第20話黒死蝶
プラティオ王国王都近郊にある山岳地帯──アグレ連峰。
その頂上から下を見れば、王都の造りがはっきりと分かる。
約千年の歴史を持つプラティオ王国は繁栄を繰り返し、強大な国となった。
そんな国の中心である王都を、アグレ連峰の頂上から見下ろす存在が一つ。
黒いローブを着た女の子である。
外見的に年齢は十と二つ程で、目立つ所と言えば耳に着けているピアスの数であろう。
そして顔もまた幼いながらも整ったものであり、いずれ大人になれば周りが認める女性になるのは間違いない。
「ナユタ・ガル・バハムート──三百年前のドラゴベール竜王国の竜王」
遠くにある王都を睨みながら、冷たく口にした。温度のない声である。
楽しいのか、悲しいのか、怒ってるのか、困ってるのかすら分からない声色。
「ずっと探してた」
ドラゴベール竜王国──国の九割が竜人で埋め尽くされる国である。
竜人の特徴としては、肌の一部に鱗がある事だろう。しかしそれは硬いものではなく、寧ろ人肌と変わらない柔らかさを持つ。
そう──竜の逆鱗と言われるものである。
個人個人で鱗がある場所は違うらしい。
そしてこの少女はルゥ達が助けたナユタ・ガル・バハムートの存在を、三百年前の竜王だと口にした。
竜王とはドラゴベール竜王国を統べる王の別称──王族である証の名だ。
「ようやく見つけた。ドラゴベール竜王国の王が死んでしまった以上、彼女を王にするしかない」
ドラゴベール竜王国の王は病に倒れ、そのまま命を落としてしまった。
通常であれば、その息子や娘が王になる筈だろう。
勿論ドラゴベール竜王国の貴族、国民はそう思っていた。
しかし突如として現れた同じ王族であるバハムートの名を持つ少女──ナユタ。
プラティオ王国のアリーシャ女王からナユタの存在についての手紙を受け取ったバハムート王家は、真意を確かめるべく過去の王の名を調べた。
結果──ナユタは三百年前のドラゴベール竜王国の王であることが判明。
ナユタは当時、突如として行方不明になったと記され、その血を繋ぐ他のバハムート王家の人間が王になったのである。
そして今になって現れたナユタはバハムート王家の中でも王位継承権など関係なく王になる。
いや──竜王になってくれなければ困るの方が正しい。
それは何故か──国内の内政が竜王不在の為に色々と滞っているのである。
何がなんでも竜王国にナユタを戻したいとバハムート王家は考えていた。
既にナユタを支持する派閥が生まれており、彼女を迎える準備ができている。
「皆が認めなくとも、内乱勃発して紛争になろうとも、彼女を王にしなきゃダメ。ナユタ様──今迎えに行く」
そう言うとローブの少女は蒼白い炎を体に纏い、その場から姿を消した。
その炎はまるで──竜の禍々しい口から放たれる炎のようであった。
──────────────
「ルゥ!遂に今日じゃな!!」
早朝、ドカンと扉が壊れるんじゃないかと思うぐらいに自室に入って来たムラサメ。
その表情はまるで子供のようである。
ニコニコと笑顔が似合うムラサメは、ぱたぱたと小走りでこちらへ来ると、そのままの勢いで抱きついてきた。
「おはよう。気持ちのいい朝だね」
「うむ!妾は最高の朝を迎えたのじゃ!朝からルゥにギュッと出来るなんてのぉ──うりうり〜」
「ふふっ、ちょっと擽ったいよ。もぉ〜そんなに甘えたいの?」
「当たり前じゃろ──好きなんじゃから」
すっっごくストレートに愛を伝えるムラサメ。
ありがとう、ケモ耳万歳。
「そ、そう。えっと・・・・・・よしよし」
「ふへへ〜気持ちが良いのぉ〜」
余程気持ちが良いのか、顔が溶けきっている。
もうちょい引き締めておくれムラサメさん。
「気になる事があるのじゃが、何で車椅子に座っとらんで立っておるのじゃ?ま、まさか歩けるようになったのじゃ?!」
「うん、不思議な事にね。朝起きたら良くなってたの」
ムラサメに伝えた通り、朝起きたら体調がすっかり良くなっていたのだ。
「ほぉ・・・・・・不思議な体じゃなぁ。よしっ、今度は妾がよしよしするのじゃ!」
「ふふっ、ありがとう。・・・・・・気持ち良い」
少しばかりイチャイチャしていると、又もやドカンと扉が豪快に開けられる。
お願いします静かに開けてください。・・・・・・ノックぐらいしてください。
「おはようございます。ムラサメ様、今からルゥ様のお着替えがあるので──え、何で立っていられるんですか?ル、ルゥ様・・・・・・」
部屋に入ってきて、早々に何やらやばい空気を放つメイドのアリア。
アリアが何やら最後に言いかけたが、ムラサメは顔だけメイドの方に向ける。
「着替え?おぉ・・・・・・!妾も手伝いたいのぉ!ほれ、ほれほれ!はよぅ脱ぐのじゃ。そしてえろい体を妾の物に──ぶふぅ!」
勝手な妄想で鼻血を出し、挙句ムラサメはその場で倒れる。
あのね、鼻血出すのは良いんだけども量が多くてこっちまで飛んでくるのよね・・・・・・血が。
返り血を浴びたみたいになるの、嫌なんですけど。
「はぁ・・・・・・全くムラサメ様はすぐ鼻血を出されますね。まぁお世話するのは好きなので、別にいいんですが」
そう言いながらハンカチでムラサメの鼻から出ている血を止めようとアリアは動いた。
流石は一流メイドさんだ。
気の利いた行動には助けられてます。
「むふぁっ、ありがとうなのじゃ」
片方の鼻の穴にティッシュを詰め込んだ状態で立ち上がり、親指をビシッとグッドサインを出す騎士団長。いやシュールな光景だ。
美人でいて大陸最強と謳われる獣人が、少し間抜けに見える。
それはそれで可愛らしく見えて良いのだが。
「ルゥ様も血がついてますね」
アリアはわざとらしく顔を近づけ、艶かしい吐息を吐きながら、俺の顔についた血を拭いていく。
・・・・・・エッッッッッッッッッッッ!!!
