第24話 歓迎会

「ただいま〜」

「おお、中々良い感じの内装だなこりゃ」

「とても素敵ですね。これからお世話になります」


黒死蝶のNo.4とNo.6であるレクスとシュラと共に帰宅すると、二人は喜んでいる様子であった。

確かに邸の外観もそうだが、内も中々良いものである。


「おかえりなさいませ。あぁ、心が浄化され過ぎて逝ってしまいそう」

「おや、レクスとシュラも一緒でしたか。御三方、おかえりなさい」

「ルゥ様、おかえり!って獣耳!?きゃわいい!!!!」


俺達の帰りをアリア、ナガレ、ターニャが迎えてくれた。

ターニャは俺に抱きついて、よしよしと頭を高速で撫でてくる。おい、禿げるからやめい。

アリアに至っては上を向いて涙を零していた。

そんなに眼福だったのかよ。

まぁ、ともかくなんか家族って感じが良いな。

ちゃんとおかえりって言ってもらえるのが幸せで何よりだ。


「そちらの御二人は此方へ。お部屋を案内します。ターニャ、ルゥ様のお着替えの手伝いを。ナガレさんには申し訳ないのですが・・・・・・」

「ええ、此方はお任せ下さい」


きっとヴィオラの歓迎会の事だろう。

レクスとシュラはアリアに連れられて行き、ナガレも失礼しますねと一言残してこの場から立ち去った。


「ターニャ、私達も行きましょう」

「畏まりました。可愛くするですよ!」

「別にお化粧はいいわよ?歓迎会と言ってもパジャマでいいし」

「いや、別にルゥ様はお化粧しなくても可愛いですよ?パジャマ姿も映えてますし」

「あ、ありがと」


・・・・・・ちょっと照れくさい。


─────────────


ターニャに着替えを手伝ってもらい、それが終わると二人でリビングへと向かう。

するとナガレが何やら考えている様子であった。

それを二人して顔を見合せながら見ていると、悩みが解決したのか「よしっ」とちょっと可愛い一面が見れた。

それを見て顔をだらしなくするターニャちゃん。

あなた、もしかして・・・・・・おっふ。

何故か他人の恋沙汰を見たり聞いたりするとニヤニヤしてしまう自分がいる。

よし、ここは応援してやろうか。


「ターニャ、一緒に歓迎会の準備を手伝ってあげたら?私の事は構わなくてもいいから」

「え、え!?でもルゥ様の面倒を見ないと──」

「好きなんでしょ?頑張ってアプローチしなさい。ちゃんと好意を伝えないと分からないでしょ?」

「うぅ〜・・・・・・頑張ります。いつから知ってたんですか、もぉう」


ナガレの元へ歩いていくターニャの足取りはやはり早かった。

好きな人の元へと行く時って早歩きになる気がするし、当たり前の反応だろう。

俺はこの場において邪魔者同然、ならば立ち去ろう。

ヴィオラはアガートラム邸に一時帰宅をしており、荷物を持ってこちらに来るんだとか。

それまで暇だしなぁ・・・・・・そうだ、獅子王眼を馴染ませるために動物とお喋りでもするか。

この屋敷に帰る途中、レクスは眼は使う程馴染むと教えてくれた。

ちなみにレクスは双精眼をその眼に宿しているらしく、精霊と意思疎通を交わすことが出来るらしい。

精霊は常に俺たちの生活の中にいて、戦闘時は何処から攻撃が来るのか教えてくれる存在としてレクスは仲良くやっているんだとか。

俺は外に出て、この季節に飛んでくる小さな冬鳥に声を掛けた。

すると羽をぱたぱたとさせながらこちらに来て、目の前で手を広げるとそこに足をつけた。

二つのつぶらな瞳を俺の方に向け、首を傾げる。


「今日はこれから夜になるけど、貴方は何処へ行くの?夜は寒いわよ。ちゃんと暖かくしないと」


眼に魔力を込めながら声を発する。

すると小鳥は俺の肩へと飛び移り、頬に頭を擦りつけてきた。


『心配してくれてありがとう。でも大丈夫!僕達は寒さに強いからね。家族が待ってるから、もう行くね!またお話しよう。素敵なお嬢様』


ぴよぴよと鳴きながらだが、ハッキリと耳に聞こえる声。

そして小鳥はまた寒空へと羽ばたいて行った。

鳥にもちゃんと家族がいる。なんか素敵やん。

獅子王眼には自然を操る事ができる。

強風を起こしたり、強烈な雨をふらせたり等の自然災害を自ら起こす事も可能だ。

空気を扱う事も出来るのもありがたい。

でも今の俺は、まだその領域にいない。

ナガレ曰く、もう少しで扱える様になれるらしい。

・・・・・・でもちょっとやってみたいじゃん?

