第22話 練習生の才優雅とは?

その場がシーンと静かになり、1番に口を開いたのが国光無二だった。

『マネージャーさん、いいですよ。色々教えることは可能ですよ。ただ期間を決めて下さい。いつまでには後任の担当が彼に付くことを必ず約束して下さい。もし、約束を守らない場合は私たちブルージーニアスは事務所と裁判をやる覚悟ですからね。いいですね?』

マネージャーは分かりましたと言うしかなかった。

そしてマネージャーは言った。

『じゃあ、5ヶ月、いや4ヶ月だけお願いしてもいいかな。必ずそれまでに後任を見つけて来ます。それじゃ、次のスケジュールまで時間があるから少しだけハタくんのこと見ててくれるかな。じゃあ、また来ます』

マネージャーが練習室から出た瞬間に黒羽花鈴とラビットボーイがハタくんに近寄って言った。

『僕、ラビットボーイよろしくね。ハタくんはどうしてこの事務所に入ったの?』

『あたしは、黒羽花鈴よろしく。あなたはどのくらい凄い人なの。もしかして、ここにいるブルージーニアスのメンバー並みなの?』

2人はハタくんと話したくて、話しかけるのにハタくんは2人に興味がないようだった。

むしろ、国光無二と真野アズばかり見ていた。

その様子に、黒羽花鈴が気付き無二を読んだ。

『無二、アズ。この子が話したいのはあんたら2人みたいよ。私らはお邪魔みたいだから、行くわよラビット』

『えー、僕も話したいのに。ショック⁉︎』

ハタくんは国光無二と真野アズに握手を求めた。

だけど、2人とも握手には応じずに無二は彼に言った。

『なんで、この事務所に来たの?』

すると、初めてハタくんは話した。

『俺はブルージーニアスさんみたくなりたくて、オーディションを3回受けて3回目で受かりました』

すると真野アズが言った。

『じゃあさ、ここで踊りと歌を歌ってみてくれるかな?』

ハタくんは即答でハイと返事をして、ブルージーニアスの曲で『sweet Life』を歌って踊った。

しかし、踊って歌い終わってから、4人ともが厳しい表情をしていた。

ハタくんはどうしようと思った瞬間にラビットボーイが駆け寄り言った。

『リズム感は良いと思うよ。それに踊りながら歌うのは難しいからそれが出来ているのは、はなまる。ただね、この曲は基本楽しげなんだよ。それを君は理解していない。動きがとても硬い。少し残念だ』

そして、間髪入れずに黒羽花鈴が言った。

『ラビットの言う通りそれもあるし、歌は特に伸ばしどころがあると思う。歌はね、私が思うに小さな大事なものを大切にしていく感じだと思うんだ。例えば風船を割らずに膨らましていくような感じかな。あとは、感情を入れて歌詞の意味を理解することが1番大事だよ。それ以外は満点!』

そんな2人の意見にハタくんは顔を赤くして、言葉に詰まりながら言った。

『うるさい。俺は真野さんと国光さんの意見を聞きたいのであって、あんたらはそれ以下だろ。だいたい黒羽さんは昔アイドルしてたのに途中でやめて、それにラビット先輩はクリエイターズやめてどっちもアイドルとして無責任すぎるだろ。お前らは俺からみたら天才より才能ないやつだろ。それから...あ』

ハタくんの言葉を遮り、真野アズが言った。

『黙れ!お前に黒羽さんとラビットさんの何がわかる?君のために言ってくれたアドバイスも君には届いていないと思うと、私はすごく悲しいよ。この事務所に練習生として頑張って入ってくれたことはとても褒めたいよ。だって、この事務所に入るのは簡単じゃないからね。ただこの事務所を辞めることは簡単に出来てしまう。なぜだかわかるかな?』

『それは、練習生という身分だから、落ちることは必ずあるからですか?』

『そうだよ。君は今、練習生という身なのに私たちアイドルを馬鹿にした。しかも酷い偏見や悪口に近いことを言った。その時点で君はデビューなんて夢に抱けない程だ。私たちが君に言いたいことはひとつだけだ。自分から事務所に練習生を辞めると言いなさい』

『でも、僕は僕にとってはブルージーニアスという存在の中にいる真野さんと国光さんは神なんです。だから、このことは黙って練習見てくれませんか?』

すると、今まで何も言わなかった国光無二が口を開いて言った。

『私たちは4人でブルージーニアスなんだよ。君が私とアズ2人を神だと思っているけれど、曲の構成からダンスまで全てを作ってるのは私じゃなくて、ラビットボーイと花鈴のおかげなんだよ。グループの他のメンバーへの強い偏見と悪口はこれから君の将来を壊しかねないよ。君はもっと素直になるべきだよ』

そして、せっかく練習生になったハタくんはマネージャーに練習生を辞めると告げて辞めた。

マネージャーは事の経緯を国光無二から伺い、今度から練習生の誠実さも兼ね備えた人を選ぶ事に決めたのだった。

それから、ハタくんが辞めてからマネージャーから連絡があり、次は大丈夫と念押しされた練習生が優雅(ゆうが)くんだった。

彼は15歳でメガネをしている子っていうのが印象だった。

彼はとても礼儀正しくて、僕らに挨拶した。

『才優雅(さいゆうが)です。本名です。15歳です。不得意なことはダンスと歌です。得意なことは勉強と演技です。元々子役をやっていました。子供番組の『バンバン黒黒熊さん』で、はちみつ小僧のユウガくんをやっていました。8歳から12歳までやっていました。それから、中学受験をしてから13歳から14歳の1年間で名門劇団氷山で演劇を本格的に学んでいました。15歳の時にブルージーニアスさんをテレビで見て、演技部門のオーディションに合格したんですけど、いつの間にかダンスも歌もやる事になりました』

すると、ラビットボーイが言った。

『まじで、はちみつ小僧なの?嘘ッ⁈会えて嬉しいです。』

花鈴も言った。

『劇団氷山って凄いね。そこにいたら良かったのに、あえてここに来たって凄い決断だね』

アズは不思議そうに言った。

『演技部門で来たのに、なぜかダンスと歌をやるってやっぱり事務所の人は頭おかしいのかな。どう思いますか、国光さん?』

国光さんは応えるように言った。

『別に、事務所がそう考えるなら良いんじゃないかな?じゃあ、早速だけど才優雅くん君の踊りと歌聞かせてくれるかな?』

彼はハイと返事をして、準備を始めた。

さて、彼は何を披露するのだろうか。

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