第14話 誰かを妬む為に再デビューしたワケじゃない。
『みなさん、見て下さい。これが噂の口にしたら忘れることのないパンケーキ屋さんですよ。この行列を見れば分かると思うんですけど、絶対美味しいに決まってますよね。食べる前から私国光無二興奮しております。ここ『3つ食べたら』ではいちごパンケーキが有名で私も早速食べてみたいと思います。うわー、ほどよい弾力があってそして甘酸っぱいいちごはまるでパンケーキマンだ。今日の『知って得する無二の一大事!』はココ『3つ食べたら』からお送りいたしました。ではまたね!』
撮影が終了してから無二はスタッフさんに挨拶、それからパンケーキ屋さんと記念撮影にサインを書いてワゴン車に乗り込んだ。
営業トークが終わり、車に乗り込むと一気に国光無二は無口になった。
国光無二はマネージャーに言った。
『あの、いつものダンススタジオに行ってくれませんか』
マネージャーは言った。
『でも、この後は雑誌の予定が入っているけどどうする?』
『じゃあ、その後ダンススタジオ直行でお願いします』
今日の雑誌の撮影はいつもより気が乗らなかった。
なにを話したかイマイチ覚えてもいなかった。
それから、私はダンススタジオに行った。
ダンススタジオでは、黒羽花鈴が居た。
彼女は私の生中継のコーナーを見たのか、私に言った。
『無二、さっきの生中継笑顔が笑顔じゃなかった。私だったらもっと上手くやれるのに。なんで無二ばっかり仕事が来るんだろ。忙しくて良いな』
無二は踊る前に鏡を見ながら体操をしながら、花鈴のそんな妬みを妬み返した。
『花鈴はいいね、暇で。私はやりたくもない仕事をグループのためにやらなきゃいけない。本当は食リポなんて私向いてないからやめたいよ。でも、テレビから見た私という存在を作る時期だから仕方ないの。本当の自分を出したいって、事務所に直談判したけど今はその時じゃないんだって。でも、いつかその時が来るまで私はダンスと歌そして今の生中継で自分自身を磨くつもりだよ。でも、あんたは自分が初めて忙しくなった時までに何を磨くの?それまで、私のことをずっと妬むならあんたが再デビューして私と一緒になった理由は何?もっと、周り見て考えないとこれから損をするのは花鈴自身だよ。じゃあ、私ダンスの練習するから邪魔しないで』
黒羽花鈴は初めて喝を入れられた気がした。
その日から花鈴はどんな仕事でも自分自身を磨くためにひとつひとつの仕事に取り組んだ。
そして、その結果、花鈴は実を結び初めて役をいただくことが出来た。
その仕事がニュース番組の合間にある『七味小僧』という5分アニメに出てくる七味姉さんという役だった。
セリフは『アタシがあんたの知ってる七味姉さんだよ。これからよろしく!』だった。
声優には初挑戦だったが、国光無二やラビットボーイに指導され声の出し方やキャラクターの特徴などを理解して、アフレコをした。
初めては緊張したが、散々な結果だった。
実際に花鈴の声が入った上でのアニメの5分はとても長く感じた。
そして、最後にエンディングに入る『七味姉さん 黒羽花鈴』を私は写メして、何度も見返せるように携帯に保存した。
そして、その日花鈴の夢が決まった日でもあった。
花鈴の夢は自分の声が誰かに届き、声で私だと分かってもらえるようにすることだった。
そのために花鈴はボイストレーニングと芝居を磨くために色んな演劇を観に行くようになったのだった。
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