明るい陰キャ、美少女になる
時雨悟はち
第1話 明るい陰キャ、そこそこ友達はいる
陰キャ。
それは、学校でさも当然に築き上げられていくスクールカーストの席争いに負け、下のほうへ堕落した者共に付けられる何とも不名誉な称号である。
昨今の二次元ではそれら陰キャを救い出す作品が多く出回るが、それはあくまで創作に過ぎない。
陰キャが這い上がるには、そこに180度の異変。それも、好印象を与えるようなものがなければ不可能である。
それほどに、昨今のスクールカーストは固定化されやすく、その分の格差も大きいものとなっている。
「…だからこそ陰キャは教室の隅っこにいるしかないのだ…ねぇ…
「うわ寒っ。つまりだ。お前は二度とそっから上がってこれねぇんだよ」
そういうと、俺に向けた嘲笑が教室の至る所から鳴った。
なるほど。俺を笑いたくて、こんな本を見せてきたんだな。
「…でもよぉ、祥貴。これ、おっきな声で読んでみろよ」
「あ?なんだよ…『ただし、陰キャの中には明るい奴もおり、そういう奴は陰ながら人気になる努力をしているため話が面白いことが多い』…?」
「まあ、明るい陰キャっつったら、このクラスにいるような気もするけどな~」
俺がそう言って「ん?」という顔をすると、彼はバツが悪そうに離れていき、放課後にも教室にたまっているグループの中で俺への負け惜しみをクドクドと垂れ流した。
その光景を見ながらあきれる俺。そうです。それこそが先ほども言いました「明るい陰キャ」こと
陰キャと言ってもクラス内のカーストの話であって。学年を見ると仲がいい奴は結構いたりもする。
そう、今年はたまたまそいつらと違うクラスになってしまっただけなのだ。
そのせいで、仲いい奴のグループが速攻で出来ていく中、俺だけは取り残され見事ボッチ認定されて、陰キャの印を押されてしまったのだ。
「琉衣~!けぇ~るぞ~」
「あいよ~、ちょっと待ち~」
俺を呼んだ彼は男の幼馴染である
このように一緒に帰るぐらいには友達はいる。ただマジでたまたまかあいつらと全く波長が合わなかっただけだ。俺はそう考えることにした。
「そういやさ、お前明日女になってたらどうする?」
「いきなり振る話題が唐突すぎるだろ」
「いや~、実はクラスでそんな話になってよ。で?どうよ」
俺はいきなりだなと思いながらも考えてみる。
「…俺がされてうれしいことするかな」
「よ!男たらし!」
「うっせぇ!なってねぇからいいだろ!」
しばし二人で笑いながら帰った。
風呂に入り、湯船の中でもう一度あの問いかけについて考えてみた。
「…もし女になったら、か…」
もし本当になったとして。俺は果たして何をやるのだろうか…。
甘いもの食い漁ってみる?女の華奢さを確かめてみる?可愛いしぐさの練習する?
「…キャピッ♡なんちって」
鏡に向かってそんなことして。そのあとはそんなこと忘れて自分の時間を過ごした。
あんな話をしたからか。夢で俺は美少女になっている夢を見た。
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