第4話 急襲

 次の日も朝から三人は集まった。 


「おはよう! 明智君、和戸君。今日はどうしようか」

「まずは平沢に貰った鍵の倉庫だよな」


 三人は思いのほか近い地域にあった倉庫に電車で向かった。


「そういえば、春香さんと関わりのあったお金持ちってスマートリアリティ社の三葉銑十郎会長のことですよね。美人な女性を家に呼んでいるっていう噂でピンときたんですけど。でも、あの人ちょうど1年前くらいに死んでますね」


 ロボット研究部の和戸は機械の会社にも詳しいようで、お金持ちが誰なのか予想がついたようだ。


「確かにそんな噂をネットで見たような… 今日中に行ける距離だし、倉庫を開けた後に行ってみようか。今は亡くなっていても、何かしらの手がかりはあるかもしれないし」


 目的地に到着した。人気のない場所に寂れた倉庫がある。


「なんか雰囲気ある倉庫だな。次の探偵事務所にしてやろうかな」

「馬鹿言ってんじゃねーよ」

「ほら二人とも、早く開けるよ!」


 宮水が倉庫を開けようとした時、高速で向かって来る何かの気配がした。


 そして、すぐに気配の正体が姿を現した。十数体の犬型ロボットが三人に牙を剥いて威嚇している。ペット用の物とは違い、いかにもロボットというメカニックなデザインだ。


「こいつはロボットだな」

「見れば分かるだろ! でも、こんなロボット一般向けに販売されていない。意匠を戦闘に最適化したロボットみたいだ。気をつけろよ」


 明智は少林寺拳法の構えをして迎え撃つ準備をする。そして襲いかかってきた一匹の腹を、正拳突きでへこませた。


「こちとら中学の時、喧嘩に明け暮れてたんじゃ!」


 明智は中学生の時少林寺拳法部に入ったが、実戦をほとんどやらせてもらえず、型の練習ばかりをさせられることに辟易して、1年で退部した。それからは少林寺拳法の型をベースにして、ヤンキーと喧嘩をして格闘技術を磨いていたのだ。


 明智は多数の戦闘ロボットを圧倒した。人間より遥かに強くて重いロボットとここまでやれるのは、彼が曲がりなりにも格闘のセンスを磨いた証拠だろう。


「さすが明智! 中二病をこじらせて喧嘩しまくってことはある。だけど、このロボット、何度やられても立ち上がってるな」


 明智に殴られて筐体が破損しても、犬型ロボットは再起して襲いかかってくる。さすがの明智も十数体を相手にして息が切れ始めた。


 和戸の目に立ち上がってこない数体が留まった。どういったやられ方をしたロボットが瀕死になっているのだろうか、と必死に思い出す。


「明智! 頭を狙え! どうやら本物の犬と同じように頭に動きを司るパーツがあるみたいだ。おそらくそこが精密機械でできていて、強い衝撃を受けると動かなくなる」


「サンキュー。かっこいい顔してるから、頭はあんま狙ってなかったぜ!」


 明智はロボットの頭部を殴打しまくった。今までタフだった犬達が面白いように倒れていく。


 だが、一匹の黒いロボットは物凄く早いスピードを持っていて、明智の突きをすんでの所でかわす。そして、彼を無視して一直線に疾走し、倉庫を既に開けて中にいる宮水に襲いかかった。


「先輩! こんな時になにしてんだよ!」


 ロボットは明智と相対してる時とは違い、宮水を害するような攻撃はせずに、彼の襟に噛み付いて引きずろうとした。


 その時、宮水の横で直立していた人影が動き出し、犬型ロボットの頭部を蹴りで粉砕した。


 埃っぽい倉庫の中の粉塵が晴れて、メカニックな人型ロボットが姿を現す。

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