俺はパラパラと雪降る空を見ながら眼に力を込める。

風を止めて、雪を止ませる事に集中する。

暫くすると風を感じなくなった。それでも冬だから寒いんだけど。でも雪は止まらなかった。

最終的には風を感じるだけで、人の気配や動きなんかも感知出来るらしい。

今後の成長が楽しみでしょうがないな。


「ルゥ・・・・・・ちゃん?」


後ろから声を掛けられた。

振り向くと、雪に彩られた景色に傘を指した美少女がいた。

──ヴィオラ・シャルル・フォン・アガートラム。

これから共に学園で学ぶ俺の友達であり、強くなる為に修行する同士でもある。

ヴィオラはこちらに傘を指したまま、走ってきた。

そして俺の事をいきなり抱きしめてきたのだ。


「おっむ」


抱きしめられた衝撃で変な声が出てしまった。

恥ずかしいんですけども。

それと抱きしめる力が少し強いな。

でもそれが逆に心地良いと思うのが不思議に思ってしまう。

気づけば自然と俺も彼女を抱きしめていた。


「どうして、外にいるの?・・・・・・風邪ひいちゃう」

「大丈夫よ。私って強いから」

「ダメ・・・・・・強がりは、良くない」


ヴィオラは抱きしめていた腕の力を緩めて、少し離れて顔を見合わす。

そして俺の頬を小さな手で包み込んだ。

ムギュっとされて暖かな手の体温が、直に伝わる。


「暖かい、でしょ?」


あぁ・・・・・・ヴィオラは良いお嫁さんになりそうだなこりゃ。

自信がない子だけど、前向きで可愛い姿にどれ程の男が惚れるだろうか。

でもなんか胸の奥がざわつく。


「えぇ、暖かいわ。そろそろ屋敷に戻りましょうか。みんなを心配させてしまうわ」

「うん、もっとくっつきたいけど・・・・・・仕方ないね」


うん、急に俺との心の距離が縮んだなこの子。

仕方ないねと言いながらも、手をがっちり掴んで離さない──離してくれない。それに恋人繋ぎである。

まさかとは思うが、アリアが何か吹き込んだか?

いきなりこんなにもグイグイ来るなんて、何かきっかけがないと行動を起こさないだろう。

後で寝る前にでも、アリア本人に聞いてみよう。


─────────────


屋敷のリビングに向かい、ヴィオラがドアを開けると勢い良くクラッカーの弾ける音が耳に響いた。


「わっ!」


ヴィオラは驚いて目を見開き、辺りを見渡す。

そこにはこの屋敷でメイドをしている二人、そして黒死蝶のメンバーである三人が立っていた。

皆が弾け終わり空になったクラッカーを手に持っていた。

そしてみんなで声を合わせて──。


「「「ヴィオラさん!おかえりなさいっ!」」」

「え、え?・・・・・・これって」


自分が何故皆にこんな風にもてなされているのか分からず、キョロキョロとしているヴィオラ。

そんな彼女に後押しするようにアリアは前に出た。


「今日からヴィオラ様がお住いになる屋敷の住人達からの歓迎会ですよ。それにヴィオラ様だけではなく、黒死蝶の皆さんも歓迎致します」

「さぁさぁ、みんな!ご飯食べるですよ!もうターニャお腹ペコペコなのです〜!」


ターニャは黒死蝶のメンバー三人を連れて、テーブルの方へと向かって行った。

そんな光景をヴィオラはただ黙って見ている。

そんな彼女の手を俺は握った。


「友達がいないって言ってたわよね。それならこんな風に集まったりもなかったんでしょ?」

「う、うん・・・・・・いつも、一人だったから」

「ふふっ、なら沢山楽しみましょうよ!これはヴィオラの歓迎会でもあるんだから、沢山食べて沢山お喋りしましょ!ほらっ、皆の所に行くわよ!」

「わわっ!ルゥちゃん・・・・・・」


ヴィオラの手を引っ張りながら、皆がいるテーブルへと向かう。

そして小さなパーティーが始まった。

シュラとアリアは二人でニコニコと笑顔を作り話していた。


「お久しぶりですシュラ。まさか黒死蝶のメンバーだとは知りませんでした」

「内緒にしてましたからね。お母さんを甘かやす同士として、またよろしくお願いします♡」

「ええ、たっぷりどっぷり甘やかしましょう♡」


うん、なんとも言えない会話をしているな。

それに二人してエロい目でこちらを見てくる。

俺はそれをにっこりと笑顔を作りながら、背中に流れる冷や汗をなるべく隠した。

程々に甘やかしてくださいネ。

一方でターニャはナガレと二人で話していた。

うんうん!仲良くやっているようで何よりだ!