けしからんぞ黒猫メイドちゃん。
君ィ、わざとらしく胸チラさせるのやめて──心の珍子がムクムクしちゃう。
「はい。終わりましたよ♪ちゃんと待てて偉いですね〜」
わーい、ばぶばぶー!
「ありがとうアリア。今日が謁見の日だけど、
服装は以前着てた服があったよね?」
「確かにありますけど、実はルゥ様宛にお荷物が届いてるんです。内容が服ってしていたので、もしかしたらこの日の為に用意してくれたのかもですね」
「え、一体誰がそんなの事を?」
今現在、この世界知り合った人物は限られている。
急に荷物が届くのもびっくりだな。しかも俺宛となると・・・・・・あぁ、なんか送り主がわかった気がする。
「ソフィ様です。本当に愛されてるのですね。いつかお見えになりたいです」
「いつか会えるかもね。それじゃぁ、荷物を持って来てくれるかな」
「はい、少しばかりお待ちください。それと足は問題ないのですね」
「うん、一日寝たら治っちゃったからね。私の事はいいから、荷物をお願い」
アリアは一礼するとぱたぱたと小走りで部屋へと出ていった。
本人には言わなかったが、もう猫耳を隠すつもりはないらしい。
ぴょこぴょこと動いていたのを目に焼き付けておいた。マジ獣人かわいい。
「ルゥに見せたい手紙があるのじゃが」
鼻血が止まったのか、鼻栓代わりにしていたティッシュをゴミ箱に捨て一枚の手紙を渡してきた。
受け取り表紙を見ると何処かで見た事のある印を見つけた。
竜に剣を携えた印──思い当たるのはドラゴベール竜王国。
しかし紙の質から見てかなり上位の貴族か、王族からの手紙だろう。
何も言わず、封から手紙を取り出す。
『ドラゴベール竜王国第二竜姫──アキナ・ディル・バハムート』
手紙の内容の始めは書いた人物から始まった。
第二竜姫──つまりは王族であろう。
ふむ、何故に王族からの手紙が届くのか。
「これ、誰宛ての手紙?」
「我が王じゃ。閲覧の許可は貰っておる。寧ろお主には見てもらいたい内容らしいのぉ」
ムラサメが言う我が王──それはこの国の新たな王であり、女王アリーシャの事だ。
何か国家間で問題が生じたか、或いは救済を求める声か・・・・・・宣戦布告の可能性も無きにしも非ずだが、幸い両国間の中は悪くない。
寧ろ友好国として共に国を成り立たせている。
もう一度、手紙に視線を落とす。
『ドラゴベール竜王国の王が死んで、国内は混乱しています。
前に調べるように頼んだナユタと言う少女の情報をまとめた書状の内容を読ませて貰いました。
真に心身の奥底から嬉しい気持ちで一杯です。
これで喚く貴族達も大人しくなるでしょう。
竜王にするべく迎えに行きます。
出迎えの準備は不要です。
ですが彼女に伝えておいてもらえると、此方としても助かります。
もう一つ、内乱が起こった際に備えてプラティオ王国軍の二万の兵をお借りしたい。
無論、何もなかった場合はお返しします』
手紙を読み終えて、ムラサメへと返す。
うむ・・・・・・如何せん納得できない状況だ。
こうなれば目の前の人物にでも聞くしかな。
「ドラゴベール竜王国とナユタの関係について聞きたい。──隠さず教えて」
「ドラゴベール竜王国の王家の名はバハムートじゃ。そしてナユタは三百年前の竜王であった。そして今回の王が死ぬと言う混乱を治めるべく、ナユタを王にしたいそうじゃ」
確かにナユタにもこの第二竜姫とやらにも、バハムートと名がついている。
にしても三百年前の王様がナユタ・・・・・・んー過去に何があったのかなんて本人にしか分からないしな。
それにナユタはカインにベッタリで話す余裕なさそう。
「ふぅん。でも結局は最終的にナユタが決める事じゃない?この手紙は随分都合が良いみたいだけど。まるで、もう竜王になるのが決まったみたいな」
「・・・・・・ナユタは竜王になると言っておったぞ。この国から離れて故郷に帰ると、妾と王の前で言ったのじゃ」
その言葉を聞いて、俺は安心した。
なるほどね。まぁその方が良いかもしれない。
故郷に腰を落ち着かせ、一国の王として過ごすのも悪くないか。
彼女の生き方は彼女が決める。・・・・・・これで良いんだ。
「しかし、ナユタはずる賢いのぉ。まさかカインを引っこ抜くとは・・・・・・」
「引っこ抜く──もしかして副騎士団長辞めた?」
