第2話 マネージャー解雇

『みなさん、こんにちは。いや違う、もう1回お願いします』

そう言ってオープニングでテイク2を撮った。

『こんにちは。私のチャンネルへようこそ。ダンスレディな国光無二です。よろしくお願いします。今いる場所がどこだか分かるかな』

そう言って、iPhoneで映されたのはどこかのカフェだった。

国光無二はiPhoneを机の横に置き、動画に映るのは半分顔が映った無二だった。

無二は誰かを待っている様子だった。

無二はその誰かを待っている間にiPhoneに向かって言った。

『みんなは甘党?私は甘党嫌い。でも、紅茶に入れるのは砂糖よりミルク派で、ミルクの入れ過ぎでお腹が痛くなる派だよ。これから来るのはマネージャーさん。打ち合わせだから、そろそろ切るね。打ち合わせ終わったらまた再開するね』

そう言って一旦、録音録画が切れたと思ったら、切れていなかった。

マネージャーさんっぽい人の声が聞こえた。

『無二さんさ、何でも嫌々するのやめてくれる?こっちも仕事探すの大変なんだからさ』

『でも、私やりたくない仕事を嫌と言って何が悪いんですか?むしろ、やりたい仕事をする事で道が開けたりしますよね』

『だから、こっちは嫌なんだよ。毎回毎回こんな奴のマネージャーになること自体ほんと俺運悪いわ。タレントだから歌手だから偉いのかよ。こっちの身にもなってくれよ。毎日毎日駄々こねて赤ちゃんかよ』

そんなマネージャーの苦言に無二は悪魔のような笑みで笑って見せた。

彼女は紅茶をひとくち飲んで言った。

『チェックメイトですね。今まで私のことをそんな目で見ていたことも、言動も全て録音しました。これがあなたにどんな影響を受けるか分かりませんが、さようなら』

そう言って、マネージャーさんを置いてお会計を済ませて出て行った。

マネージャーさんがもしも追いかけてきたらいけないので、無二は呼んでおいたタクシーに乗って家に帰った。

家に着いてから、データを編集してYouTubeに載せた。

題名は私の悪口成敗。

事務所にもその動画は送った。

その結果、そのマネージャーは解雇された。

アイドル練習生の時からそのマネージャーは私の悪口ばっかり言っていたから、清々した。

私のYouTubeの最初の投稿がマネージャー解雇なんて、笑っちゃうくらいおかしいよね。

でも、普通の日常なんて面白くもおかしくも無いし、やりたいことしたいことする事が、普通でしょ。

勿論、新しく来たマネージャーは良い人でした。前に比べればね。

私の生活を乱すなら誰であろうとジ•エンドに追い込むよ。

ここ、笑い事だからね。


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