第15話 舞台上で誰が1番なんて関係ない。
僕の名前はラビットボーイです。それが、最初の挨拶だった。
周りは舞台慣れした俳優さんばかりで、正直僕みたいなアイドルが居て良いのか疑問系だった。
そんな僕にも何人か友達ができた。
その中でも長年舞台の先頭に立つ俳優の宇田唯一(うだゆいいつ)は2.5次元の舞台でいつも主演をしている。
彼の名前は本名で自分で変わっている名前だと言っていた。
そんな彼とYouTubeで対談をする機会があった。
彼はとてもフランクで良い人だった。
彼とは舞台『坂の上の灯台』で共演してから親しくなった。
彼は椅子に座り水を少し飲んでから、僕と目を合わすと笑いかけた。
いつも彼とは話すけど対談となるとなんだか緊張で口が乾いてきた。
彼は対談が始まる前に一言『大丈夫、いつも通り話せば良いんだからさ』って、彼ってマジでかっこいいと思った。
そして対談が始まった。
『ラビ、久しぶりに会うけど元気にしてた?ラビと最後に会ったのは確か空想言語の舞台の時が最後だったよね。最近は忙しいらしいね』
『いえ、宇田さんみたいにすごく忙しいわけではないので。それにしても宇田さんはいつもかっこいいから外れない凄い人ですね』
そんな2人は共に互いを褒め称えるところから始まり、本当に話したいことを話し始めた。
最初に話したのは宇田唯一だった。
『俺さ、一度でいいからラビのグループの国光無二さんに会ってみたいんだよね。あの人はマジで天才かもって感じるんだよね。国光さんの出てるテレビ番組は全部見てるくらいファンなんだよ。なあ、いつかさ共演できないかな?』
無二に対して異様なほど執着があるのは何故だろうとラビットボーイは宇田さんに聞いた。
『あの...なんで無二に会いたいんですか?今まで色んな女優さんが先輩に一度は会いたいと思って来た人なのに、先輩はなんで無二なんですか?』
宇田さんは少しキレ気味に言った。
『俺が思うにラビのいるブルージーニアスってグループはまだ未成熟で成長状態の青い才能の塊がいるって解釈をしている。そして、ラビ!お前が選ばれた理由はカリスマ性のあるセンスと自分の魅せ方を知った上で努力して得た才能があるからだと思う。ラビ、君は俺が会った人の中で俺のライバルになれると思った』
『ありがとうございます。そんなことマネージャーさんからも言われないので嬉しいです』
『話はまだ終わらない。次に黒羽花鈴さんは彼女は人を魅了する才能があると思う。それに彼女の声がこれからの芸能活動を彩るものだと俺は思うね。そして、最後に国光無二さんはひとつのことに対して真摯に向き合い、そしてスポンジのように吸収する。何に対してもストイックで、人にもそして自分にも優しさや意志を曲げない姿勢を持っていると感じる。だけど、彼女は自分の才能をもっと違う風に使いたいんじゃないかなって凄く思う。彼女が出ているバラエティー番組は見たけど心の底から笑っているようにも感じないし、生中継でのお店の紹介から食べるまで全てにおいて違和感を感じたよ。まとめると俺がなぜラビのグループのメンバーに会いたいかと言うと本当の彼女を知りたいからだ。分かったかい、ラビ?』
ラビットボーイは言葉も出なかった。メンバーそれぞれの分析の仕方がまるで凄かったからだった。
ラビットボーイは宇田さんに言った。
『宇田さん、なんでそこまで分かるんですか?』
『えっ?だって、ラビのグループ面白いから。それに俺、人のことも自分のことを分析するの好きだから。でも、不思議なのはなんでラビは可愛いから抜けないんだ?だって、コンセプト的にはラビ=かわいいかもしれないけど、ブルージーニアスにせっかく入ったんだからかわいいから抜けてもいいんじゃないかな?』
『僕はクリエイターズではかわいい担当で、ブルージーニアスでもそれは変わらなくて....』
ラビットボーイの話を遮るように宇田さんは言う。
『違う違う。説明じゃなくて理由を聞きたいんだよ。なんで、コンセプトを少し変えないんだい?』
『それは、僕の担当じゃないからです。僕はまだかわいいにしがみついていたいから。時が来たら僕は変わろうと思ってます。それまではかわいい担当でやらして下さい。お願いします』
『ごめん、追い詰めたつもりは無いんだ。俺は本音が聞きたかっただけなんだよ。いつもこうやって本音聞き出して相手のこと傷つけるからさ。俺、色んな俳優から『最高』から取って『サイコ』って呼ばれて煙たがれてる。マジでラビごめんな。でも、国光さんには伝えといてよ『共演したい』ってさ』
そして、1時間の対談が終わった。
それが、YouTubeに載るなり、100万回を達成した。
そして、コメント欄には宇田唯一最高と書かれる一方で、ラビットボーイにはラビくん可哀想の文字が並んだのだった。
国光無二はYouTubeを見て、Twitterに投稿した。
『宇田さん、名前唯一なんですね。私の名前無二だから合わせて『唯一無二』で合体出来ますね。いつか共演できたら良いですね。ラビットがお世話になりました』
その投稿は瞬く間に拡散されて、宇田唯一くんにも届いた。
それから、無二は電話でラビットボーイにブチギレた。
『ラビット!なんでそんななんだよ。敵はお前の味方じゃない。家来でもない。感情で動くのは良くないが、ラビットとしてのアイデンティティはなんだ?もっと自分を客観的に見て、ラビット自身はどうして今の担当になってこれから先はなにをして行きたいかもっとちゃんと考えて行動しろ。ラビット、分かっただろ。君は彼のライバルにはまだなれないこと。ラビット、君の代わりに私があの宇田っていう奴を討つ。だから、これからは胸張って俳優とかわいい担当のアイドルをやって行くのよ』
電話口でラビットボーイは泣きながら『はい』と言って、電話を切った。
国光無二は今にでも仇を討つ準備に勤しんでいた。
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