「違うのじゃ。力と圧力で辞めさせられたんじゃ。ナユタがどうしても連れて行きたいと言って聞かんのじゃよ。仕方なかろう」
子供の我儘みたいだな。
でもそうなると副騎士団長と言うポストが空いてしまう。誰が埋めるのか気になるな。
当面の間は空席の可能性があるな。
「出立はいつ頃になりそう?暫く会えなくなるから挨拶ぐらいしないとね」
「今日じゃよ。謁見が終われば、そのまま第二竜姫が謁見の間に来る予定じゃ。勿論、ルゥも参列してもらう」
は?いやいや話が早いな、おい。
それに昨日の墓参りの時にでも言えば良かったろうに。
病み上がりの俺を心配して伝えなかったのか・・・・・・別に気にしないのに。
「そう、情報は把握したから準備するよ。また後で会おうね」
「うむ!妾は王城で待っておるのじゃ」
ムラサメは軽く手を振り、部屋から出ていった。
皆が皆、次の場所へと向かっている。
ナユタとカインが居なくなってしまうと寂しくなるなぁ。
窓を見ると少しだけ雪が降り始めていた。
季節は十月後半だが、プラティオ王国は世界から見たら一番北の国である。
北が寒く、南が温かいのは前の世界と変わらないらしい。
これから一気に気温が下がる事だろう。
「ルゥ様、お荷物をお持ちしましたよ」
「ありがとう。一体どんな服が入ってるのか・・・・・・楽しみだね」
「早速、開けて着替えちゃいましょうか」
箱の中を開け、二人で覗くと服がビッシリと詰め込まれていた。
これさ、何着分あるんです?多すぎじゃないか、女神ソフィさんよ。
取り敢えず一番上の服を取る。
すると旅で着るような丈夫な服が出てきた。
その下もセットなのか?おっ、よく見たらラベルが付いてる。
「旅服って書いてあるね。んー、全部にラベルが付いてるだろうから、先ずは分けよう」
「いいえ、分けるのは私達メイドがやります。今は少し急ぎますから、旅服を着ましょう」
流石、出来るメイドさん。効率も考えてくれるのはありがたい。
よし、頭なでなでしてあげよう。
「えっと、嬉しいのですが・・・・・・服を着ましょう」
俺は頷いて手を離した後、旅服とラベルに書いてある服を全て取り出した。
見た感じ黒と赤が基調の服っぽいな。
早速着てみようとした時、扉がトントンとノックされる。
アリアが返事をすると一人のメイドが縦長の木箱を持ってきた。
「あの、お荷物がまた届きましたです。ドラゴベール竜王国からなのです」
「中身は何です?──ちゃんと確認しましたか?」
「い、いえ。ローブを着た方がこれを渡す様にと言われたです」
そう言うとアリアはため息を吐きながら、教えるように言葉を放つ。
その姿はまるで先生の様だ。
「貴女を含めてこの屋敷のメイドは自覚が少々足りていません。ルゥ様はこの国の英雄たる方です。そのお方が住む屋敷を任されているのですよ、私達メイドは」
「は、はい。その通りです・・・・・・」
「もし危険物が入っていては一大事です。荷物が届いた時は届け人に確認するか、中身を確認する事。或いはご本人と一緒に確認する事です。これからは気おつけてくださいね」
「教えていただきありがとうございます。ルゥ様、申し訳ございませんです」
アリアに教えてもらったメイドは、ぺこりと腰を折り謝ってきた。
俺としては特に気にもしてないけど、メイドって大変なんだな。
よく見たらこのメイドさん、見ない顔だな。
「大丈夫。次から気おつけてくれれば良いの。それに貴女って新人さんかな?見ない顔だね」
「は、はい!今日付けでこの屋敷に配属になったです。実はその・・・・・・ルゥ様のお世話をしながら、色々と学ぶように言われたです。それと、お荷物を受け取った際に手紙を貰ったです」
そう言いながら手紙を取り出し、メイドは渡してきた。
ふぅん・・・・・・誰に言われたのか、気になるな。
それにこの子、ふわっとしてそうで隙がない。
んー、一発試そうかな。その前に手紙を見ようか。
アリアに頼んで手紙が入っている封を開けてもらう。
本当に片手だけだと不便だな。さてと、内容は・・・・・・。
『星焔の魔女──ルゥ・ガ・エンドロール様
ドラゴベール竜王国を代表して、プラティオ王家を救ってくれた事に真に感謝します。
此度の一件で左腕を失ったと聞き、さぞ不便な生活を余儀なくされている事でしょう。