ターニャは彼に惚れているのは知っている為、こういう進展を見るとニヤニヤが止まらない。

ふっ、早くお幸せになりやがれと願う俺氏。


「ナガレさんは趣味とかないんです?」

「う〜む・・・・・・これといってありませんね。やはり趣味とかあると生活に彩りが出るのでしょうか?」

「勿論ですよ!楽しみが増えますし、ストレスも解消されるです」


ナガレって趣味ないんだな。

いやまぁ、ありそうかと聞かれたら無いって思ってしまうが。


「逆に趣味はあるんですか?参考までに聞いてみたいですね」

「ターニャはぬいぐるみを作るのが趣味です!この屋敷にある物は私が作ったんですよ!」


そう言って近くにあったぬいぐるみを持ち出して、ナガレに手渡す。

するとナガレはじっくりと観察していた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

いや観察し過ぎ!どんだけ所々見とんねん!


「素晴らしいですね!明日は昼から暇なので、是非とも作り方を教えてください」

「え、あ、あ!勿論です!わわ、私の部屋で、二人っきりで!」

「よろしくお願いしますね」


ふぁ!?

ナガレがあんなに可愛いぬいぐるみを作るの?

ギャップ凄すぎて震えるんですけども。

それにしても二人とも相性が良いのか、距離が一気に近づいたな。

マジで本当に幸せになって欲しい。


「なぁ母よ。こりゃなんて言う食べ物だ?うめぇなこりゃ」


後ろから声が聞こえた。

振り向くと、手に皿を持ったレクスがこちらにやって来た。

片手に料理、片手に酒と歓迎会を楽しんでくれているみたいだ。


「あ、それはプラティオバーガー、だよ」


答えたのはヴィオラである。

内気で小さな声だったがハッキリと答えた。

知らない人物にこうやって話しかけるのは、彼女にとって大きな一歩だろう。


「聞いた事ない名前だな。パンに肉と野菜が挟まって頬張る感じで食べるのがベストだと思うが、それが正解か?」

「う、うん。最近になって新しく出た料理なの。食べ方も、正解だよ」

「私も一つ食べたいわ。とても美味しそうだし」

「なら取ってきてやるよ。ちょっと待ってな」


レクスは少し離れ、プラティオバーガーを取りに行ってくれた。

するとヴィオラは俺の着ている服の袖を、ちょこちょこと引っ張ってくる。

どうしたんだろうかと思って振り返ると、彼女の顔が耳元にまで近づいた。

ちょっ、近いですいい匂いします誘ってるですか?


「・・・・・・すごく、楽しいね」


その一言を残してヴィオラは離れてニコッと笑った。

──あっ(恋に落ちる音)

はいありがとうございました惚れました。

もうダメだ。今ので完全に意識がヴィオラに向いた。

ごめんなさい女神ソフィさん、メイドのアリアさん。

俺、またしても女の子に惚れました。

ヴィオラも恥ずかしかったのか、手を振ってアリア達の方へと行ってしまった。

あぁ、行かないでくれマイハニー。


「うい、持ってきたぞプラティオバーガー」

「ありがとうレクス。ところで恋はした事ある?」

「んあ?いきなりどうしたよ。まぁ俺でも恋愛経験ぐらいはあるぞ?」

「そう・・・・・・困ったら相談に乗ってくれると嬉しいわ」


そう言うとレクスは察したのか、あは〜んみたいな表情を見せる。

しょうがないだろう!!惚れたんだから!!!


