第2話 明るい陰キャ、美少女になる
「ふわぁぁぁ…」
大きく背を伸ばして起き上がる。今日は特に何もない、素晴らしい1日だ。
「…む?」
なんだか、胸のあたりが若干重い…?
違和感を覚え、下を見てみた。
膨らんでいるのだ。明らかに。
それも男が膨らむようなふくらみじゃない。明らかに欲情してしまうようなふくらみだった。
「…待て待て、それになんか、下も…」
恐る恐る、手を伸ばし。いつも通り、握ろうとしてみた。
玉や棒の感触はなく。そこには、いつも通りの感覚なんて微塵もなかった。
「…どっ、どどどどどどどどどどどどうしょー!!!!!!!!!!!!!」
鏡の前に立ち、一絶望。
ベージュの髪色。肩まで伸びた長い髪。見るも美しいすべっすべの肌。
それはそれは、目を見張るほどの美少女になっていた。
「なんて説明すりゃいいんだよこれ…」
そう話す声もかわいらしい女の子の声に変わり果てていた。
「と、とりあえず、今日は喉がつぶれたことにして部屋で1日を…!」
「……」
後ろからドアを開く音とともに、服を落とす音が鳴った。
…絶対ばれたくなかったのにな…。
「…妹よ、話をしようでは」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!誰ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
俺のその提案はその叫びにかき消された。
「…というわけです。信じてください」
俺は今、実の母と妹に見下ろされながら事情を説明し終えたその瞬間だった。
こんなんなんて説明すりゃいいってんだ。
「信じろって言われてもねぇ…あの子みたいな出来損ないの雰囲気がないものねぇ…」
「ひどくね?えそんなこと親から言われることある?」
「私もおにぃがこんなに美少女なんかになる訳ないって思う」
「ねえ俺マジで君らに何かした?謝るから許してくれない?」
いやはや…俺は一体この人たちに何をしたのだろうか…。
「…わかった、それなら、俺しかわからないことを教えよう…」
俺は最後の切り札を取り出した。
これだけは、取り出したくなかったのだが…背に腹は代えられん!俺は…住居がなくなるのだけはいやだ!!!
「…ベットの下に4冊。押し入れに2冊。天井に1冊。パソコン内に126冊」
「え?いったい何…?」
「…見りゃわかる」
母親たちは言われた場所を漁った。
「……うわぁ」
「……おにぃ、これは流石にない」
彼女らが手に持っているのは、俺の秘蔵のコレクション達だった。
しかも基本的にかわいそうが真っ先に思い浮かぶような内容のものだった。
「…言いたかないが、こんなのを好むのは琉衣しかいないだろ?」
「…信じたくないなぁ」
渋々ながらも、彼女たちは信じてくれたようだ。なんでこれで納得するんだ!
「…まあ、いいわ。それなら、とりあえず今日は学校休みなさい。朝ごはんあるからね」
「あ~い」
「その見た目で普段通りせっするのやめて。背筋が凍る」
最後の最後に俺は表現の自由を奪われてしまった。
…にしても、これからどうしようか。朝ごはんに用意されていたトーストをほおばりながらそんなことをぼんやりと考えていた。
俺の家族、あんなに俺のこと嫌いだったんだな…。
「…かわいい」
とはいえ、心はまだまだ男なわけで。窓に映った自分の美少女ぶりにそうこぼした。
清楚系だけど、髪色は黒じゃないのがいい。すごく端正な顔立ちがベージュの髪色にベストマッチしている。
普段俺が着ているオタTもなぜか映えているのを見て、美少女補正の強さを再確認した。
「…それなりにはあるな」
Bぐらいにはついている。
柔らかそうだ
陰キャで女の子と手どころか話しかけたら「は?」で会話が終わっていた俺だ。
俺は恐る恐る、それに手を伸ばす。
「…んっ」
…な、ななな…。
なんだこれ!!!!!!なんか…えっ、何これ!!!!!!!!!
柔らかい。その感覚が手から伝わった瞬間、触った場所から何とも言えぬ快感のようなものがぞぞぞっと湧いてくるような感覚に思わず艶めかしい声が出てしまった。
「…すっげぇや」
俺は女の人のすごさを実感し、その後は体になれるために1日勉強やらなんやらをして1日を浪費した。
俺、どうなっちゃうんだろ…。
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