第16話 吉凶入り乱れ!ツッパリ『凛』と真面目『凛』の日常!!(16)




「菅原さんと仲良くしたら、私もいじめるって言われて!仕方なかったの!だって、相手はあの渕上さんだから――――・・・・!!」


「わかってますよ。」



『ひどいこと』を、言われた瞬間は驚いた。


意味を理解してからは、ショックだった。


傷ついたし、悲しくかったし、思い出しては、すごく腹が立った。




(だけど・・・)



―凛!―




悲しみを忘れさせてくれる存在がいた。


だから今日(こんにち)まで、『菅原凛』として戦ってこれている。





(なによりも・・・泣いてる子相手に、今さら文句言うのは・・・ね。)





「私のことはいいです。あの時は、ああしないと、吉田さんがひどい目にあっていたわけで・・・」




そこまで言って、疑問に思う。



(あのヤンキー女達・・・・渕上一味に合わせて、菅原凛をいじめはずなのに――)


「どうしてあの人達は、吉田さん『も』、いじめるような真似をしてたのですか?」



さきほど、吉田さんが自供したとおり、彼女は『菅原凛』をいじめる側に回ったと言った。



(『菅原凛へのいじめに賛同する』ことで、共犯認定を受けていた。)



英英辞書の貸し借りがあったとはいえ、私への悪口を言ったから、いじめの巻き沿いは食ってないはず。



(それなのになぜ、吉田さんは渕上の手下のヤンキー女達にリンチされていたの?)



どういうこと?



(うーむ・・・)



思わず考えたけど、すぐに考えるのをやめた。



(理由はないかもな・・・。)



なんとなく、考えるのは、原因を探すのは無駄な気がしたから。



(私の時だって、飯塚アダムの方から絡んできたのに、私の方が色目使ったとか言いがかりをつけられたもんね。その誤解が解けても、『ムカつくから』って理由で、完全に渕上ルノアの気分の問題で、いじめの標的にされてるからな・・・)



何度考えても、私に非がない分、納得いかないのよね・・・!!




〔★宿題を嫌々見せてやった結果の、理不尽ないじめだった★〕





自分の体験談をもとに考えれば、吉田さんへのリンチも、彼女に原因はない気がした。



「・・・・・・・負けたの。」


「え?」



そう判断した時、小さな声で吉田さんがポツリと言った。




「ネットゲームで、負けたの。」


「ネットゲーム?」


「ネットゲームで負けて・・・みんなの足を引っ張ったから・・・」


「ええ!?」


(くっだらない理由だな、オイ!?)



いや、理由があるだけマシなの!?


てか、ほぼ言いがかりじゃない!?


宿題を見せてやってたのに、恩をあだで返された私と、いい勝負か!?




〔★凛は加害者側に、利益しか与えていない★〕




「本当にそんな理由で?」


「そんな理由じゃない!!」



思わずもれた本音に、吉田さんが食らいついてきた。



「普通のゲームじゃないのよ!?負けて借金作ったのよ!?」


「えっ!?課金タイプだったの!?てか、借金って、どういうことですか!?」


「あ・・・!?」



私の問いかけに、しまったという顔でうつむく吉田さん。



「あの・・・まさか、さっきの人達に、お金を借りてまで、課金ゲームをしたということですか?」


「借りてない!あの人達から、お金なんて借りてない!」


「ん??じゃあ、借金ていうのは・・・??」


「ゲー・・・・ゲームの中で・・・・」


「あ、そういう設定ですか!?」



よくわからないけど―――――




「現実社会で、吉田さんが借金を作ったわけじゃないんですね?」


「・・・・・うん。」


「なんだ、よかった~!!」



なによ。


ゲームの中での話か~!


そりゃあそうよね~




「『よかった』って・・・どういう意味?」



顔を上げた吉田さんは、怒ってるような、泣きそうな、何とも言えない表情で私を見る。


だから、誤解させないためにも彼女の問いに答えた。





「だってそうでしょう?現実世界で、あの人達に借金してたり、親御さんからお小遣い前借しすぎてお金がないってことじゃなくて、よかったと思ったから。」


「え・・・?」


「成人していたら、そう言うお店でお金を借りてる可能性と危険も心配しますが、私達、未成年ですもん。親とか友達から・・・友達から借りるのは、トラブルの元になるから、絶対にしたらダメだって学校で言われてきたし。あの人達から・・・・渕上さんと親しい人達から、お金を借りてませんよね?」


「借りてないけど・・・」


「よかった!!そこが一番心配でした・・・!金銭トラブルほど、怖いものはありませんからね。」



ホッとしながら言って、相手を見る。



「・・・・・・・なんで・・・・?」


「え!?」



なぜか、泣いていた。



「ど、どうしー!?」


「どうして!?」



私が聞くより先に聞かれた。



「私、あなたに『死ね』って言ったのよ!?なんでよかったとか、心配したとか、なんなの!?」


「え?え?だけど・・・」


(今、謝ってくれたよね??)


「ザマー見ろとか思ってるでしょう!?偽善者なの!?良い子ぶってるの!?」


「え!?いえ、私はー」


「いい気味だって思ってるでしょう!?普通、悪口言った相手の心配なんかしないよ!?心の中で、私を笑ってるんでしょう!?」


「吉田さん・・・」


「良い子ぶらないでよ!嘘つき!嘘つき!」


私の肩をつかんで、ゆさぶりながら叫ぶ相手。


ギャンギャン吠える吉田さんを見ながら、同じ吠えるならポメラニアンの方が可愛げがあると思う。




〔★吉田に比べ、凛のメンタルには余裕があった★〕






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る