我が国の秘宝である<龍血>で人工の腕をお造りしました。
肩へ人工腕をくっ付けると使える様になるので是非使ってください。
人工腕は身体の成長と共に同じく成長します。
これからの貴女のご活躍に、光あらんことを。
ドラゴベール竜王国第二竜姫アキナ・ディル・バハムート』
ほぉう・・・・・・これはこれは素晴らしい事をしてくれるねぇ。
こっちとしても腕があるのは嬉しい。
しかし、恩着せがましいのも叱りだろうな。
何を企んでるのか知らないけど、恩を着せて何か利用しようと考えてるに違いない。
いや、ここはアキナ竜姫の考えに乗るべきなのかな?
「ねぇ貴女、ドラゴベール竜王国の人でしょ。第二竜姫とはどういう関係なの?」
「い、いやぁ・・・・・・ターニャは関係な──ぐっ!」
俺はメイドに向けて、思いっきり足を引いて蹴りを繰り出す。
上段蹴りで頭を狙ったが、当たりはしなかった。当たる前にメイド自信が受け止めたからだ。
この蹴りを受け止めるって事は、相当な手練だな・・・・・・かなり場数踏んでそうだ。
「まだ嘘つくの?」
「ごめんなさいです。ルゥ様の言う通りなのです。ターニャは元々バハムート王家に仕えるメイドなのです。でも虐められて、見兼ねたアキナ様が私にルゥ様の傍に行くようにと言われたのです。ルゥ様ならきっとお優しいからって」
別に嘘を言わなくてもいい内容なのにな。
余程、自信が無いのかもしれない。
虐められていた過去がある奴に言うのも酷な話か。
来た経緯は分かったけど、俺の蹴りを受け止めた理由にはならないな。
「名前を教えてくれるかな?メイドとして仕える以上、お互いの名前は知っとくべきだから」
「は、はい。ターニャ・ライゼノールです」
「・・・・・・ライゼノール?確か竜王国に貢献している武家の名前の筈です」
アリアは思い出した様に口を開いた。
俺も記憶にある。いやこの体が過去に母カナンに教えてもらっている。
瞬剣のライゼノールと謳われたジン・ライゼノールはかなり有名人だ。
百なら勇敢猛攻、千なら勇猛果敢、万なら一騎当千。
敵の数に比例して伝説の人となった人だ。
一人で三万の軍勢を相手に無傷で生還するという伝説さえ残っている。
なるほどな。その血を引いているからこそ、強いのか。
「ターニャについては後程、説明を自らしてもらいましょう。今は謁見の準備をしなければ」
「その前に木箱開けてくれる?腕が入ってるらしいの」
「え、腕が・・・・・・この箱にですか?」
「手紙にそう書いてあるから、間違いないと思うけど」
アリアは恐る恐る箱を開けると、小さな悲鳴を漏らして震えながら箱を持ってきた。
そこには確かに俺の体に合いそうな小さな腕がある。しかし・・・・・・少しグロテスクだ。
ここは我慢だろう。俺は腕を持ち上げて肩へと持っていく。
するとミチミチと耳障りな音を出しながら、瞬時に結合した。
完全にくっ付いたのを確認して手を開いたり閉じたり、腕を思いっ切り振ってみる。
軽くジャブをしてみたりもしたが、何ともないな。
少し違和感はあるけど、暫くは慣れだな。
「うぅ・・・・・・すみません。気分が優れないのですが。吐きそうです」
顔を青くして今にも吐きそうな表情を、アリアは見せていた。
確かに気持ち悪いよな。腕がくっ付くとか。
ターニャはそんな事ないっぽいな。
「アリアは休んでて。んーと・・・・・・ターニャ」
「は、はいなのです」
「着替えを手伝ってもらえる?ターニャも私のメイドなんだから、働いてもらうよ」
「勿論なのです。精一杯尽くすです」
申し訳ございませんと一言、アリアは部屋から退出した。
強く生きてくださいアリアちゃん。
よし、早速着替えようか。時間も惜しいし、少し急ごう。
────────────
縦鏡に全身を映す姿はまるで黒き妖精の様だ。
白乳色の髪は瞳がハッキリと見えるように、前髪が少しばかり整えられていて、腰まで伸びた髪はサラリと窓からこぼれる風によってなびいていた。
「とっても素敵なのです」
あぁ、その言葉そっくりそのまま俺も言いたい。
灰色のカッターシャツに赤色のネクタイ、黒のスカートには赤色のラインが入っている。
黒のニーハイソックスに踝丈の赤色のブーツ。
体全体を包み込む黒のコートには赤と金で装飾が施されていた。
