第10話 牙は愛を描く、デビューにはきっと相応しい歌になるはず。
無二、ラビットボーイ、花鈴はデビューに向けてどの曲をデビュー曲にするか迷っていた。
ラビットボーイが選んだのは『ぱむぱむピース』という題名だけで可愛さ抜群の歌だった。
花鈴が選んだのは力強くそして鮮やかに息をするそんな歌として『ブラックオレンジ』を選んだ。
そして私は何もかもが全く新しいリスタートを決める歌として『群れるのは嫌だ』を選んだ。
それをマネージャーの田崎さんは困った末に最後に用意して来た歌を出した。
それが『牙を剥いて愛す準備はできている。』
だった。
それは力強くも脆い刃を美しく知らない誰かに愛してと言って欲しいそんな意味の歌。
ただタイトルが長すぎた。
ラビットボーイは提案した。
その名前を『牙は愛を描く』にした。
冒頭の歌詞もラビットボーイは変えてしまった。
『牙が生えてきたのは、愛する人を見つけてからだ。死ぬことを決めたのは13歳のバースデーの日だった。愛したい誰かを見つけたのは死ぬことを諦めてからだった。』暗い詩だったが、無二にとっては明るい元気を呼び寄越す詩よりマシだった。
ラビットボーイはピンク頭でピアスを耳に何箇所も開けているけど、意外と心は暗めなんだと感じた。それがとても私は嬉しかった。
だって、明るい性格って誰かを幸せにしている代わりに、その元気さがうざいって感じるんだよね。
だって、今あなたの身勝手な笑顔なんて求めてないからかな。
芸能界に1年居て学んだのは笑顔は時と場合のみ使えば良いってこと。
例えばミュージック・ビデオかコンサートやファンミーティングにTVのバラエティでしか笑顔なんて要らなくない?
それ以外にオフの時の笑顔なんて疲れるだけだし、だからラビットボーイくんが私と同じ部分を持ってて良かった。
黒羽さんだって、可愛いにカテゴライズしなければ圧倒的に私と同じ種類の人間だと思うよ。
だから、事務所には感謝してる。
同じ種類のそして違う意味での天才を集めてくれてありがとうってね。
私はブルージーニアスのブルーはまだ未成熟でこれから育っていくそして尖っているって意味もある気がする。
さてと、デビュー曲の『牙は愛を描く』のレコーディングとダンスを練習しなくちゃね。
ラビットボーイくんは身長が高くてダンスも大きく踊るらしいし、黒羽さんは指の先までダンスを鮮やかに踊って、悲しさや苦しさもダンスで表現できるらしい。
噂ばかりで本当かどうか見てみないと分からないけど、きっと私たちのデビューは上手くいくと思う。
今は推測だけが頼りだけどね。
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