで篝火が焚かれた。
夜空を赤々と照らす緊急を知らせる狼煙がヴァームフスから、上げられたのはそれからすぐのことだ。
その有様は遠く離れたモーラからも確認出来るものだった。
龐統の策が成った瞬間である。
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