「母ってば見境ねぇなぁ。メイドとも付き合ってんだろ?さっさと告ちっちまいなよ。恋に遠慮なんて必要ないさ。恋は自由だ」


なんてかっこいいんだレクスさん。

持ち前の銀髪をフワッと手で煽る姿を見て、イケおじ最高だと思った。

人生長く生きてる人ってやっぱ違うのね。

つかなんで知ってるのよ、アリアと付き合ってる事。


そんなこんなで皆と談笑し、食べては飲んでを繰り返して時間が過ぎていった。

そして歓迎会の終わりが近づいてきた頃、皆でプレゼントを渡したい人に渡す時間がやってきた。

これを考えたのはターニャである。

そしてこの為に俺はヴィオラにプレゼントを買ったのだ。


「ナガレさん!これどうぞ!」

「これは・・・・・・可愛らしいですね」


ターニャがまずは先に動いた。

意中の相手であるナガレに可愛らしいぬいぐるみを渡していたのを見たのだが・・・・・・いやそれナガレでしょ。

黒い猫のぬいぐるみなのだが、目には帯が巻かれているし、フードを被っていて可愛い。


「では私からターニャさんに」

「これって・・・・・・ネックレス?」

「きっとお似合いになるだろうと思って」


ナガレはターニャの後ろに周り、ネックレスを着けていた。

そして着け終わってターニャの前に来るとニコッと笑顔を見せる。

そんな彼を見て、ターニャは顔を真っ赤に染め上げていた。

あぁ羨ましいよほんとに。

そして俺の横にいたヴィオラも見てて恥ずかしいのか、両手で顔を隠していた。

ヴィオラちゃん、指の隙間からチラチラ見てるのバレバレよ。


「よぉシュラ、俺からプレゼントだ」

「櫛ですか。貴方って私の心の中でも覗いてるんです?ちょっと怖くなってきました」

「覗いてねぇ。俺が旅に出る前に無くしたとか言ってたろ?」

「ふふっ、ありがとう。いつも気遣ってくれて」

「う、うるせぇ」


別の方ではレクスがシュラにプレゼントを渡していた。

こっちも結構イチャイチャしてるじゃないですかぁ。


「レクス、これをあげます」


シュラが手にしていたのは・・・・・・服?

結構しっかりしたスーツにも見えるし、もしかして──。


「一から作りました。ウェンディちゃんの分もあります」

「毎度毎度すまねぇな。シュラが作る服じゃないと着心地悪くてよ」


え、つまりはレクスが来てる服って全部シュラが作ってるの!?めっちゃ驚きなんだけど!

もう嫁の領域ですやんそれ。


「もっと甘えてください。貴方含めて、皆の為に尽くしたいですから」

「おう、ありがとな。大事にする」


あっ、あくまで皆の嫁って事か。

勘違いすいませんでした。

皆を眺めながらニコニコとしていた俺の傍にアリアが来た。

そんな彼女の表情はかなり紅くなっていた。


「あ、あの、ルゥ様。私もプレゼントを用意したのですが・・・・・・気に入ってもらえるかどうか」


紙袋を自分の後ろに回して、モジモジしているアリアは照れ隠しを含めた笑顔を見せた。

ほんと可愛くてしょうがない。


「アリアから貰った物ならなんでも嬉しいわ。だから、見せてくれる?」

「は、はい!受け取ってください、ルゥ様」


紙袋を俺の前に出し、それを受け取る。

中身を出すと小さな箱が出てきて、それを開けると懐中時計が入っていた。

なんか凄くお高そうに見えるんだけど、実際どれぐらいの価格だ?これ。

手に取って蓋を見ると、俺の名前とアリアの名前が彫られていた。


『ルゥ・ガ・エンドロール』

『アリア・シュバリエ・ガ・エンドロール』


なんかこう、温かい気持ちが溢れてきた。

かけがえのない大切な俺のアリアが、俺の為にプレゼントしてくれた懐中時計。

こんな風に誰かに物を貰ったのは、前世で亡くなった妹ぐらいだった。

思い出すのが嫌で今まで伏せていたけど、やっぱり家族って温かいよな。


「ルゥ様、泣いているのですか!?」

「・・・・・・ゴミが入っただけよ」


潤んだ瞳を指で擦り、泣いてないかのように見せてはいる俺だがきっとバレているだろう。

好きな人からのプレゼントなんて初めてだから、嬉しい気持ちが溢れたのかもしれないな。

心を落ち着かせて、俺もアリアにプレゼントを渡そうか。


「アリアに私からの贈り物よ。アリアは私のお嫁さんなの。誰にもあげないわ」

「これって・・・・・・首輪ですか??」

「チョーカーよ。オシャレするのに首に着けてる人なんかいたりするわよ」

「そうなんですね。でも首輪って意味で着けてもいいですか?」


なんでこうも首輪に固執すんねん!?

