ダンスレディな彼女の日常

ソノハナルーナ(お休み中)

第1話 私が国光無二だけど、何か?

『聞こえてる私の胸の音。消えないのは一途な想いよりも嘘ばかりのこの世界の日常。貴方にもあげるから、私のもとに来て』

ダンスと共に鳴り響く歌を歌うのはこれからこの物語の主人公になる国光無二(くにみつ•むに)、19歳だ。

彼女は歌声もダンスも表情管理さえ完璧な子だった。

彼女の欠点さえ、魅力を放つ。

誰も彼女には勝てない。

そんな彼女には秘密がある。

彼女には彼氏がいるんだ。

でも、彼氏とは一緒に歩いて話すことは出来ない。

なぜなら彼氏はゲーム上にいるからだった。

彼氏はゲーム上でアイドルをしていた。

だから、彼氏に憧れてアイドルを目指した。

ダンス未経験の無二にとってダンスは目まぐるしく回る情報の嵐だった。

でも、ダンスを学べば学ぶほどダンスで自分の自我を表現出来ることに気がついてからは、ダンスは無二にとって武器になった。

高校を卒業してから陰キャだった彼女に訪れた彼氏とのゲーム内での恋とアイドル練習生という肩書きは意外と居心地が良かった。

勉強も学校も嫌いな私にとってそれが日常に移り変わっていた。

国光無二は芸名ではなく本名だ。

母が唯一無二の子に育ってほしいということから無二になった。

私は意外と気に入っている。

国光無二、語呂がなんか良いだろう。

18歳でアイドル練習生からアイドルになるはずだったが、最終的には事務所の方針で1人しかデビュー出来なくなった。

そこから、再度オーディションを行って、8人の候補生の中から私が選ばれた。

他7人の何とも言えない涙が床に落ちる瞬間を見たのはあれが最初で最後だった。

デビューするための曲は全部事務所が用意してくれたが、可愛い曲を踊る気持ちもなくて全部却下した結果、選んだのは失恋ソングだった。

それが良かったのか、デビュー曲は見事にTikTokで流行った。

それから少し事務所も余裕が出てきたのか、グッズやらチェキやら販売し出した。

国光無二はついに深夜ドラマの主題歌に抜擢されたのだった。

そんな彼女がYouTubeに進出して、彼女は自分の歌だけでなく彼女の日常を映した『ダンスレディな彼女の日常』が開設された。

そんな彼女の日常とは、何かを追ったドキュメンタリーである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る