第4話 龐統と幼女
「あいたたっ。酷いことをする女がいたもんだ」
変態露出狂少女ことドリーに蹴飛ばされ、ワシは落とし穴のような真っ黒な穴に落とされてしまった。
どこまで続いているのかも分からない。
無限回廊が如く、終わり無き落とし穴である。
カモがネギを背負うなどという初歩的な計略にかかるとはワシも修行が足りんということだな!
「そう。修行が足りない」
「お?」
「シゲン。大きくなったか?」
目の前にチョコンと立っているのは小さな女の子だ。
銀で紡いだ糸のようにサラサラと風に靡くきれいな髪。
黄金の色の右の瞳と空の色をした左の瞳。
あまりにも特徴がありすぎる。
だが、大きさが違う。
まず、背丈が縮んでいるではないか。
頭一つ。
いや二つ分くらいか?
小さくなったと見て、間違いない。
童顔の割には随分と立派な物を持っていたのが、完全に
ないないのないである。
ただ、平坦ではなく、あると分かるくらいにはあるのだ。
なだらかな丘とでも例えようか。
見た目が幼子の割には成長し過ぎかもしれない。
「ワシは大きく、なっておらんよ」
「そう。どうやら私が縮んだので間違いない」
小さくなったドリーは拳を握ったり、広げたりを繰り返すとワシの方をジッと見つめ、上から下までを観察するように眺めた。
まるで査定でもされているかのようだ。
何とも居心地が悪いのだが?
「シゲンは変わっていない」
「ワシ変わってないのか!?」
ワシの記憶が確かならば……
「団子鼻。低い。だが嫌いではない。どこか愛嬌がある」
「そ、そうか」
褒められているのか? けなされているのか?
分からんのだが。
ドリーは表情筋が死んでいるのかと思えるほどに無表情で本当に分からん。
「そして、背も低い。お腹も出ている。まるで酒樽のよう」
「お主、容赦ないな……」
全て、ワシの記憶の中のワシの容姿と寸分
この容姿のせいか、ワシは過小評価をされる人生を送っていた。
見た目が立派であれば、それだけで評価されるのだ。
かつてあの毒舌で知られる
見てくれがいいのでその程度しか、役に立たないと揶揄っている訳だが、暗に文若殿の容貌が立派であることを誉めておるのだ。
もっとも文若殿の才や人柄で貶めるところがなかったとも言えそうだが。
逆にいくら中身が優れていようとも見た目が冴えなければ、正当に評価されない。
そういう世の中なのである。
何とも理不尽ではあるが、そういうものだった。
だが、ワシは案外、この顔も体も気に入っておるよ?
「シゲンはそれでいい」
「そうか、そうか」
案外、ドリーも悪い者ではないようだ。
ちょっとばかり、露出狂で変態なだけだ。
問題はあるまい。
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