鏡に映る表情にはカジュアルメイクがされ、少し大人っぽさを感じさせる。
これら全てターニャがやってくれた。彼女はこういうものに才能があるのかも知れない。
「ルゥ様、これをお持ちしたです」
横に視線を向けるとターニャの両手には、この世界に来る前に貰った武器──氷蘭鉄心があった。
ちゃんと回収されていて、俺はホッとした。
腰に着いているベルトに氷蘭鉄心を差込み、装備完了。
「ありがとう。体はなんともない?」
「え?いえ、特には。元気なのですよ」
「そう・・・・・・この太刀は魔剣だから、扱いに気おつけてね」
「分かってるですよ。確か名を氷蘭鉄心って言うです。世界七大魔剣の一本で、振れば世界が永久凍土と化すと言われてるです」
ただのメイドがそんな知識知ってる訳がないよな。つくづく怪しいなこのメイド。虐められいたのは事実で、自分に自信がないのは確かだ。
しかし戦闘面に関してはどうだろうか?
きっと躊躇なく人を殺す事だろうな。
さっきも腕がくっ付くのを目の当たりにして、全くの無反応だった。
一般の人間なら吐き気や気持ち悪さを感じるというのに。
戦場に、或いは死地に立ったことのある人間だろう。
一度だけで良いから手合わせしたいね。
「失礼します。ルゥ様、そろそ──」
アリアが入室してきた。何か言いかけたが、俺を見て口をポカンと開けている。
そして何も言わずこちらに歩み寄り、後ろに回って髪を触ってきた。
んー?もしかして編んでる?
「はい、出来ましたよ。本当に素晴らしいですね。前髪も切られたんですね。ぱっちりとした瞳が可愛らしいです」
縦鏡を見ると後ろ髪に大きな黒色のリボンが着いていた。
わぁ・・・・・・さらに可愛くなるじゃん。
「ターニャ。貴女が前髪とメイクを?」
「は、はい!もしかしてダメダメだったです?」
アリアはターニャの頭の上に手を乗せた。
まるで母親が子を褒めるかの様に。
「いいえ、寧ろよく出来ています。次回から着付けは貴女が担当しなさい」
「分かりましたです!頑張るです!」
ターニャは両拳を胸の前に持って来て、ふんすっと意気込んでいた。
仲が良くて助かった。悪くて亀裂が入ったりしたら、仕事に支障が出来るからね。
さてと、時間的にそろそろ出ないと不味いかな。余裕を持って行動しないとね。
「王城へ行こう。皆が待ってるからね」
「私はお留守番しておきます。まだ具合が優れていないので」
「だったらターニャが代わりに行くです」
「そう、アリアはしっかり休むように。ターニャ、馬車を呼んできて。私は玄関前で待ってるから」
「はいなのです!」
頼られるのが嬉しいのか、パタパタと小走りでターニャは行った。
虐められる要素は特に今の所はない。
もしこの屋敷で虐められるのなら、その時にでも対策を考えよう。
なんだったら三人で過ごせる家とかあるといいな。
「ターニャは健気ですね。まるで子供みたいで可愛らしいです」
「実際年下でしょ?十五歳くらいに見える」
「竜人種は長命種と言われ、人間よりも遥かに生を謳歌します。あの見た目で八十三歳らしいです」
「いやおばあちゃん!?」
「ちょっと前に書状が届いてまして、彼女に関する情報が綴られてました」
そう言って俺に書状を見せてくる。
そこには疑ってしまう様な事が書かれていた。
『竜人種の長命についての人体実験の被害者』
『十歳で戦場に出て、一人で生還する異常とも呼べる竜人種』
『特殊魔法の使い手であり、現在はコントロールが出来るようになった』
『世界七大魔剣の一振、黒龍閃を所持』
パッと見ただけでも化け物っぷりが丸分かりだ。
これからメイドとしての使い道を改めなくてはならない。
荒事も解決出来るメイドとなると、かなり使い道がある。
それにアリアの事も守ってくれるなら、いざと言う時に心配事が一つ減る。
「今日の夜にでも、二人きりで話するよ。私と同じく、特殊魔法に魔剣持ちなら素直に話してくれそうだし」
「ええ、お願いします。あの子の事は大切に教えたいですから。出来るだけ秘密なんて持って欲しくないんです」
「分かってるよ。よしっ、それじゃ行ってきます。なるべく早く戻るからね」
俺がそう言うと、アリアはぺこりと一礼して笑顔を見せた。
帰ってきたら、いっぱい甘やかしてあげよう。
あっ・・・・・・いいこと思いついた!