アリアに渡したプレゼントは値段にしてプラティオ金額十五枚だった。

魔道具ではなく、あくまでアクセサリーなので高いがヴィオラにプレゼントする指揮棒よりか、圧倒的に安い。

しかしプラティオ金額十五枚であれば、上手くやって一年間は働かなくても十分暮らせる金である。


「そんなに首輪がいいの?」

「勿論です。私のご主人様はルゥ様・・・・・・ふへへ、うふふふふ──じゅるり」


俺は自分の世界に入り、浸りだしたアリアをそっとそのままにしておいた。

あれは色んな妄想を頭の中で展開している筈。

ふと窓際を見ると、一人外を見ているヴィオラがいた。

まだ完全に皆と打ち解けていないのか、話す相手がいないのだろう。

俺はヴィオラの元へ紙袋を持って歩み寄る。

どうやら彼女は月を見ていたようだ。


「ヴィオラ。歓迎会は楽しめたかしら?」


そう聞くと静かに頷きながらにこやかに笑った。

まるで聖母のような笑みであり、多くの人が心打たれるであろう。


「貴女にもプレゼントを用意したの」

「私に?・・・・・・貰ってもいいの?」

「ええ、友達ですもの。受け取ってほしいわ」


ヴィオラは俺から紙袋を渡されると、おずおずと中身を取り出す。

開けてもいいか?という表情を見せた彼女に、俺は深く頷いた。

そして丁寧に箱を開けると、中から出てきたのは俺が買ってきた指揮棒型の魔道具。

それを見ると表情が一気に明るくなった。

曇天から太陽の光が差し込み、光のカーテンのような笑顔である。


「こ、これ!・・・・・・どう、したの?!」

「アリアから聞いたのよ。魔法を使うのに必要なんでしょ?これで頑張って皆を守れるぐらい強くなりなさい。期待してるわ」

「うん・・・・・・うん!ありがと・・・・・・大好き!」


ヴィオラは両手を広げ、俺を思いっきり抱きしめた。

おまけに頬を擦り付けて、すりすりしてくる。

なんかアリアに似てて二人とも子犬みたいだと思いながら、俺はヴィオラを優しく抱きしめた。

すると後ろから大きな足音が聞こえてくる。


「私の方がルゥ様の事・・・・・・大好きですよ!」

「わっ!ちょ、ちょっとアリア!おっぱいが当たってるわよ!?」

「わざとですよ!今夜は寝かせませんからね!」

「皆いるんだから我慢しなさい!」

「嫌です!」


きっぱり断られました。

二人目のお嫁さんは、かなり強引に夜のお誘いをしてくるようです。

相変わらずヴィオラは静かに甘えてくるし、まぁ甘い女の子の香りに包まれるのも慣れてきたな。

というか他の皆・・・・・・止めてくれよ。


「母上様は人気者ですね」

「ルゥ様、ペットに懐かれてるみたいになってますです!」

「母ってば、大変だなぁ。大人になれば、もっと難が増えそうだな、こりゃ」

「甘やかしたい甘やかしたい甘やかしたい」


一人だけなんか違うが、見てないで助けて。


救いの手は差し伸べられずにいつの間にか皆、解散していた。

最後まで俺にくっついていたのはアリアで、ヴィオラは途中で眠たいと言って部屋に戻った。

ターニャとナガレとシュラは歓迎会の片付けをして、レクスは外で煙草を吸ってくると言ってから帰ってきていない。

すみません、メイドのアリアの仕事になのに任せちゃって。

そして皆が各部屋に戻った頃、俺達も部屋に向かった。


「寝かせませんよ?ふふっ、脱がせますね♪」

「ほんっと・・・・・・ソフィにそっくりね」


それから屋敷にちょっとうるさい喘ぎ声が響いた。

それから朝を迎えたのだが──。


「喘ぎ声がうるせぇ!あんあん、ならまだしもよ・・・・・・お"ぉ"ん"ってなんだよ?!寝れなくて体しんどいわっ!」

「アリアの喘ぎ声ね。この子ったら良い所を指で狙うと凄い声なのよね」

「お恥ずかしい限りです。ルゥ様のテクが良すぎるのですよ♡」

「頼むからよ、お二人の部屋だけでも防音仕様に改造してくれ・・・・・・頭がいてぇ」


はい、防音仕様に改造する手配をしておきました。

これでいっぱいイチャつけるぜ!!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あ丶神様、どうして俺を美少女なんかに・・・・・・ うちゅまる @Yohata_wanko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