第23話 明日、可愛さの表現力で殻を破る
『駆け抜けていくのは僕らが王子様で君がお姫様だからだよ』
才優雅が披露したのはクリエイターズで1番有名な歌の『僕が王子様で君がお姫様』だった。
彼はまるで隣にお姫様がいるように、手を繋いで笑っている表情をしていた。
ダンスというよりミュージカルを見ているようだった。
そして最後に優雅はメガネを取り、ポケットにしまうとその場で激しくダンスをして、ベロを出してあっかんべーして最後は深々とお辞儀をして終わった。
圧巻すぎて僕らは拍手してしまった。
優雅は『ありがとうございます』と笑って言った。
その姿に国光無二は初めて笑って言った。
『表現力もダンスも歌も申し分ない。もう少しトレーニングを積めば、きっとデビューできるよ。ダンスはどこで習ったの?』
『ありがとうございます。ダンスは劇団氷山で1年やっていました』
ラビットボーイは開いた口が塞がらなかった。
『えェ!?1年⁉︎僕なんて、10年だよ。君本当に天才だね。もし君がもう少し年齢が上だったら僕らのチームに入れていたのに...』
真野アズがラビットボーイの口を無理矢理塞ぎ言った。
『ごめん。本当のこと言って。でも、そのくらい君は才能があるってことだから』
彼はメガネをまたかけて言った。
『僕は気にしてませんよ。実際、入れるなら入りたかったです。でも、僕はまだ子どもだから無理ですよね。僕...もっと頑張ります』
すると、花鈴が彼のメガネを外して言った。
『じゃあ、まずはその伊達メガネから外そうか。私、知ってたよ。自分の殻に閉じこもる時にメガネをするの。まずは殻を破ることが目標だね』
優雅くんは花鈴からメガネを取り返し言った。
『分かってます。殻を破るくらい...僕にだって...で...できます』
すると、無二はニヤッと不気味な笑いをして言った。
『じゃあ、明日までに自分の思う『かわいい』を見つけて、ここでダンスを披露してくれるかな。創作ダンスっていうやつ。中学校の体育とかでよく披露したでしょ。それに、まだ15歳なんだから。かわいいから始まる表現方法を君は劇団氷山で習ってるはずだよ』
彼は、犬が怒る時に鳴く『うー』をずっと言ってた。
無二は彼の返答を待たずに、一言呟いて帰った。
『明日、楽しみにしてるね』
花鈴は優雅くんの手を掴んで目を見て言った。
『がんばってね』
そして、ラビットボーイはメロンパンを渡して言った。
『これ食べて考えろ。無二ちゃんはちょっとヤバい奴だから、気にすんな。でも、みんなお前のこと成長させたいんだ。だから、殻はすぐには破れないかもしれないけど、明日は殻を破るキッカケにはなると思う。僕はそう信じてる。じゃあな』
最後に真野アズは優雅くんに手紙を渡して出て行った。
ブルージーニアスの全員が練習室を出て行った後に、優雅くんはアズ先輩からもらった手紙を開いた。
そこにはこう書いてあった。
『真野アズです。才能があってもそれにあぐらをかいて何もしないで、私には才能があるとほざく奴は何人もいた。でも、才能を隠して努力を怠らないでやっと練習生になれた人に超えられない壁や自分の殻を破ることは不可能なことではない。殻を破るキッカケは突然にやってくるし、君の可愛さは君自身のオーラからにじみ出るはずだよ。きっと、うまくいく。応援してるよ』
才優雅くんは、アズ先輩のことを信じてみることにした。
メロンパンを食べながら、YouTubeでひたすらデビューグループのかわいさを研究した。
彼は、自分の表現力で可愛さを存分に発揮できるダンスを完成させた。
問題は、可愛さにどうやって殻を破る気持ちが入っているかだった。
彼は次の日の朝まで鏡の前で踊り続けた。
何のために鏡があるか分かった気がした。
多分、完璧な自分を作り出すためだと思う。
僕にはまだ、一歩先にいる自分がいない気がした。
それが、殻を破れていない原因かもしれない。
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