きっとアリアは喜ぶに違いない。
─────────────
寒空の下、馬車内で少し揺られながら王城へと向かっていた。
外気温が低いためか、馬車の中も気温が低い。
手がじんわりと冷えるのを感じる。
「ルゥ様。足元が冷えるのです。これを使って欲しいのです」
ターニャはブランケットを俺の太ももへと広げ、乗せてくれた。
優しく、気の利いた子だと思う。しかし、蓋を開けてみれば戦争の中で生きてきた大人である。しかも人体実験の被害者ときた。
ターニャの外見は落ち着いた雰囲気で、戦場にいる様な子ではないように見える。
長い翠緑色の髪をサイドテールで纏めて、今時の女の子って感じだ。
「そういえば、ムラサメ様のお屋敷から王城までは近いと聞きましたです。馬車で十分も掛からないと。もう時間的に着いていい頃だと、ターニャは思うのです」
確かにターニャの言う通りである。
英雄墓地に寄った時もそうだが、城とムラサメの屋敷の距離はかなり近い。
「窓を開けてくれる?外の様子を見たい」
ターニャは頷いて、言われた通りに窓を開けた。すると沢山の声が耳に入ってくる。
窓から顔を出すと、そこには多くの人集りが馬車の周りにいた。
別に進行を邪魔する訳でもなく、脇道にいる感じである。
皆が皆、手にプラティオ王国の小さな国旗を持ち振っていた。
俺の顔が窓から現れたせいか、一際大きな声が響いた。
「星焔の魔女様っー!!!」
おぉ!なんか凄いな・・・・・・。
まるで有名人になった気分だ。いや有名人なのか。こんな光景を毎度、天皇様とかは見てるんだなぁ。はえ〜すっげ〜や。
取り敢えず、お上品に手を振った。
これぐらいサービスしないとね。
「凄いべっぴんさんだなぁ。ありゃ大人になったら女神様なんて目じゃないぞ」
「あんな小さな子が・・・・・・さぞ大変じゃったろうなぁ」
「魔女様っ!バンザーイ!プラティオ王国っ!バンザーイっ!!」
「女王陛下を即位させてくれてありがとう!おかげでスラム街で住まなくても良くなったぞ!!」
色んな民衆の声が馬車へと向けられる。
どれも俺の事を讃えるものであった。
胸の中で高揚感が溢れてくるのを感じた。
それに初めて王都に来た時の民の表情は感じられない。
生きる事に楽しみを持つ者の顔だ。
王がアリーシャとなり、色々と国内で動きを見せているのだろう。
前日の夜にアリアから聞いた話だと、貴族の爵位を一度王に返して再編した後、新しい爵位を託したんだとか。
政治内部を腐らせていた貴族は家族一同、処刑して内政を安定に繋げた話も聞いた。
何よりスラム街を取り壊し、そこに住んでいる人全員に職を与えて、貧しい人を無くすって考えは凄いな。
国の為に、民の為に尽くす善王であり賢王。
まだ子供なのに、その身に宿す王の資質が遺憾無く発揮されている。
死んだ前王はアリーシャならと考えて、王族痕を託したのだろうな。
それに対し、一番の不安は他国の侵略だろう。
プラティオ王国の勝利により均衡を保っているものの、それがいつ崩れるかは分からない。
ましてや王が若ければ、他国は能力が低いと見て舐めてくるだろう。
でもすぐには戦争行為を仕掛けては来ないだろうな。
他国はアリーシャの王としての能力は間諜でも使って情報を入手して分かってるだろう。
一番攻めれない理由としては、俺という存在が出てきた事だ。
きっと警戒してるに違いない。もしプラティオ王国が攻められる様な事があるのなら、全力で止める。その為にも強くならないとな。
ドラゴベール竜王国に住んでみたいと思ったが、案外プラティオ王国も悪くない。
「ルゥ様?」
ボッーと窓の外を覗いていると、ターニャに声を掛けられた。
少し心配そうに俺の顔を覗いている。
「どうしたの?何かあった?」
「い、いえ。ルゥ様が上の空だったので、どうしたのかなって思ったのです。悩み事・・・・・・なのです?」
「これからどうしようかなって、考えてたの。この国にずっと居れば良いのかなぁって」
言葉にするとターニャは腕を組んで、唸りながら眉間に皺を寄せた。
わざわざ考えてくれてるのだろうか。
本当に心優しい子だな。
「確かに難しい時期なのは分かるのです。若き王が導く国は狙われ易いのです。幾ら一枚岩であるプラティオ王国でも、なのです」
「ターニャの言う通りだね。でも今のプラティオ王国には私がいる。すぐには手は出せない」
「ムラサメ様も強いのです。ターニャもいざと言う時はお力になるです」
「うん、期待しているね。もしそういう場面になったら、一緒に乗り越えよう」
