第7話 解決
明智と和戸が目を覚ますと、機械やロボットが並ぶどこか冷たい雰囲気の部屋にいた。椅子に座らせられていて、後ろ手に縛られている。足も縛られていて、椅子ごと移動することもできない。
「このシチュエーション、探偵っぽいな。ハードボイルド系の」
「見たことないロボットと機械が並んでる! すごいぞこれ」
悠長な二人にツッコミをいれるものはいなかった。
静寂を切り開く扉の開閉音がして、白衣を着た美しい女性が入ってきた。よく見ると、宮水から見せられた写真の彼女と同一人物である。
「あれ、あんた知ってるぞ。先輩の彼女さんだろ」
「君たち肝が据わってるね〜。この状況で全然焦ってない」
「俺達はいろんな事件で危ない橋を渡ってきたんだよ。こんなんで動じるか」
「全部勝手に首を突っ込んだ事件だけどね」
「余計なこと言うなよ、和戸」
宮水の彼女、瀧川春香は二人に数歩近づいて、手に持った注射器から少し液体を噴出させた。
「君たちはね。それなりに優秀すぎた。真実を知られる可能性があるなら排除しなきゃ」
「殺すのか?」
「いいや、さすがの私も人殺しは誤魔化せない。だから脳をいじらせて貰うわ。なあに、ちょっとバカになるだけよ」
「あんた、何者なんだ?」
「君たちがそれを知る必要はない」
「なんで俺達をここで起こした?」
「尋問をするためよ、この自白剤で。君たちの服の裏にGPSがついていたし、他にも気になることがたくさんあるの。ちなみにこの自白剤は物凄く強力だから、手術するまでもなく廃人になっちゃうかも」
春香は会話をしながら明智に近づき、注射針を腕に突き立てた。
「おい! やるなら先に僕をやれ! これ以上馬鹿になった明智はおぞましすぎて見たくない!」
「黙ってろ和戸! 探偵にこんなもの効くか!」
「涙ぐましい友情ねぇ。なら二人同時に刺してあげる」
そういった春香が指パッチンをすると、人型のロボットが注射針を持って部屋に入ってきた。そして和戸の腕にそれを突き刺す。
「3・2・1で同時に注入するわよ。いくよ、スリー・ツー・ワ」
言い切る前に物凄い轟音で部屋の扉が吹っ飛んだ。そして宮水と人型ロボットのミヤッチが入り口から登場した。ミヤッチの蹴りで扉をふっとばしたらしい。
「僕、、いや、私に体を返しなさい! 三葉銑十郎!」
宮水が物凄い形相で春香を睨み、叫んだ。間一髪で助かった二人だが、全く状況が分からない。
「へ、秋人くん… どういうことなの…」
春香も全く状況が掴めないようで、困惑の色を隠せない。
「私は宮水秋人じゃない。瀧川春香だ。お前のせいで、取り出された脳をこの身体に移植してもらったんだよ」
「へ、だって今まで…」
「お前を監視してたんだよ。そしてお前が三葉銑十郎としての財産を全て私名義に変更するのを待ってた。中身がジジイの自分と付き合うなんてほんとに気持ち悪かったわ!」
春香、いや三葉銑十郎(?)は絶望したような顔をしている。だが、宮水はそんなことお構いなしに追い打ちをかけた。
「ミヤッチ! アイツを捕まえて!」
ミヤッチが三葉に飛びかかった。それを和戸に注射器を刺していた人型ロボットが妨害するが、ミヤッチの蹴りで頭を粉砕された。普通のロボットだったようで、頭部から赤い液体は流れない。
「まさかアンタが小娘だったなんてね。いいわ、ここで殺してあげる」
ものの数秒で立ち直った三葉は、指をならしてロボットを呼び出す仕草をした。しかし、何も来る気配はない。
「ここに来るまでに施設内の戦闘ロボットはミヤッチの蹴りで壊しておいた。大人しく捕まって」
「いえ、まだこの部屋のロボットがあるわ。とっても強いのよ、この子たち」
数体のロボットにスイッチを入れようと目をやると、明智と和戸が既にそれを破壊している。
「なんで? あんたたちは縛っていたはずじゃ」
「探偵はな、注射器一本落ちてれば縄抜けできちまうんだよ」
「すぐ僕たちに自白剤を打っておくべきでしたね」
明智は、宮水の登場で驚いた三葉が落とした注射針で縄抜けをしていた。テコの原理を使い、針で縄に少しの切れ目をつくってしまえば、彼は縄から手を引き抜くことが出来る。後ろ手で縛られているにも関わらず、縄に切れ目を入れることができたり、関節を外して手を引き抜くことができたりしたのは、普段から様々な状況を想定して縄抜けの鍛錬をしている成果の神業である。
明智に縄を解いてもらった和戸は、すぐに部屋のロボットが動き出す危険に気づいた。そして、明智にロボットの脆い部分を教えて、ともに破壊した。
遂に打つ手がもうなくなった三葉をミヤッチが拘束した。明智を拘束していた縄を使い全身を縛り上げる。
「先輩。なにがなんだか分からねーよ。彼女さんも見つけたし、そろそろ全部話してくれよ」
「先輩は一体何に巻き込まれていたんですか?」
「二人とも巻き込んで本当にごめん。これから全部説明するね」
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