ターニャは笑顔で大きく頷いた。
八十三歳のターニャお婆ちゃんと言えど、まだまだ現役。外見的にも十代で通る。
竜人種は最高齢で五千歳も生きた奴がいるんだとか。
えぇ・・・・・・長生きし過ぎて世界とかどうでもいいとか思ってそうだな。
トロトロと走っている馬車の窓から顔を再度出して、手を振った。
民衆が歓声をひたすら声にしている時、一人の少女が飛び出して来た。
よく見ると大人達に揉まれて押し出されたようだ。
しかし周りは少女を見ると、罵声に近い声で責めた。
「おい!星焔の魔女様が乗られてる馬車の邪魔すんじゃねぇ!」
「そうよ、そうよ!不敬にあたるわ!」
「全く今時のガキは教育なってねぇなぁ」
この他にも罵倒とも呼べる声が何度も挙げられた。
そのせいか、馬車の進行も止まってしまう。
これはマズイな。どうにかして鎮めないと。
一方で少女の方はその場から動かず、只只に大人達のキツい声を聞いていた。
勿論、子供がこんな数の大人に言われてたら泣いてしまう。
少女も既に涙を浮かべていた。
その手には、手に収まるような小さな箱を持っている。
少女と言えど、外見年齢は俺のこの姿と同じくらいだろうか。
いいや、観察なんかしていられないな。
「ターニャ。馬車の扉を開けて」
「え、外に出られるのです!?それは危ないと思うのです」
「じゃあ、黙って責められ続けているあの子を見届けろと?ずっとこのままだと思う?もしも石なんて投げつけられたら危ないから、お願いだから開けて」
「・・・・・・は、はいなのです」
ターニャは言われるがまま、扉を開ける。
一歩ずつゆっくりと小さな階段を降りて、周りを見た。
その光景を見た人達は皆、無言である。
しかし共通してぽかんと口を開いたまんまだった。
左手を太刀──氷蘭鉄心の柄頭に置き、少女の元へ歩いていく。
冷たい風がふわりと髪をなびかせ、その姿に誰もが惹き付けられる。
歩く度に大人達の声は消えていった。
全ての注目が、俺へと注がれている。
少しだけ小言が聞こえてきた。
耳を凝らさないと聞こえない位の声である。
「すげぇ・・・・・・ありゃ本当に子供か?」
「あぁ、女神よ。女神ルゥ様っ・・・・・・」
「あれって左腕よね?確か新聞では戦闘で無くなったと書いてあったわ」
「バカッ!あの方は魔女様だぞ?俺達に出来ない事も出来るんだよ」
そんな言葉の小さな波を無視して、俺は少女の前に立った。
近くで見ると、そばかすがチャームポイントで可愛らしい子である。
まずは・・・・・・少し心を許してもらわないとな。
誰しもこんな状況になれば、固まってしまう。
だからこそ、俺は右手を少女の頭の上に持っていった。
「貴女は何も悪くない。見ていたから分かるよ。人混みに押されて出てきちゃったんでしょ?」
「は、はい。でも、でも・・・・・・ごめんない!」
今にも泣きそうな表情で、少女は謝った。
本当は悪くないのに、それでも自分が悪かったと反省してるのだろう。
でもそれは、自分を大切にしない──自分を殺すと一緒なのだ。
こうだからこうなってしまったと主張せず、何も言わず、それで満足かと言えば違う。
「ワザとした訳じゃないって分かってるから。でもね──」
少女から手を離し、涙浮かぶ双眸を見つめる。
翠色の瞳からポツリと一粒の雨が落ちた。
「ちゃんと周りの人に伝えなさい。自らわざとやったのではなく、人混みに押されて出てしまったと。伝えないと分からない事が沢山あるわ。だから負けずに、逃げずにハッキリと言いなさい」
そう伝えるとぽたぽたと瞳から涙を流し始めた。
うんっ、うんっと強く頷きながら、溢れ落ちる涙を手で拭っている。
子供だから仕方ない。失敗はあれど、やり直すチャンスは幾らでもあるし、その度に成長するのだから。
「ほら、いつまでも泣いてたって進まないでしょ。しょうがない子ね」
こんな子には、ついつい世話したくなるものだ。なにせ妹にそっくりなのである。
すぐに泣いてしまう所もよく似ている。
ハンカチを取り出して、優しく垂れた涙を拭いてあげる。
すると目を細め、嬉しかったのか少し笑った。
喜怒哀楽の激しい子なのかもな。
「これ、受け取ってください。魔女様に、星焔の加護が、あらんこと?」
「ふふっ、ありがとう。じゃあ、貴女もこれを受け取って」
うろ覚えで言う姿が可愛らしく笑ってしまった。
アリアにつけて貰ったリボンを解いて、少女に渡した。
少女が手に持っていた箱を受け取り、片方の手を少女の前に持っていく。
そしてその手から煌びやかに優しく燃える焔が出現した。
しかし焔の色が違うのは何故だ?赤き血の如く焔だったのに、目の前にあるのは黒紫色の焔である。取り敢えず、平然を装うか。
「貴女にも星焔の加護があらんこと」
「わぁ、凄い・・・・・・綺麗っ」
手を握り焔を消すと、ハッとした表情を少女は見せた。夢中になっていたのだろう。
少女は深く一礼してから、駆け足でその場から立ち去った。
よし、いっちょ気を引き締めるか。
ふぅーと息を吐いた後、空いている方の手で太刀を抜き、民衆へと向けた、
「たかが子供が飛び出したくらいで、大人の癖に寄って集って叱咤してんじゃないわよ!」
俺がそう言うと、皆は目を丸くしていた。
外見は子供、中身は元高校生からの説教を始めよう。
「相手は子供よ?未来を作る子なの。それを見守るのが、導いてあげるのが大人の役目でしょう!」
反論はなく、民衆は黙って俺の言う事を聞いていた。
辺りを見れば、下を向いて如何にも反省してますと言わんばかりな態度をとってる人もいる。
だがそんなのは要らない。
今後の行動を正して欲しいだけなんだよ。
「これぐらいで責めたらダメよ!寛大な心を持ちなさいっ!」
氷蘭鉄心を鞘に納め、再びその手に焔を発言させる。
爛々と燃える焔は太陽の煌びやかさにも負けず、同じ焔でありながら月明かりのように美しい。
黒紫色の焔が民衆の視界に入ったであろう。
「次にこの様な姿を見れば、幾らプラティオ王国の民だとしても──燃やし尽くすわ」
誰かは分からないが、小さな悲鳴が聞こえてきた。あぁ、自分の中で何かが変わった様な感じがするな。
少女から箱を受け取ってしまった時に変わったのか?
それに・・・・・・口調に少女らしさが抜けた感じもする。手を振り払うと焔が消失した。
そしてゆっくりと歩きながら馬車へと向かう。
民衆は沈黙、まるで何もいないかの様な静けさだ。寧ろこっちの方が良い。
何も考えず、ただ馬車に揺られ城へと向かいたかった。
馬車の前に行くと、タイミング良くドアが開かれる。
「少し急いだ方が良いのです。結構に時間が経ってるのです。遅刻したら不敬罪とかになっちゃうのです」
「アリーシャはきっと許してくれる。でも貴女の言う通り、少し急ぐわ。いきなり遅刻なんてしてられないもの」
「ルゥ・・・・・・様・・・・・・?」
「何かしら?私の顔になにか付いてるの?」
「い、いえ。何もないのです」
俺は馬車に乗り、ターニャは走るようにと手綱を引っ張っていたメイドに告げた。
ターニャに窓を閉めるように伝え、少女から貰った箱の中身を確かめるべく、俺は蓋を開ける。
そこには──眼球が入っていた。
「──っ!!」
何かに首を締め付けられるのをその身で感じる。
何処かで見た様な色の瞳だと、そう思った。
紺色の瞳・・・・・・アリアが確かそうだったな。
しっとりと血で濡れていて、誰のかは分からないが抉りとって間もないとすぐに分かる。
どんな意図でこれを渡したか、あの少女が何者なのか分からない。
ターニャには箱の中身が見えてないらしい。
いきなり眼球が入っていたと伝えても、ビックリするだろうからやめよう。
しかし念には念を入れて、城に着いたらムラサメの屋敷にターニャを帰らせよう。
実際にアリアの眼球だとしたら大問題だから。
「ん?紙切れが挟まってる・・・・・・」
箱の端っこに小さな紙切れが挟まっていた。
眼球にしか目が行かなくて分からなかったな。
紙切れを取り、広げると『親愛なる母よ。真実の瞳を贈ります──黒死蝶』と書かれていた。
親愛なる母とは俺の事か?真実の瞳ってのはどういう・・・・・・。
もしかしてこの体の本来の喋り方が、今の感じなのだろうか。
「ターニャにひとつ聞きたいのだけど、黒死蝶って知ってるかしら?」
「えぇ、知ってるのです。最近の裏社会で反世界樹運動を掲げてる少数精鋭の組織なのです。一人ひとりが世界樹の契約者並に強いと噂になってるのです」
なるほどな・・・・・・世界樹の契約者であったナユタを世界樹から救った件から見て、俺の事を良い印象で見ているのか。
あっちは勝手に仲間だと思っているのかもしれないな。
この件に関しては屋敷に戻ってから考えよう。
しかし裏社会の事もすんなりと教えてくれるのは助かるのだが、精通してるってのも凄いなとターニャを再度見つめる。
本当、これから忙しくなりそうだ。
一層気を引き締めて行こうか。何かを失う前に行動しないとな。
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